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テニス上達メモ085.「体を使って打ちましょう」は誤解されやすい


▶「手打ちはダメ」「体を使え」とは言うけれど

 
スピンサーブを打つにあたって、体を使って一生懸命スイングしているのに回転がかからないという人は、体を使いすぎているのかもしれません。
 
いくら体を使っても、肝心な腕が振れていないのであれば、ラケットヘッドが走らないから回転はかかりません。
 
「手打ちはダメだ」
 
「体を使って打て」
 
確かによく言われますけれども、それは体幹をダイナミックに使うという意味ではありません
 
体幹を使おうとするあまり、腕を振るスイングがおろそかになっていたりしませんか?
 

▶「ダイバーシティ」を受け入れる

 
キャッチボールをするにしても、「腕は振らずに体だけ使って投げる」場合と、「腕を振って体を使わずに投げる」場合とを比較した場合、腕を振るほうが、プライオリティは高いでしょう。
 
脚もそうです。
 
どれだけ脚の振り上げを大きくしても、腕が勢いよく振られないことには投げられません。
 
確かに、かつては村田兆治の足を高く上げる「マサカリ投法」もありましたけれども、今は足をほとんど上げない、あたかも立った状態からいきなり投げる山本由伸の「やり投げ投法」もあります。
 
ですから、フォームは関係ない。
 
ダイバーシティ(多様性)の時代です。
 
「人それぞれ」でいいのです。
  

▶腕が最優先

 
そして腕を勢いよく振って投げているうちに、自然と足の踏み込みや、腰の回転が出てくるというのが、体を使った本来の動きです。
 
ですから冒頭の話、スピンサーブで回転がかからないという人は、プライオリティとして腕を振る
 
その感覚をつかむために、体の動きを控え目にするというご提案です。
  

▶体幹は「支持する」役割を担う

 
確かに体幹は、大きな力が出せるけれど、だからといって体幹をダイナミックに動かして打つのではありません。
 
むしろ体幹は、ダイナミック(動的)に動く腕の動きを支えるスタティック(静的)な役割を担います
 
つまり腕のスイングにつられて、グラグラ動いてしまわないようにする支持力が、体幹に求められます。
 
幹の土台がしっかりしているから、枝である腕が勢いよく、正確な軌道でトレースされるのです。
 
体幹がグラグラと不安定に動いてしまったら、それにつられて腕がトレースするスイング軌道も安定性を損ないます。
  

▶足で打ち返すのは『テニスの王子様』に限られる

 
手打ちはダメだと言われるけれど、腕ほど素早く、正確に、細やかに動かせる部位はありません。
 
それが証拠に、ラケットを脚でスイングするのがルールに抵触するかどうかは定かではありませんけれども、できたとしても、もちろんそうする選手はいません。
 
それは映画『テニスの王子様』で、足にバンドで巻きつけたラケットで打ち返すフィクションの世界に限られそうです。

やはり腕は器用なのです。
 
なのに「手打ち(腕打ち)はダメ」と見下されます。
  

▶猿も犬もやっている「運動連鎖」

 
スピンサーブは「背中を反り戻して打つ」などと言われます。
 
だけど、いくら背中の反り戻しを使って打つといっても、腕でラケットを下から上へ振り上げる振り上げ幅や振り上げスピードに比べてみれば、たかが知れています。
 
背中の反り戻しはあくまでも、腕のダイナミックな動きをアシストするために、支持していた体幹があとから補助的に動き出すのです。
 
もちろんだからといってその動きは、腕が振られたのちに、背中が反り戻ったりする逆にはなりません
 
体の動きは背中を反り戻してから腕のスイングが導かれる、運動連鎖理論に基づきます。
 
運動連鎖は意識しなくても、自然界では猿も犬もみんなやっています。
 
人間は、意識するからできなくなるのです。
 

▶「ヒザの曲げ伸ばし」でトップスピンをかける?

 
体幹から離れて、もう少し穿ちます。
 
ストロークではよく、「ヒザを曲げ伸ばしてトップスピンを打つ」などと言われます。
 
確かに全身が連動してスイングするぶんにはいいのだけれど、テニスのプレー中に、ヒザの曲げ伸ばしで出せる高低差など、たかが知れています。
 
まさか屈伸運動よろしく、しゃがみ込んでから伸び上がっていては、もちろん飛んでくるボールに間に合いません。
 
ヒザを曲げ伸ばして出せる高低差は、せいぜい数センチ程度ではないでしょうか。
 
そしてテニスのプレー中にヒザを曲げ伸ばせるスピードも、たかが知れています。
 
「こんにゃく打法」として取り上げたロジャー・フェデラーの下記動画ですが、最初のほうは、常識的なテニス指導では怒られかねない「ほぼ棒立ち」です。


それでも、アマチュアが打つ一般的なボールよりも安定していて、速く、スピンもかかっているのではないでしょうか?

