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『土の香』の編集者・加賀紫水の民俗以外の蒐集趣味の行方

 以前投稿した以下の記事で雑誌『土の香』を発行していた加賀紫水(加賀治雄)が雑誌発行以前から様々のものを蒐集しており、雑誌発行以後も蒐集趣味を継続していたことを紹介した。

上記の記事で紹介した『全国蒐印趣味家名簿』は1936年の発行だが、それ以降の加賀の蒐集趣味は継続されたのだろうか。『昭和前期蒐書家リスト 趣味人・在野研究者・学者4500人』(編集:トム・リバーフィールド、監修・解説:書物蔵、2019年)によると、加賀は『日本蒐書家名簿』(日本古書通信社、1938年)に載っており、蒐集分野は「民俗関係、旅行関係」となっているので、古書蒐集は継続していたことが分かる。

 一方で詳しい理由は分からないが、他の蒐集品を手放そうとしている動きもみられる。郵便関連を中心に取り上げていた蒐集趣味誌『京都寸葉』(注1)の読者の簡単な広告や自分の蒐集品の交換や蒐集の協力を呼びかける短信を載せる「京都寸葉案内」という欄があるが、ここに加賀が投稿している。私が確認できた範囲では、以下の内容が確認できた。

分譲 全国官国幣社印影、陸海特演行幸記葉逓信、知識全揃風特官白初日カバー他(『京都寸葉』78号、1941年10月)
実費分譲 官白、鳥瞰図、記念切手、其他今般都合で全部売却、お早く(『京都寸葉』88号、1942年8月)
至急譲度、官白沿図煙草、郵便切手誌、記葉、足袋票等一般、蒐集趣味誌熱望(『京都寸葉』97号、1943年5月)
「京都寸葉案内」より

加賀が蒐集趣味品を手放そうとしているのが分かる。ただし、「蒐集趣味誌熱望」と記載されているので、蒐集趣味誌の蒐集は継続していたようにも思われる。

(注1)『京都寸葉』については、神保町のオタ様の以下の記事が詳しい。


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