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趣味人・伊藤喜久男の編集した『蒐集家名簿』(昭和17年)

 拙noteでは、度々紹介したように趣味人や蒐集家の名簿を紹介してきた(関連記事をいくつか載せておく)が、今回は趣味人・伊藤喜久男が発行した『蒐集家名簿』(昭和17年)を紹介していきたい。この名簿は拙noteでも紹介したことのあるトム・リバーフィールドさん編『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』(2019年)にも収録されているが、現物をみたことのない方々も多いと思われるので写真を掲載しておきたい。私は数年前に古本フレンズにこの名簿をみせていただいたことがあるが、現物を欲しいと思っており、先日ようやく入手できた。

表紙。大きさは約16.3cm×約11.1cm
奥付
まえがき
掲載されている人物①
掲載されている人物②
掲載されている人物③
名簿詳細

この名簿は戦中に発行されたにもかかわらず、表紙がカラフルである印象を受ける。掲載されている人物には重複もあるが、125名の趣味人・蒐集家の名前が住所、蒐集分野ともに収録されている。伊藤の編集余言によれば、蒐集時代社または旅の趣味会の会員がほとんどであるようなので、この名簿は実質旅の趣味会会員名簿と考えて問題ないであろう。また、伊藤によれば、趣味は「年齢とか地位階級と言ふ如きものは全然不必要」のため、これらの情報は収録しなかったという。趣味人・蒐集家のことを調べている私としては惜しいことだが、この名簿に伊藤の考えが反映されているのが興味深い。

 ところで、この名簿をみていて気付いたことを紹介していきたい。書物蔵様が以下の記事で天目山荘=武者惣蔵という大迷惑な蒐書家(?)のことを紹介されているが、この人物も今回紹介した名簿に出てくる。以下に該当ページの写真を掲載しておきたい。


天目山荘(武者惣蔵)は「阿武隈七拾八翁」とも名乗っている。阿武隈七拾八翁の蒐集分野の記載されている独特な内容から判断すると、ただ者ではなさそうである。

 ちなみに、この情報は『昭和前期蒐書家リスト』にも当然収録されているので、私の見落としがあったようだ。このリストで、まだまだ見落としている事実がありそうである。

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