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【こころ #54】精神障害の当事者と業界を変える起業家


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田中 康雅さん


 「自分が一番貢献できる、自分がやる意義のある挑戦をしていたい。それが軸。そのやり方は、会社勤めでも起業でもこだわりはない。」

 精神障害・発達障害のある方の創作活動・就労支援サービスと企業のDX支援サービスを提供する株式会社パパゲーノを立ち上げた田中さんにとっての軸は、「メンタルヘルスケア」だった。その軸は、ずっとブレない。


 田中さん自身、「メンタル不調の経験」がある。大学に入学した後に生活を崩し、振り返れば、「自律神経失調症だったと思う」。社会人になってからも働き過ぎてしまって、心身の不調に直面した。

 自分だけではない。大学時代、身近な人が自殺未遂を図った経験を持つ。「自分が身近にいながら、何が力になれるかがわからず、無力だった。でも、その時はそれで精いっぱいだった」と悔しい思い出がある。


 田中さんが社会に出る頃は、大手広告代理店の過労自殺が大きく取沙汰されていた時代でもあった。「働く人のメンタルヘルスケア」にアプローチする企業を選んで入社し、企業に産業医を派遣する事業の立ち上げに携わった。

 さらに、「利益を上げづらいと言われる分野でいかにDXを活用してビジネスをつくっていくか。それに愚直に挑んでいる」AIスタートアップに転じ、介護など福祉領域におけるビジネスモデルを身につけ、中間管理職としてマネジメントスキルも磨いた。


 そうして「自分でもできるかな」と自信がつき、「最悪は一人でも」2022年3月に会社を退職して起業しようと、期限を切った。


 そこから色々な人と出会う中で意気投合したのが、共同創業者の福田さん。「人の健康に貢献したい想いを持ち、同い年で、以前の同僚で、別々のスタートアップで同じ中間管理職で次の挑戦を考えている者同士と、「近かった」。

 さらに、大学時代からの先輩である熊本さんは、ベンチャーキャピタルで経験を積んでおり、最初から経営顧問に入ってもらった。

 「ここまでうまくいった要因は、この創業メンバー3名。一人じゃなかったのは大きかった」と田中さんは振り返る。



 起業やスタートアップと言うと、大きな計画を立てて大きな資金を調達して赤字でも大きなリターンに突き進むようなイメージを持ちがちかもしれない。

 しかし、田中さんは、「キャッシュエンジン経営を大事にした」。キャッシュエンジン経営とは、すぐに売り上げが立つものから始めて最初の収益基盤を安定させ、目指すメイン事業を少しずつ育てていく考え方を指す。

 「フリーランスの延長でDXなどの業務委託のお仕事を頂いて、最低限の社内人件費を稼ぎ、そこからプラスアルファでやりたいことに挑戦する。そんな創業期でした。」


 「自分が面白いな、正しいなと思うことをコミットメントして、とにかく動き続けることをやっているだけ」。

 田中さんが目を付けたのは、精神障害のある方が通う『就労継続支援B型事業所(以下、就労B)』。調べてみると、「全国に1万4千箇所あるが、そのうちITスキルを身につけ活かせる事業所は、わずか3%だった」。自身のキャリアを通じて「これまでまっとうにやってきた知見を使えば、満たされていないニーズに応えられる」と確信した。

 より具体的には、就労Bの利用者さんにITスキルを身に着けてもらうだけではなく、事業所を見学に来てもらって新しいDX業務を受託する。事業所を実験場に利用者さんと新しいDXソリューションを開発して、他の事業所にも展開する。そんな絵も浮かんだ。

 経営者としては、就労Bが運営できれば、会社として安定的な基盤になる目論見もあった。しかし、それ以上に、「就労Bの市場規模は、約4,000億円」。あくまで狙いは、障害当事者と共に業界を変えられる」ことだった。

 そう思うや、田中さんは「東京の全ての障害福祉課に電話し、数少ないIT系の事業所を足でまわって、一次情報を集め続けた」。その過程で、「どういった運営がいいのかが、見えてきた」。

 「やろうと思った時点では、経営力は全くなかった」と苦笑いした後に、それでも動き続ける「過程で実現できる力が身につくもの」と真剣に話された。そして、「不安だからこそ、やるしかないっしょ」と話す屈託のない笑顔が、ものすごく強く見えた。


 そして、株式会社パパゲーノは昨年9月1日に指定を取得し見事、就労Bを新規開所。さらに今年3月には、福祉分野の新たなDXソリューション「音声解析AI支援記録アプリ」をリリースした。さらに、この先、そのデータを使って更に、メンタルヘルスのリカバリーや、ケアする側の負担軽減など、多くの事業アイデアも膨らんでいる。

 DXやAIなど「本来の得意な分野に戻ってきました」と話す田中さんの軸は、やはり、ずっと「メンタルヘルスケア」だ。



 田中さんとパパゲーノの創業・成長ストーリーは、福祉分野で起業を目指す人にとっては、読み返したくなるほどに参考になるものだろう。私自身も「創業から2年の物語(※動画)」を拝聴して勉強させていただいた。

 だからこそ、絶対に成功してほしい。それを見て、また次の田中さんが数多く生まれてくるために。そう思わせる株式会社パパゲーノの創業者だった。


【参考】
AIで福祉の変革に挑むスタートアップの資金調達の裏側【就労B開所9ヵ月で上場企業と資本業務提携】






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