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新しいものが日本から生まれない理由。高齢者に最適化された国から新しいものが生まれるわけがない。

仕事柄、色々なお仕事をされてる方とかなり深くお話をする機会があります。
先日、テレビ局でいくつもの人気番組を立ち上げた敏腕プロデューサーの方と対談をした際にこんな話を聞きました。
彼曰く、視聴率が取れる番組をつくるための戦略というものがある。
それは人口の構成比を頭に入れることである。
F1、F2…みたいな性別と年齢層によるカテゴライズがあるけども、それでいうとシニア層がボリュームゾーンとなっている。
つまりF1層に受ける番組をいくら作っても高視聴率はとれない人口構成。
さらに、若い層には選択肢が多い。
YouTubeも見るし、ゲームもするし、SNSもする。
若い人向けの番組は、他局の番組だけでなくテレビ以外のライバルも多いし強い。
一方でシニア層はそうしたテック系の娯楽には手が伸びにくい。
長年の習慣でテレビだけを見るから。
だから、テレビで視聴率をとりにいくコツはシニア層をいかにとるかになってくる。

「これを頭に入れておけば視聴率を取りにいくための攻め方はわかりますよね。
だからテレビ番組はシニアにウケる、シニアに理解しやすい番組ばっかりになっていってる。つまり新しくない方がリスクないし数字もとりやすい
でもそれで番組作ってる方が楽しいと思います?」と彼は自嘲気味に笑った。

確かに、今、テレビを見ると、どの番組でもジャニーズやアイドルをはじめとして若い演者さんを画面に映し出してはいるものの、構成やシナリオが高齢者向けのものばかり。
NETFLIXでやってるような斬新な番組はまあないですよね。
「昨日の延長のような安心できる今日」が放送波を通じて流れていることが確認できます。

この話を聞いて、これはテレビに限らず、ほかの分野でも言える話だなと思ったんです。
いわば日本全体を覆う問題の本質

端的に言うと「現状が変わっているのにルールが変わっていない」ということ。
人口の構成比率が変わっていっていて、「視聴率」というルールができたときと今ではそのルールがもたらす効果が変わっているはずなんですよ。
昔はテレビを見ている人の中に占める若者の比率が高かったからそれが流行を生み出していたと思うけど、今、その効果ってどれくらいあるんだろうか。
高度経済成長期の何分の1?
バブル期の何分の1?
本当に見なくちゃいけないのはどこなんだろう?

現場で働くひとの感覚として
「ルールがそれならそこに最適化していったらいいやんか。
そのルールで勝負して勝っていくだけやないか」
という考え方もあると思います。
企業の中での人事評価ルールもそうなっているだろうし、そういうルールに基づく出世競争的なものもあるでしょう。
でも、思うんですよ。それって仕事の本質的な意味を考えてないよねって。

環境が変わっていっているのにルールが変わらないということが社会にとって何をもたらすのか。
恐竜が絶滅したのは隕石の衝突による環境の変化に耐えられなかったからということになっているけど、そこでフレキシブルに環境の変化に適応できたもの。
自らを縛るルールを変えることができたものがサバイブしていってるわけです。

テレビの世界が恐竜みたいにでかくなりすぎてルール変えられないのはよくわかるし、別に滅んでもいいと思うんですよ。
ユーザーにとって代替となる娯楽の受け皿は十分ほかにあるわけだから誰も困らない。
テレビ業界の人はそりゃ困るかもしれませんが、ルールを変えないことを自ら選んでしまってるんだから仕方がない。

でも、今の日本で大変に問題なのは、「現状が変わっているのにルールが変わっていない」仕組みが多すぎることです。

年金とか国の制度もそうですが、ビジネスの仕組み自体が古いままであったり、人事評価の制度が古いままであったりとかも山ほどある。

簡単に言うと「制度疲労」ということになるんでしょうが、企業の場合は現状にあわせてルールを変えにいくことが経営の役割のはずなのに、そこを変えようとする努力がちゃんとできてない

で、なぜそれができてないかというと成長よりも堅実を求める株主への配慮だったりもするんだろうなと。

たくさんの関係者・ステークホルダーが絡んでくるような大きな組織(だけじゃないけど)構造となった場合にはただでさえ調整が難しくなるものですが、そのステークホルダーの多数派が保守的によっていっているために変化が受け入れられない

それがゆえにルールを変える仕組みが適正に働かない、もしくはルールを変える仕組みが適正に働くようなインセンティブ設計がされていないということものあるのかもしれない。
そして、日本では、こうしている間にも国全体の高齢化とともにどんどん「ルールを変えるのが難しいステークホルダー構成」へシフトしていっている。これは政治のことを語る際によく言われる話ですが、政治の世界にとどまらず、ビジネスの中でも同様となっているんだなと。

この問題には、すっきりした解決策、処方箋なんてあるわけないんですが、ステークホルダー全員(現場で働く人たちから株主まで。つまり日本国民すべて)が、問題の構造を俯瞰的に把握したうえで、その場その場をごまかすことではなく、本質的な解決を意識することがこの問題の解決への第一歩なんじゃないかなと思います。

もう一回、言いますが、テレビ業界が変えられなくてもまあしょうがないんですが、ほかの業界でルールを変えて新しいものを生み出せる体制を構築していく産業が生まれていくとよいと思うし、僕も自分としてできることは何か考え、そのための行動を突き詰めてやっていきたいなと思いました。

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