📖国語便覧で遊ぶ

 いつもは小説のことばかり書いているが、今日は国語便覧の話をしたい。久々に新しい便覧を買って、読んでみたら面白かった。しかも安い。500ページ近くあって、カラー刷りで1000円しない。

 国語便覧をめくってみると、色々な作家や作品が載っている。

 その中で「どの作家が掲載されていて、どの作家が掲載されていないのか」をつぶさに観察すると興味深いことが分かってくる。

 ここでは、数研出版『プレミアムカラー国語便覧』に注目して、作家のチョイスについて好き勝手に議論していきたい。
(基本的に”ないないづくし”である。文句ばかりで申し訳なくなる。)

 まず児童文学の作家が載っていない。これは重要なポイントである。
 高校生向けなのである意味当然であるが、小川未明や新見南吉などは出てこない。小中学生での国語学習で知っているだろうと見なして、削っているのだろう。

 次に気づくのは、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が出てこないことである。小泉八雲は日本の文化、伝統や風俗を海外に紹介したという点で重要な作家である。だが出てこない。なぜだろうか。よく分からない。

 全般的に落語の話が出てこないのも目に付く。能や狂言、浄瑠璃、歌舞伎についての記載はあるのだが、落語には全く触れられていない。落語は坪内逍遥や夏目漱石など、明治の作家に大きな影響を与えているはずなのに。

 あまりにも”ないないづくし”で来てしまった。良いところも語ろう。
 大衆文学の作家はたくさん出てくる。特に村上春樹以降の作家が純文学・エンタメ問わずに紹介されるようになった。この便覧から知ったエンタメ作家も多い。また、一部のライトノベル作家も紹介されるようになった。便覧の意義として、高校生に読書を促すということが重視されているのだろう。良いことである。

 日本人の評論家・学者に関する記載も充実している。入試問題に頻出する評論家たちが一覧になっているのだ。素晴らしい。評論家を知れば、様々な分野・専門知識にアクセスできるようになる。評論は現代文の中でも得点源にしやすいので、評論家の紹介に力が入っているのだろう。

 今日の話はこれでおしまい。出版社ごとに国語便覧の内容を比べてみるのも楽しいかもしれない。

 

 

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