それは「フェデラーだから例外だ」「天才ジョン・マッケンローだから棒立ちのボレーが許される」などというならば、それこそフォームはテニスを上手くプレーするうえで本質ではない証左なってしまうのでした。
 

▶ヒザを曲げ伸ばす速度はスイングスピードに直結しない

 
また速く曲げ伸ばしたからといってそのスピードが、スイングスピードへ直接的に伝わるわけでもありません。
 
なぜなら運動連鎖には「時差」があるからです。
 
つまり直接的にではなくて、間接的に影響します。
 
腕でラケットを振り上げる動作に連動して、ヒザの曲げ伸ばしが出てきます。
 
だからといって、腕がスイングされたあとに、ヒザが伸びたりする逆にはなりません。
 
運動連鎖に基づき、ヒザを曲げ伸ばす動きに導かれて、腰・肩がローテーションし、腕のスイングが後から導かれる順序になります
 
先のフェデラーの動画でもスイングの勢いが増すにつれて、ようやくヒザの曲げ伸ばしが出てくる様子を確認できます。

▶ラケットを固定すると、腕のしなやかさがなくなる


ボレーを「足で運ぶ」はどうでしょうか。
 
ラケットを振ったらボレーはミスする。
 
だからラケットは振らずに足のステップインでボールを飛ばす。

一見すると、理にかなっているように思えます。
 
しかし仮にラケットを万力のように固定して、足で運ぶ打ち方をしても、鋭いボレーにはならないでしょう。
 
むしろラケットを固定すればするほど、腕のしなやかな動きが使えなくなって打球は鈍くなります
  

▶ラケットを止めておいたら、かすりもしない?

 
またラケットを固定すればするほど、飛んでくるボールは刻一刻と変化するのだから、その球筋にもついていけません。
 
人の脳は優秀だから弾道予測はできる(だからインパクトは見えなくてもボールを打てる)のは確かなのですけれども、ラケットを固定してしまったら、逆にその優秀な弾道予測も上手く機能しなくなるのです。
 
ストロークでラケットを固定しておいたら、ラケット面の真ん中でボールを捕らえられるわけではありません。
 
ボールを捕える練習として、超初心者にそのような指導(ラケットを止めておいて手出しのワンバウンドボールを当てさせる)をするコーチもいますけれども、試してみると分かるとおり、むしろラケットにボールがかすりすらしなくなったりするのです。
 

▶「背面キャッチ」を試合で実用する?

 
まるで野球の「背面キャッチ」のようなものです。
 
グローブを腕で動かしにくい背中側に固定しても、弾道予測ができるから、背面キャッチができます。
 
しかし、実戦でやるかというと、話は別。
 
それが証拠に背面キャッチができる選手であっても、試合中に、魅せるプレーとしてではなく、あえて背面キャッチを積極的に実用した選手はいないでしょう。
  

▶足は打点へ入るために使われる

 
飛んでくるボールに委ねて腕を自由に動かしたほうが、捕球率は高まるはずです。
 
それを補助するために、足を使って落下地点に入ります。
 
テニスのボレーもこれと同じです。
 
足で運ぶのではなく、たとえば浅いボール、遅いボールが飛んできたら、飛球地点に入るために、足が使われてステップインとなるのです。
 

▶ゴルフの「ワッグル」に学ぶ

 
ゴルフのワッグルではないけれど、ボレーもラケットを、揺らすというと語弊があるかもしれないけれど、脱力しておいてその動きをしなやかにしておいたほうが、体はラケットの重みを感じ取れて、イメージどおりにスイングしやすくなります
 
そのうえで、小さな振り幅でもボレーが鋭くなるのは、打球タイミングがピッタリ合うから。
 
すると、ストリングとフレームの反発性が最も高い面の真ん中のスイートスポットでボールを捕らえられます。
 
また、比較的小さなスイングだとしても、エネルギーが余すことなくボールに伝わるから、鋭いボールが生み出されます。


▶ノコギリで丸太を切る場合


ノコギリで丸太を切るのに、体幹を「ダイナミック」に使うでしょうか?
 
使うとすれば、勢いよく腕を振る動きを支えるための、「スタティック」です。
 
体幹を使うからといって、腕の動きを止めて上半身を前後屈させるのではありません。
 
教わらなくても、自然にそうなります
 
だから体の動きを意識させるテニス指導には疑問符がつくのです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero