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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 04 組織の脆弱性

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います。
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

機能しないプロジェクトマネジメント

本記事の第3回 リスクの早期顕在化(https://note.com/think_think_ab/n/n99a4697ec282)まで見てきたように、    
 なぜ、プロジェクトマネジメントが機能しないのでしょうか。

理由は、
プロジェクトマネジメントが、しかるべき目的である
不確実性の早期排除と結びつけて実践されていないことにありますが、

では、なぜプロジェクトマネジメントは、
不確実性の早期排除と結びつけて実践されないのでしょうか。
その責任は誰にあるのでしょうか。

ちなみに、
不確実性排除の前倒し、すなわち前回の記事の例でいえば、
要件定義完了までにの実現性確認を完了させること」の責任は、
 誰にあるのでしょうか

興味深いことに、
ユーザ部門にも、開発部門にも、以下のような理由が一理あり、
一見すると、どの部門の責任も問えないことがわかります。

ユーザ部門の意見
「実現性確認は開発部門の責任で、ユーザ部門の責任ではない」

開発部門の意見
「実現性確認は、工数を無駄にしないよう、要件決定後に行う」

どちらの意見も組織としてもっともな意見です。
いったい、どの部門が不確実性排除の前倒しを担うべきなのでしょうか。

横断組織の限界

こうした場合、
プロジェクト全体にまたがって任命されたプロジェクトマネージャーの
責任は問われないのでしょうか。

こちらも興味深いことに、以下のような理由が一理あり、
プロジェクトマネージャーの責任を問いにくいことがわかります。

プロジェクトマネージャーの意見

「私の役割は、ユーザ部門、開発部門から提示された工程のとりまとめ、
 各部門の工程に不確実性排除の前倒しが織り込まれていなくても、
 それは私の責任ではなく、各部門の責任」→ 私は単なる取りまとめ屋

「私はプロジェクトマネジメントの素人、
 不確実性排除の前倒しといわれてもピンとこないしイメージも湧かない、
 何をどうすればよいかわからない」→ 私はプロマネの素人

「もし、不確実性排除の前倒しを問われても、
 私は各部門リーダーの直接の上長ではなく、指揮権を持たないため、
 私の立場ではどうしようもない」→ 私には実質的な権限がない

いずれも無理のない理由です。

こうして不確実性排除の前倒しの責任をになう人や部門はどこにもおらず、結果的にプロジェクトマネジメントが機能しないこととなります。

それぞれの人や部門の意見は組織としておかしなことではありませんが、
組織をまたがった途端にプロジェクト全体に対する責任の所在は、
あいまいになります。

こうした組織の脆弱性
プロジェクトマネジメントが機能しない大きな原因になります。


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