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斎藤守圀と柳田国男を結ぶ縁―すごすぎる『昭和前期蒐書家リスト』より

 先日、1年越しに『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』(編集:トム・リバーフィールド、監修・解説:書物蔵, 2019年)を入手した。この本は約1年くらい前の文学フリマで販売されていたが、当時何らかの理由で私は文学フリマに行けなかったので、代わりに友人に購入してもらっていた。すぐに受け取るはずであったが、例のウイルスに伴う混乱など紆余曲折があり、受け取りが非常に遅くなってしまった。先日ようやく受け取った次第である。(遅くなってしまいたいへん申し訳ありませんでした。。。)

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この本は戦前に発行されたいくつかの古本関連の名簿をまとめてリスト化したものである。詳しい紹介は、この本の監修・解説をされている書物蔵様のブログでされている。以下にリンクを貼っておくので、こちらを参照して欲しい。紹介だけで終わってしまうとおもしろくないので、この本のすごさを感じていただくために、私がながめていて早速発見したことを拙いながら活用事例のひとつとして紹介していきたい。

 この本の48ページに斎藤守圀(もりくに)という人物が登場する。この人物はWikipedeiaにも立項されており、内務省の官僚で千葉県、埼玉県、福岡県の知事を務めた。斎藤と柳田国男の間で交流があったことは、以下の柳田の日記(『定本柳田国男集』別巻4に収録の「大正十一年日記」)の記述や『柳田国男全集』別巻1の年譜から確認できる。

三月二七日(月)(前略)麻布霞町に齋藤守國君を訪ふ 写真のこと(一部筆者により現代仮名遣いにあらためた。)

斎藤と柳田の共通点は国家官僚であること以外ないと思っていたが、『昭和前期蒐書家リスト』には斎藤の蒐集項目が「民俗」と記載されており、柳田と同じような関心を持っていたことが分かった。知り合ったのは官僚の仕事上であったのかもしれないが、両者には「民俗」という共通の関心があったからこそ交流が生まれたのではないだろうかと推測される。斎藤がどのような「民俗」に関心をもっていたかは気になるところである。

 古書関係に詳しくない私ですら『昭和前期蒐書家リスト』を読んで以上のような発見があった。この本は題名だけで判断すると、古書に関心のない方には関係ないように思われるかもしれないが、そんなことはない。むしろ古書関係に詳しくない方が読んでいただければ、意外な発見がたくさんあるかと思う。この本は古書関係に関心がない方にこそ手に取ってもらいたい。

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