ピンチをアドリブで乗り越える技 56/100(思考回路マッピング)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
昨日は、演技をする上で最も重要とも言える、『Thought』のお話をしました。
でも、実際のところ、どうなの?
という話を今日はしていこうと思います。
結論から言うと、私は台本のセリフを覚えると同時に、思考回路、つまり『Thought』の連鎖を覚えます。
何を思い、何を考え、何に驚き、何に注意を向け、何をしようとしているか。
その軌道をマッピングします。
口で何を言うかよりも、こっちの方が重要です。
「べつに、あんたのことなんて好きじゃないし。」
って言う時って、心の中では
「すきすき、もう好きすぎる、めっちゃスキ!」
って思ってるじゃないですか。そういうことです。
ピンチに陥った時にも、相手の『Thought』は何なのか、つまり相手は何を思っていて、何を求めているのか(『Objective』に近い)を読むことが重要かもしれません。
それは傾聴によってなされると思うのですが(5/100参照)、自分自身もこの『Thought』つまりどういった意思をもって言葉を発しているのか、『The Wittness』(7/100参照)を用いて、『離見の見』で意識することによって、表現が明確になると思います。
でも、こういったスキルを用いるのは、ピンチに陥った時、もしくは何か調子が悪い時です。
私も、台本をもらった時点で、セリフと共に思考回路を覚えるとは言いましたが、本番ではこれらを忘れて演技出来るようにします。
むしろ、意識せずとも自然と追えるぐらいになるまで覚えます。
本番では一旦全て忘れて、無意識に出てくる思考回路のマッピングをもとに、相手への傾聴から生まれる、リアクションを重ねながら、このマップに修正を加えつつ進んでいきます。
セリフは変えられませんが、『Thought』は相手の反応によって柔軟に変えていく必要があります。それが自然かつ深い演技には求められると思っています。
「べつに、あんたのことなんてすきじゃないし。」
と言う時に、
相手が、伏目がちか、もしくは真っ直ぐに自分のことを見てくるか。
どういうイントネーションか。
それによって、次の
「俺だって」
の言い方が変わってくるじゃないですか。
『Thought』の選択肢として
好き
恥ずかしい
安心させたい
など、その選択肢は無数にあります。
準備段階で、一度はマッピングをしますが、本番では、出たとこ勝負。
まさにアドリブを行います。
一つのセリフを、どのようなイントネーションで言うか、そこに多くの時間を費やして準備してくる役者さんも多いです。でも、それでは生きた演技にならない。と、個人的には思います。
準備をするのは自由ですが、本番ではそれを一度捨てて掛かるべきです。
台本通り、原稿通りに物事が進むことなんてありません。
一方通行のように思われる、プレゼンや発表の場に於いても、相手の仕草や反応に傾聴し、アドリブで臨むほうが魅力的に映る筈です。
原稿通りのこういう方、見覚えがありませんか?生きてないですよね。
人によっては、このアドリブ感を原稿に書き込んでおいて、意図的に行うことも出来ますが、これは上級者向けですね。
これは、演技でいうところの、決め台詞の部分かと思います。
思考回路をマッピングする中で、ここだけは外せないという『Thought』を碇のように定めておきます。
一つの碇から次の碇まではアドリブですが、そこだけは外さないようにする。傾聴からリアクションというアドリブを重ねながらも、どこかで次の碇を意識しておき、そこへ向かえる範囲内でのアドリブにします。
これが、
イギリス式の演技は職人的である
と私が考える所以です。
演技に関しては、こちらの投稿でさらに詳しく推察してますので、ご興味のある方は是非ご一読ください。
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