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こいつ、おれのこと好きなんかな

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主人公の大学生は女の子に話し掛けられた全ての言葉を勘違いし、オチは全て「こいつ、おれのこと好きなんかな」で終わります。結末は全部同じなので、話し掛けられる台詞と、過程を楽しんでく…
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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑪』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑪』

「夜の匂いが早くなった、初夏がやってくるね」

彼女は言い回しが妙だ。
お婆ちゃんが日本を代表する俳人なのかもしれない。会話に必ず季語を入れてくる。
どこか情緒をプンプンに漂わせて。

朝会った時は、「おはよう、春眠が気持ちよかったねー」
授業を終え外に出ると、「風強いー!薫風だー!」
雨が降り続く午後は、「これは、送り梅雨かな?返り梅雨かな?」

僕は訳もわからず相槌を打って、別れた後にGoog

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『こいつ、おれのこと好きなんかな③』

『こいつ、おれのこと好きなんかな③』

「すいませーん!おちょこ2つ!」

数々のサークル勧誘を断ってきたが、クラスの新歓コンパはさすがに断り切れず、チノパンに青シャツ姿で居酒屋にやってきた僕。
目の前には、クラスで1.2を争う美人といっても過言ではない女の子。
どうやらお酒が大のつくほど好きらしく、余ってしまった生ビールピッチャーの敗戦処理をしている。

最後の一口を飲み干して飲み放題メニューを見た彼女は、日本酒の存在に気付くと同時に

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『こいつ、おれのこと好きなんかな②』

『こいつ、おれのこと好きなんかな②』

「ねー、今日の3限って出席した?」

友達リクエストが申請されました。

mixiの友達申請と一緒に、メッセージが届いていた。
仏教概論Ⅱという、限りなく興味が透明に近い講義であるが、単位の取り易さからいつも教室はパンパンだ。
学期末にある試験の模範解答とも呼べるプリントが毎回の授業で配られるため、友達の少ない僕は出席が欠かせない。

そんな授業が終わった27分後、携帯のホーム画面に通知があらわれ

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『こいつ、おれのこと好きなんかな①』

『こいつ、おれのこと好きなんかな①』

「きみ、そのリュックどこで買ったの?」

たしかに、少し派手かもしれない。

黒地ではあるものの、赤や黄色や紫で彩られたアルファベット達がさまざまな角度で散りばめられている。
もはや黒の余白はない。
新宿の百貨店で母親に買ってもらったこのリュックは、大学の進学祝いでもある。
それなりに高い値段がするが、このデザインなら大学で一目置かれると思い、反対する母の声を押し切り購入した。

キャンパスライフ

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