見出し画像

ストレスに打ち勝つ! SOC理論とは

前回の記事では、高齢者の心理的・社会的健康を促進するためのSOC理論(Selective Optimization with Compensation)を紹介しました。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

今回取り上げるSOC理論は、Sense of coherence (SOC)です。
つまり、提唱者が異なる全くの別物です…ややこしいですね。

sense=感覚
coherence=一貫性

を指しています。

つまり、sense of coherenceは「首尾一貫感覚」と訳されます。

Sense of coherence (以下SOC)は、
ストレスに対処するための考え方として広く研究されています。

平たく言えば、自分の人生に対して納得できているという感覚のことですね。

アメリカ人の医療社会学者、アーロン・アントノフスキー(Aaron Antonovsky)によって提唱されました。

SOCを構成する3つの要素

SOCは、把握可能感、処理可能感、有意味感の3つの要素からなります。

1、把握可能感

身の回りの出来事に対してある程度予測でき、どのようなものかを理解できるという感覚。
自分自身や周りの状況を理解し、予測できることがストレスを軽減することに繋がります。

セラピストの業務に置き換えてみると、
明日担当することになる新患の情報が何一つなく、一緒に組む先輩は何も協力してくれない…となると把握可能感は激減してしまいますね。

2、処理可能感

何とかなる、なんとかやっていける、という感覚。
問題解決に向けて起こせる行動があるかどうかがポイントです。

求められる仕事や役割に対応するための資源はいつでも得られる、
という確信があることでストレスは軽くなります。

大腿骨頚部骨折の人のリハビリなら経験があるから大丈夫、みたいな感覚です。
あるいは、
以前買った専門書を開けば効果的な運動療法は理解できそう、あの先輩に相談すればヒントをくれそう…
みたいな感覚があれば、それほど悩むことはなくなりますよね。

反対に、「このレジメはダメだね。やり直してきて」みたいに、
具体的な改善策を示さない指導をされた場合はどうでしょうか。
これだと、どんな問題解決行動を起こせばいいのかが分からないため、頭を抱えることになります。

3、有意味感

ストレスを感じる事柄においても、自分にとって意義がある挑戦とみなせる感覚。
自分自身や周りの状況に意味を見出すことができると、ストレス軽減に繋がります。

勉強会に参加するのは面倒だけど、きっと将来役に立つ!という感覚ですね。
学会発表に向けて準備しているセラピストたちは、この有意味感が強くないとできないはずです。

このように、
SOCが高い人はストレスの原因を理解しやすく、自分で対処できると感じ、意味のあるものだと捉えることができます。

そのため、
ストレスによる精神的な不調を軽減したり、健康を保持したりすることができると考えられています。

SOCを変化させる5つの要因

①年齢による影響

提唱者であるアントノフスキーによれば、
一貫性の感覚は30歳の時に安定し、その後は比較的一定に保たれるとされています。

一方で、SOCは年齢とともに変化することを示す研究もあります。
一般的には、高齢者は若い人よりもSOCが高いという研究結果があります。

これには、
歳を重ねることによる教育レベルの向上という理由が挙げられます。

また、
高齢者が自分の目標や資源を選択し、最適化し、補償するという選択最適化補償理論(もう一つのSOC理論)に基づいて行動しているからだとも考えられています。

高齢者は自分の能力や環境の変化に合わせて、目標を見直したり、努力したり、代替手段を探したりすることで、
幸福感や健康を維持しようとします。

詳しくは前回の記事を参照してください。

②居住地による影響

ポーランドの高齢者を対象にした研究では、
自宅やアパートで生活している人の方が、施設で生活している人よりも有意味感が高いことが分かりました。

またノルウェーの研究では、
セルフケア能力の高さとSOCスコアの高さが正の相関であることも分かっています。

③性格による影響

ポジティブな感情や生活満足度が高い人は、ネガティブな感情やストレスが多い人よりもSOCが高いという研究があります。
これは、ポジティブな感情や生活満足度が高い人は、周囲の環境に適応しやすいからだと考えられます。

また、
ビッグファイブ性格分析による外向性や開放性、協調性や誠実性が高い人は、SOCが高いという研究があります。

ビッグファイブについて詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。

④教育による影響

教育によって知識や自己効力感を高めることができます。
知識や自己効力感が高い人は、自分の環境に対応しやすいのでSOCが高くなる傾向があります。

⑤社会的支援の影響

社会的支援によって感謝の気持ちや愛情を高めることができます。
感謝や愛情レベルの高い人は、自分の環境に満足しやすいのでSOCが高くなります。

SOCを高める方法

SOCを高めるためには、
ストレスの原因を理解しやすくするために、問題解決型の戦略を使うことが有効とされています。

問題解決型とは問題焦点型とも呼ばれており、
ストレスの原因を根本的に取り除くように行動することを言います。
(ちなみに反対は、感情の制御に重点を置く情動焦点型です)

例えば、
計画を立てたり、状況を肯定的に再解釈したり、問題に対して積極的に行動したりすることです。

具体的な例としては、以下のようなものがあります。

◉把握可能感を向上させる方法

自分自身や周りの状況を理解するために、情報収集や学習を行うことが有効です。

例えば、
新しいことを学ぶために勉強会に行く、医学書を読む、先輩と話すなどが挙げられます。

◉処理可能感を向上させる方法

問題解決に向けて行動するために、自分自身の能力を高めることが有効です。

例えば、
スキルアップのための勉強やトレーニング、自分で目標を設定して達成することなどが挙げられます。

また、
自分の能力や資源を客観的に認識し、時には周囲にサポートや協力を求めることも大切です。

◉有意味感を向上させる方法

自分の価値観や目標を明確にすることが大切になります。

自分自身や周りの状況に意味を見出すために、自己実現や社会貢献など、
自分自身が価値あると思える活動に取り組むことが有効です。

例えば、
ボランティア活動や趣味の活動などが挙げられます。

これらは、患者さんに対してセラピーを提供する際にも応用することができます。

把握可能感を高めるためにトレーニングの意味と今後のリハビリの流れを説明し、

処理可能感を高めるために自己肯定感を高めるような声掛けや課題の難易度に配慮し、

有意味感を高めるために適切な目標設定を共有する。

ぜひ実践してみてはどうでしょうか。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
面白かった、為になった、と思ったら♡スキ、フォローしてもらえると嬉しいです☺️

●Twitter、Facebookのリンクはこちらから⤵︎

●オープンチャット「自律神経の知識箱🎁」
自律神経に詳しいセラピストが集まって、さまざまな発信をしているので覗いてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?