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【こころ #2】「自分がそこにいていいのか、必死で役割を探してしまっているところがあるかも。」という言葉が…

相良 真央さん


 「自分がそこにいていいのか、必死で役割を探してしまっているところがあるかも。」という言葉が印象に残る。


 中学時代、相良さんは「学校で一番を取らないといけない、試験で100点を取らないといけない」という縛りを自分にかけた。いま振り返ると「勉強が好きだったかもわからない」し、「周囲から勉強しろと言われたこともなかった」にもかかわらず。

 幼少期から不安が強い子供だったそう。不安を感じて「自分の中でグーっと悩み始めると、友達と一緒にお昼のお弁当を食べていても隣の子の話が耳に入ってこなくなる。自分以外が何をしているのかなど、外の世界を取り込む余裕をどんどんなくしていった」。しまいには「学校で涙をこらえて帰宅し、その瞬間に泣いた」。そこでもまた「泣くのは何時まで」という縛りを自分にかけた。

 この頃から両親に心配されて心療内科・精神科にかかり、「うつ」と診断された。


 高校2年時には拒食症で体重が落ち、新しくできた大学病院で一通りの検査を受けた。いま振り返ると「先生が発達障害の専門で、ちょうど良いサンプルだったのでは」と疑問をもっているものの、「平均点は高いが、凸凹がある」として「発達障害」と診断された。

 入院後に体重は20-30kg台まで落ち、退院しても10年ほど人と関われなかった。目の前の状況を指さしながら「こんな感じで誰かと一緒にいてお茶が置いてあるなんていう当たり前の状況が怖かった」。

 その後、環境を変えるために地元から離れた場所で一人暮らしにも挑戦した。それでも、「みんなと同じようにやらないと」という縛りを自分にかけ、決して嫌いなわけではない母親から毎日来る「心配だから食べてほしい」というメッセージはストレスだった。「一人暮らしは失敗した」。


 その後、地元に戻り「発達障害の当事者に関心がある」という友人と当事者会を立ち上げた。しかし、“支援される当事者の自分”と“それを支援する当事者でない友人”という関係性になり、「対等な友人だと思っていたのに支援される形がきつくて」離れた。その後、隣県で新しく発達障害の当事者会『凸凹ライフデザイン』を理事長として立ち上げた。

 さらに近年、こころ第1話で紹介した山田悠平さんが立ち上げた精神障害当事者会『ポルケ』にも誘われて理事に就任した。


 「ご活躍ですね」と投げた言葉に対して、正直に話された。「人のために良いことをされていますねと言われると心臓がかゆくなります、そんなの違うから。自分のためなんだと思います」。

 「こういう活動をしたら面白い人に会えるのがいい。放っておいたら一人になってしまう人だから」。続けて、自分は他人を受け入れるキャパが小さいから「身の回りの人だけでいい。その人たちが考えている面白いことを外に伝えるお手伝いができて、今の精神障害や発達障害への偏見が少しでもなくなればいい」と静かにおっしゃった。理事長や理事として、誰でもできる仕事であっても、自分が一番時間に余裕があると思えば率先して仕事を請け負っておられる。


 冒頭の繰り返しだが、相良さんの「自分がそこにいていいのか、必死で役割を探してしまっているところがあるかも。」という言葉が印象に残る。

 今は、その先に相良さんの役割を求める人や自身でやりたいことがある。それは昔と違うのではないか。同じ心持ちであっても環境によって大きくプラスに変わることを証明されているように私には見えた。



▷  NPO法人凸凹ライフデザイン


▷ 精神障害当事者会ポルケ



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