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単発短編

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『#ThEDPS/Three Hundred Emotional Piece Sence_キミの落書き』

 言葉が欲しいと思う。紡げる人はすごい。あたしも書くけど、紡げているとは言えない。せいぜいSNSのつぶやきか、誰の目にも触れずに一定期間でクローゼットの奥にしまい込まれる日記、程度だ。紡げる人っていうのは、きっともっと他にいる。
 だからあたしは、大切な人に大切なことを伝えることすら、できていないだろう。自覚があるだけ、自惚れないですむからまだそこはマシだ。
 ただ誰かの目に触れた時に不意にプラス

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『T.h.E Daily P.S.ver.1.0_太陽が奪うキミ』

 どこであろうと関係ない。
 けど、下着はつけるし、ってことを考えるとその感覚を享受できる面積は下半身の方が広い。
 素肌のまま、毛布の下に潜り込んだ時の感覚。キミにも、これの真似はできない。けど、そんな毛布でもキミみたいに抱きしめることはできない。
 だから隣にいないという現実は、そんな毛布のせいで寂しく感じるし、潜り込んだ毛布は自分の体温でしか暖まらないから、朝まで必死で眠りに行くんだ。
 少

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.3}

{R/G/B/A:1.0.3}

 放課後部が、24日金曜日のクリスマスパーティ開催を決定したその翌日以降、その面々は午前中にexamのResult Review、昼からは24日の準備を押し進める日々が続いた。真燈は全体進行を仕切りつつ、明吏と奏慧が飾り付けの資材や食料などの手配班、都と更叉は手配班の準備した資材で飾り付けや小道具(?)の製作担当となり全体で準備を進めていった。時折、2年の部員であ

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色彩の権利{R/G/B/A:1.0.0}

{R/G/B/A:1.0.0}

 その日は、東京でも寒波の可能性が予報されていた。
 12月も下旬に差し掛かりつつある中での寒波の予報は、例年に比べれば少し早い。師走で天気も何かを急いでいるのだろうか。もしかするとホワイトクリスマスが訪れるかも知れない、と各局の天気予報は年末商船への演出を連日囃し立てていた。
 そんな中、とある学園に属する高等部は、冬休み前の考査最終日を迎えていた。横文字の好き

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色彩の権利 [-Characters-]

Male:篠坂 明吏 / しのさか あかり
Class:epsilon(1年) / 16歳 / 身長:170cm / 一人称:僕
主人公格の1人。
温厚で人当たりが良く友人関係は広いが、特に仲良い人間は絞られる性格。
基本所属は帰宅部だったが、天崎奏慧の誘いで放課後部に入部することになる。

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Female:天崎 奏慧 / あまさき かな

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[Synopsis]色彩の権利[あらすじ]

 
 それまでのなんら変哲もない日常が、突然の変化を起こすことは、人にはよく起こりうることだ。
 それが外部からの要因であれ、自分の中の価値観や気持ちなどの変化であれ、人はその偶然の衝動のようなものを、いずれかの形で受け止めて、変わり、気づき、成長していく。
 
 そこに超常現象や神が起こすような奇跡は必要ない。

 慌ただしく過ぎ去っていく時間、流されるような日常が当たり前になってしまったその世

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蒼い月-どれだけ忘れてもこの時だけは持って行く-

蒼い月-どれだけ忘れてもこの時だけは持って行く-

 気が付くと、頭上の月が雲の隙間から顔を出していた。
 今日は曇りかと諦めたつもりだったのに、夜空のやつ、お茶目なんだから。
 想いに耽るようなことは数あれど、あたしのこれは、たった15年の人生の中でも目下、現時点最高難易度であり同じく最重要機密課題である。これは絶対にバレてはいけない。自分1人の部屋で考えて、うっかり日記にでも記してみろ。うっかりアイフォンの中にでも残してみろ。それは紙もしくはデ

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.2.0

=2nd Act.Ver.1.2.0========================
 
 朝が来て、目覚ましの音に気づかなくて、自然と目を覚ましたら6時半だった。
 一瞬やばい!と思って飛び起きるけれど、隣でまだ浬が寝息を立てている。
そんなに焦る時間でもなかったけど、こうなると二度寝は危険だ。どうしても習慣で飛び起きてしまうけど、今日はそうでなくてもよかったのだった。
 なんせ家から1分で学校

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.4

=2nd Act.Ver.1.1.4========================

 それからまたしばらく話をしていると、時間はうっかり20時をすぎてしまっていた。
「うあわ、こんな時間だな」
 ぼくが声をあげる。
「あ、本当だ。うーん…でもなんか」
 と、珍しく結可さんの歯切れが悪い。
「ちょっと待ってて」
 と、携帯を持って離席し、リビングから出ていった。
「浬、そろそろ帰る?」
「ぬー。

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.3

=2nd Act.Ver.1.1.3========================

 それからは空衣くんを呼んで、談義は一度中断、リビングに降りて結可さんのお手伝いをして軽い片付けとか配膳をしていていたら、秋海さんが到着した。何やら結可さんに手土産っぽいものを渡しているなぁという光景に出会ったが、何かはわからない。
 自分はもやもや抱えたまま、でも美味しい結可さんの手料理に舌鼓を打っていた。

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.3.2

=2nd Act.Ver.1.3.2========================
 
 弟の空衣が浬を連れてきて、飲み物とかを運んだ後で秋海と通話していたあたしは、ふと気がついた。
「あれ、もうこんな時間じゃない」
 気づけば、時計の針は6時、18時を指している。
『うわほんとだ。もうそろそろ夕飯だねぇ』
 ネットワークの向こうの秋海も同意を唱えた。
「今日は空衣が当番なんだけどあの様子じゃ降

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.4

=2nd Act.Ver.1.1.4========================
 
 部屋を出て案内されたのは、先程きた時にスルーした階段側に向かって一つ隣の扉の部屋だった。
「ここ、本当はウォークインクローゼットなんですけど、意外とこの収納多くて。下にもあるのでこっちあまり使ってなかったので、各自の趣味部屋になっちゃっるんです」
「コレクション趣味の人多いのかん?」
「主にここは僕と父なん

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.2

=2nd Act.Ver.1.1.2========================

「たっだいまー」
 妃乃杜家に到着すると、そんな空衣くんの挨拶で玄関が開かれた。
「おかえりー……って、え?」
 すると今度はそんな声と共に、先日みんなで集まらせてもらったリビングへ続くドアから、結可さんが顔を出した。何やら不思議そうな表情をしている。
「あ、おじゃましまーすの」
「え、浬?」
「そうだにょ?ん

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キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.1

=2nd Act.Ver.1.1.1========================

 とうとう、というか、あっという間というか。
 自分たちに一つの武器ができた。
 結可さんが作ってくれた、未知の道という武器を手に入れた。
 のだ、と思う。
 疑問や不安があるわけではない。けれど、それでも疑わずにはいられない。
 誰を?自分を。
 その武器をうまく使って勝ちにいけるのかわからない。
 秋海さん

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