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#48 地方の『スタートアップ界隈』

2024年3月某日

最近、地域活性化政策の中に、しばしば「起業・創業」「スタートアップ」みたいなキーワードを見かける。個人的には、地域活性化に向けて必要な要素として「しごと」、特に「情報通信」や「クリエイティブ・企画」などと関連する、相対的に若い人々を惹きつけやすいしごとが生まれることは、ひとまず賛成の立場をとっている。

しかしながら、様々な政策の方向性や実施内容を見ていると「ローカルからユニコーンを!」とか「スタートアップ支援プラットフォームを!」といった、キーワードばかりが先行し、最先端のもののごとく喧伝されているものも少なくない。



そもそも、「起業」「ベンチャー」みたいなといったカルチャーは、今にはじまったことではない。海外や東京のみならず、地方でも遠い昔から普通に存在している。現在の地方における、「スタートアップ」といった言葉が前に出過ぎた空気感は、これまで都市部のビジネスパーソンを中心に親しまれてきたニュースメディアや、ビジネス書のカルチャーが、「遅れている地方」に時間をかけて浸透した結果、「遅れたブームの後追い」として生じている、という穿った見方もできてしまう。悲しい。自治体の古びた会議室にパイプ椅子を並べ、画面比率が古いスクリーンに小さく映し出されたスライドを背後に集合写真を撮る。手作りのパーカーを着た集団による「デモデイ」とやらに、哀愁すら感じる。

設立10年以内で10億ドルの評価がつく事業を本当につくるなら、人材確保や資金調達のステップなどを含めて、具体的にどのようなピースが揃うならできるかまで含めて検討すべきである。経歴不明の有識者による、「金融機関の協力が必要だ」というコメントなどを見かけるが、株と負債を理解されていないケースすらある。なんとなく高揚感のあるイベントに参加する「エンタメ」を消費することで終わってしまっては税金がもったいない。

無論、筆者は地域の発展を悲観しているわけではない。「しごと」を切り口とした発展方法を検討するにしても、「遅れたブーム」に乗っからずとも、もともと地域にある良さを活かす方法もあると考えている。例えば、土着的なニーズに沿って、業容を広げる「ヤンキーの虎」みたいなスタイルの優れた実業家が沢山いる。彼らは、経営者であり「事業投資家」でもある。例えば、「このような、ローカル・コングロマリットの世界の注目度を高め、潜在的な優れた人材が商売人の世界に入ることを促進し、ジモト経営者として成り上がり(可処分所得を増やし)、事業投資家に成長していく」といった、エコシステムの発展のさせ方もあり得るかもしれない。そこにパーカーとステッカーは不要である。

素朴な価値に再注目することが、地方の可能性を広げると信じたい。
ほなら。

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