見出し画像

『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来(上)(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)

【内容】
『サピエンス全史』で、人類史を問い直した著者が、未来の人類について考察した本。

※多少ネタバレ(?)します。


【感想】
人類の次なる目標は、不死・幸福・神性の獲得である…
人間の不死や人間を超えた人工知能が、技術的には現実味を帯びてきた中で、なんとなくデストピア的な世界が出現するのではないかということを思ったりします。
自分が学生だった面白がって90年代に読んでいたSF小説の世界が、いよいよ現実化していたなあと…
こんな現状に、今までの人間社会の枠組みが当てはまらなくなってきていて、自分を含めてちょっとどう対応したものかと、目を白黒させながら、何とかついて行こうとしているのが現状かなあと思っていたりします。

今の高齢者を観ていると、スマホを始めとしたインターネット経由でのサービスなどに対応出来ずに、社会のサービスやチャンスから離脱せざるを得ない状況に追いやられているなあと感じたりしています。
そうならないためには、兎に角、少々リスクを冒し、面倒臭がらずに、そうしたものに慣れることをしないと、そうした高齢者と同じように、或いはそれ以上にこの世界から排除されてしまうのではないかという漠然というか、かなりの不安感があったりします。
どうもこの短期間での技術やサービス、社会構造の急激な発展は、世代の交代やそれに対処出来る思考の柔軟さ、属すコミュニティなどによって一気に断絶していくのではないかという気がします。

この本が書かれた時期が、新型コロナウィルス前だったりウクライナ戦争前の著作ということもあり、記述的にちょっと古いと感じることもありました。
世界的な大規模な戦争は考えられないとか…
世界的なパンデミックは克服されると言ったことは、ある程度は言い当てられているともいえますが…

不死の可能性にも言及されていて、それがいよいよ妄言の世界の話ではなくなってきたという嘘のような本当の話も、自分には判断のつかない話だなあと…
昭和生まれの自分には、『銀河鉄道999』のロボットの身体になった目的もなく自堕落に生きる元人間たちの話とかが思い出されたりもして…
どの道、不死的な技術を使えるのはせいぜい世界人口の内の資産保持する上位1パーセントくらいでしょうし…
今生きている人間での実現性を考えると、世界の富を独占する資産家60数人という感じでしょうか。
死は戦うもの、克服するものという考えが技術的に裏打ちされたもとなった時、人々の死生観や家族観はどう変わっていくのかなあなんてことも考えたりもしました、
この本の中でも、少なくとも150年生きる人間の親子関係や、仕事の仕方なんかも、今までのモデルでは全く対応出来ないものになっていくのではないかといった指摘もかなり頷かされました。
人間が150年生きていたら、それまでの親子関係や働き方やライフプランなんて変わって当然だし、今までの家族関係や社会システムなんて、それまで通りで済むわけがないと…

テクノロジーによる人間の変容による人間の終焉への言及…
人間を神にアップデートする、ホモサピエンスからホモデウスへの進化と変容…
生き物はアリゴリスである、或いはアルゴリズムでしかないのではないかという指摘…
テクノロジーの進化に対応しない宗教やイデオロギーは、退場を余儀なくされる…
一部の知的にアップグレードされた特権階級と、それ以外のカーストに二分化する…

そういった指摘を読んでいて、Googleなどの巨大なテック企業がビックブラザー化していったら、社会や人間といったものはどう変化していくのかといったことも考えてしまいました。
新しい『テクノ宗教』が成立するという予言は、なかなかに説得力がありました。

また、これは次世代サービスのアイデアの宝庫だなあと思いました。GAFAの経営者や世界のエリート層が読んでいたというのも、よくわかるなあと…

世界の62人のスーパー富裕層の資産の合計は、世界の全人類の下位半数の総資産に相当するとかといった話と合わせて考えていくと、より興味深いとおもいながら読んでいました。
これからの人間世界の大きな方向性を決めていくのは、かなり彼ら彼女らの行動に左右されるなあとか…
それから、この本で取り上げられているテクノヒューマニズムは、ヒトラーが野蛮な形で行ったことを、よりソフトな状態で実現させるのではないかとか…

本の後半になって、それまで悲観的とも取れる未来予想図を、急に(?)その可能性があるとそれ以外の道がある的なニュアンスの話の仕方に変わっていくの興味深いと感じました。

正直な感想としては、自分の想像や思考の枠組みから超えた内容で、残念ながら自分には処理しきれない本だと感じました。

https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309227368/

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集