#49 オトコは黙って『クラフトビール』
2024年4月某日
クラフトビールは瓶で飲みたい。最近そんなことを思ったりする。1990年代の「地ビールブーム」が再来し「クラフトビールブーム」として世を席巻している。どこか懐かしさをまとった往年のカルチャーは、現代の「チルい」空気感とマッチしているのだろう。Lo-Fi、アナログレコード、クラフトビールなど、まちづくりの文脈でもよく見かける。しかし、とあるカルチャーが一世を風靡すると、その形態が「合理的」な姿に変容することについて、良い面・悪い面あるかもしれない。クラフトビールをケースに考えてみたい。
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クラフトビールとは、そもそも「小さい規模で作っているビール」を指す言葉である。大規模なビールメーカーとはことなり、地元の小さいビール蔵で小ロット生産されているものである。流通量が少ないことから、基本的には地元を中心に消費され、地域の愛されるビールとして「地元愛」や「バイブス」とともに地域ブランドをまとっていく。このような、「ニッチ」を強みとする商品カテゴリなのである。
しかし、近年のように、「クラフトビールブーム」という状況が生まれ、需要が大きくなるとどうだろう。「ニッチ」な価値に惹きつけられた「マス」な消費者による需要が生まれる。結果、クラフトビール蔵は設備投資を行い、生産量を増やし、流通効率を高めるために「缶ビール」などの形態をまとい、マス対応可能な小売チャネルで販売される。
様々な地域で長きにわたり価値を育んできたクラフトビールが、手に入りやすい状況はうれしいものの、「缶ビール」として小売店の棚に並んだ瞬間、「クラフト」な良さはどの程度、「価値の層」として認識されるだろうか。「デザインがおしゃれな缶ビール、350ml、金額は500円の高いビール」。仮に、このような印象が定着化してしまうと「クラフト」の価値の毀損があまりに大きい。そして、この毀損したブランドを取り返すことは、相応の時間を要する。要するに、一過性の大量消費トレンドはリスクを伴うということである。よしわるしを結論づけることも難しい。ビール蔵の戦略もあるだろうし。
筆者はクラフトビールが好きだ。そして、その地で瓶で飲むクラフトビールはもっと好きだ。男は黙ってクラフトビール。
ほなら。
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