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歌舞伎座

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歌舞伎を見に行った感想です。
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#歌舞伎

六月大歌舞伎『山姥』 初の全幕観賞

六月大歌舞伎『山姥』 初の全幕観賞

今月の歌舞伎座も残すところ、あと四日。先週は縁あって、夜の部を観劇することができました。五月は昼の部&幕見席でしたが、昼の部&夜の部はお初なんです。特に役柄の違いが印象的だったのは米吉丈で、夜の部は十五、六の初々しい娘役、一幕目『南総里見八犬伝』の娘浜路でした。「あれ~」と帯を解かれる場面があって『八犬伝』はなかなかのエンタメ。歌昇丈の六法を観るのも、初めてでした。

二幕目は『山姥』。萬壽丈の常

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團菊祭五月大歌舞伎『伽羅先代萩』 政岡の赤い衣裳

團菊祭五月大歌舞伎『伽羅先代萩』 政岡の赤い衣裳

評判を聞きつけ、幕見席で夜の部を観劇。上演は今週いっぱい。幕が開いた瞬間、この演目の人気がわかるようでした。大向こうも立派で、憎々しい悪役・八汐は代役の中村芝のぶ丈でした。芝のぶ丈は国立劇場の養成所から成駒屋に入門し、昨年の『マハーバータラ戦記』に続く、抜擢。お顔立ちなのか、お若いからなのか、目元がギラギラしていて、スピード感があり。傍らで、米吉丈も堂々と。

さて、その感想は? うぁ〜ん、政岡、

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團菊祭五月大歌舞伎『鴛鴦』『毛抜』『幡随長兵衛』どれも、趣向が盛り沢山!

團菊祭五月大歌舞伎『鴛鴦』『毛抜』『幡随長兵衛』どれも、趣向が盛り沢山!

一幕目は51分、二場の舞踊劇『鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)』。ラストで鴛鴦の羽を描いた袖をパタパタと。綺麗でした。

さて、そのストーリーは?

河津三郎は曽我兄弟の父。後に、暗殺される人物だけに、なんやかやで敵が多い。赤っつらの股野五郎もそのひとり。河津三郎を妬む股野は、遊女・喜瀬川を彼から奪おうとして彼に相撲を仕掛け、負けてしまったのである。泉のほとり、河津に生き血を飲ませて狂わせ

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三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』メンズ着物をウォッチング

三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』メンズ着物をウォッチング

狂気の美しさを堪能した幸四郎丈、振り返り。

近頃「無我」について、良く考える。例えば、マラソンのゴール目前にトップ争いをする選手たちは無我だ。狂気というのは、やがて「無我」に繋がるのかもしれない。『伊勢音頭恋寝刃』の松本幸四郎丈はスッキリと美しく、心の底にあるモノを見たようで、大満足だった。

通し狂言なので、スピンオフ・ドラマ風に場ごとの主役が登場し、金儲けを企む小悪党を退治して活躍する。「伊

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歌舞伎・演目覚書④『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』

歌舞伎・演目覚書④『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』

三月の京都・南座は中村隼人丈が壱太郎丈と『女殺油地獄』をやっているそうだ。

有料チャンネルがハシリの頃に『パーフェクトデイズ』のベンダース監督の『都会のアリス』や、なぜか、結婚する動機に繋がった『ポンヌフの恋人』を盛んに放送していた。思えばこの頃が私の真の映画デビューで、モノクロの日本映画を見るようになったのも、有料放送からの映画館通いの流れだった。

テレビの画面で観た『女殺油地獄』は1957

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歌舞伎・演目覚書③『伊勢音頭恋寝刃』

歌舞伎・演目覚書③『伊勢音頭恋寝刃』

急に秋らしくなった。江戸研究の田中優子先生の『きもの草子』には「新暦になって、年中行事がややこしくなった」と書かれていた。例えば、カレンダーの三月三日に祝う桃の節句も、旧暦では、カレンダーの四月二十二日。桃は、桜より後に咲くのだ。重陽の節句「菊の節句」は旧暦九月九日。2023年のカレンダーでは、十月二十三日にあたる。浅草寺では十月十八日に、菊供養とお練り行列、奉納の舞が行われる。

昨年、お稽古し

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歌舞伎・演目覚書②『京鹿子娘道成寺』

歌舞伎・演目覚書②『京鹿子娘道成寺』

私が歌舞伎座で初めて観た演目は、玉三郎の歌舞伎舞踊『娘道成寺』だった。憧れはあったものの、まだ、三味線を始める前の話で、結末、鐘供養に訪ねて来た白拍子(しらびょうし)が大蛇に変化し、鐘に取り憑くという程度の知識で、約一時間の演目がスタート。

お坊さんたちのリクエストに応え、烏帽子(えぼし)をつけて現れた白拍子花子(はなこ)が「中啓(ちゅうけい)の舞」でする、ハリセンみたいな形の扇を胸元でグッと握

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歌舞伎・演目覚書①『白浪五人男』

歌舞伎・演目覚書①『白浪五人男』

日本橋三越で『石田節子のきものでおでかけ』で紹介していた歌舞伎の名作『白浪五人男(しらなみごにんおとこ)』の衣裳の展示があったので、ちょっと、寄ってみた。五人の盗賊の衣裳を、三越所有と松竹所有を比較して見られる。個々の経歴を象徴するモチーフが、紫の縮緬にこれでもかと描かれていて、私は長唄を習っているので、弁天小僧菊之助のどデカい琵琶が面白かった。舞台ではプロフィールに合わせて、着付けも変えてあるそ

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壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

昼の部、一幕目の歌舞伎舞踊『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』の『五人三番叟』を観て、私はふたつの発見をした。

五穀豊穣を祈る舞踊『五人三番叟』は若手俳優の躍動感が魅力だ。赤・白・黒の揃いの衣装を身につけた五人が飛び跳ね、舞台を踏み鳴らす。この足拍子という振り付け、土の中にいる邪気を封じ込める浄化の意味を持つそうだ。ただのステップではなく、例えれば、太い丸太に持ち手を付けた「蛸胴

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十二月大歌舞伎『爪王』着物と道行コートをウォッチング

十二月大歌舞伎『爪王』着物と道行コートをウォッチング

十二月の歌舞伎座は三部構成。一部に初音ミクがあるせいか、それとも、正統派コーデの着物好きさんは三部の玉三郎に集まってしまうのか、二部の『爪王』『俵星玄蕃(たわぼしげんば)』はカジュアル着物の方が目について、地下のお土産売り場で、熱心に根付を選んでいらした。着物ウォッチング、以上。

今月は幕見席で勘九郎・七之助兄弟の『爪王』を観劇。動物文学の作家・戸川幸夫の原作を平岩弓枝が脚色した舞踊劇で、鷹の吹

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11月歌舞伎座『吉例顔見大歌舞伎』夜の部で、羽織りをウォッチング

11月歌舞伎座『吉例顔見大歌舞伎』夜の部で、羽織りをウォッチング

夜の部の終演は、9時近く。一幕目の『松浦の太鼓』の小道具に羽織りが出てくるから、というわけではないけれど、館内には羽織り姿が多く、よく見ると薄手のコートだったりして、歌舞伎座に入るには帯つき厳禁というムード。あの、灰色がかったピンク地の縮緬の、肩にだけ手のひら大の葵の葉を散らした羽織りは、着物を直したものかしらと、気になる。

『鎌倉三代記』

さてさて、今回はテレビで見たことのある演目が多かった

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錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』の舞台は、室町時代。序幕の二番は、佐々木桂之助(ささきかつらのすけ)のお家騒動。彼が窮地に至るまでの経緯、すなわち、足利将軍の宝剣が盗まれる場面である。

北野天神の鳥居の前に、宝剣の見聞のためのメンバーが集まって来る。豊後国の若殿で、刀の管理者である桂之助、本日の段取り役、刀の見聞役とその家来、蛇使いの大道芸人のふりをした怪しい人物。そして、桂之

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秀山祭九月大歌舞伎『祇園祭礼信仰記/金閣寺』で残暑の夏着物ウォッチング

秀山祭九月大歌舞伎『祇園祭礼信仰記/金閣寺』で残暑の夏着物ウォッチング

歌舞伎座で、夏着物ウォッチング。盛夏とは別の九月の夏着物。小物より、着物を変えれば安心ね!

はて、さて。一幕目の演目は中村歌六・米吉丈の『金閣寺』。桜の木に縛られた雪姫が、地面に集めた花弁に、爪先で、サササッと描いたネズミが現れて、縄を噛み切るというアレである。

人形浄瑠璃を元に創られた「義太夫狂言」。三色の定式幕が開くと、ドンと中央に二階建ての金閣寺。大ゼリにのっていて、最後のくだりで、建物

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八月納涼歌舞伎『新・水滸伝』お盆休みの歌舞伎座で、夏着物ウォッチングしてみた。

八月納涼歌舞伎『新・水滸伝』お盆休みの歌舞伎座で、夏着物ウォッチングしてみた。

先に、着物の話をサクッと書くと、歌舞伎座の夏着物はハードルが高かった。冷房のきいた部屋から、ドア・ツー・ドアで来られるような、つまりは車で来ているような人しかいない感じで、水色やレモンイエローの無自っぽい着物に、涼しげな絽のお太鼓柄の帯。汗もかかないような、スレンダーなボディばかり。当然、私はワンピース♪

演目の感想については、南座もあるので、ネタバレありとしておきます。

最初に、牢獄中の林冲

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