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イップス克服に向けて021:「期待」するから「怒り」が湧く


▶自己肯定感が高いと、怒りはすぐに鎮まる

 
「期待」するからこそ、それが叶わないと、怒りが生じます。
 
これまで何度も、繰り返し述べてきました。
 
電車が遅れて怒るのは、電車は定刻どおりに発着してほしい「期待」があるから。
 
挨拶したけど相手に無視されてイラッとするのは、挨拶したら、し返してほしい「期待」があるからです。
 
怒りが生じたら、どう対処するかが運命の分かれ道。
 
それが鎮まるまでには、自己肯定感の高さにより程度の差こそあれ、時間がかかるし、1回怒るたびに、さらに怒りやすい性格作りに加担してしまいます。
 
程度の差こそあれ、と言いました。
 
自己肯定感が高い人は、比較的速やかに怒りは鎮まります。
 
なぜなら自己肯定感と他者肯定感の高さは完全に正比例だから、「いろんな事情がある」「それも仕方がない」と肯定できるからです
 
一方の自己肯定感が低い人だと、「自分の怒りが不適切なんだ」「こんなことで怒る自分は器が小さいんだ」などという感じ方になり、怒りを抑圧するから、怒りが長引きます
 
あるいはこちらで述べたとおり、自己を肯定できない(自分が間違っていると認められない)から極端な自己正当化に走るため、ブチ切れたりもします。

間違いをまとめてしまうと(自己肯定感の低い自分は)ナメられると感じてしまうからです。

なので、周りにもチラホラいるかもしれませんけれども、キレてまで強く振舞おうとする人のなかには、自己肯定感が低い人は少なくありません


▶自己肯定感が低いと、イライラし続ける

 
このように「期待」は、ややもすれば危険。
 
ですから小学生のころには「期待に胸を膨らませ……」などの常套句がささやかれましたけれども、それが過ぎると、トラブルに発展する可能性が高いのです
 
「期待」という「原因」があるから、「怒り」という「結果」が出ます。
 
ところが私たちはテニスをやるとき、どこかで「今日は上手くプレーしたい」などと、「期待」しがちではないでしょうか?
 
ですが期待は時間軸でいえば「未来」ですから、「今」に集中できなくなって、期待すればするほど、それは往々にして叶わない。
 
するとミスして、イラっとする。
 
そうして怒りが生じたら、どう対処するかが運命の分かれ道なのでしたね。
 
先述しました理由にならい、自己肯定感の高い人は、イラッとする一瞬だけで収まりますが、自己肯定感が低い人は、イライライライライライライラ……と粘着し続けて、そのストレスが度を越すと、心身を蝕んでしまいかねません

▶いわゆる「期待外れ」は「現実に対するイメージのズレ」

 
別の例も引いてみます。
 
上司による理不尽な指示に腹が立つのは、上司には、理に適った指示を出してほしい「期待(イメージ)」があるから。
 
期待がなければ(あるいは適切な期待値であれば)、「上司は理不尽な指示を出すこともある(人間は完璧ではないのだから)」などと、現実をありのままに認識できます。

だからこそ「ノー」が言えたり、「スルー」したりする選択肢が得られます。

言葉を換えればこれが、いつも申し上げている「現実に対するイメージのズレ」
 
ズレがなくなると、「理不尽」などとジャッジする主観すら、薄らぐものです。

▶怒りは身体能力を高めるけれど……

「期待」が裏切られて怒りが湧くと、怒りの毒素と言われる脳内ホルモンのノルアドレナリンが分泌されます。
 
カーっと興奮して、力がみなぎり、確かに身体能力を高める一面があります
 
たとえば恐怖も怒りの一種ですから、ノルアドレナリンの分泌により、襲われた動物たちは素早く逃げられたりして生存率を高められます
 
なので、怒ることが必ずしも不適切なわけではない
 
こんなときに怒らず、のほほーんとしていると、やられてしまいますからね。
 
怒って当然のシチュエーションでは、その怒り方がポイントになります。
 
一瞬イラッとして、あとはカラッとするか、イライライライライライラし続けて、心身を蝕むか。
 
前者が、自己肯定感高めであり、後者が、自己肯定感低めなのでした
 
何より私たちの従事するテニスにおいては、怒りに任せてムチャ振りしては、確かにスイングは「パワフル」になるかもしれませんけれども、肝心な「打球タイミング」が合わなくなって、自滅しかねません
 

▶「無自覚的な期待」に気をつける


 私たちは、自分が期待している心の内に、往々にして気づけません。
 
知らず知らずのうちに、「期待」してしまっているのです。
 
電車が遅れて怒るのは、定刻どおりに発着してほしい「期待」が、潜在的にある原因に気づいていない。
 
挨拶したのに、相手に無視されてイラッとするのは、挨拶したら、し返してほしい「期待」が、潜在的にある原因に気づいていない。
 
妻が(あるいは夫が)掃除をしなくてイラっとするのは、妻に(あるいは夫に)掃除をしてほしい「期待」があるからです。
 
それが証拠に、何の期待もなければ、電車が遅れても、無視されても、パートナーが掃除をしなくても、怒りは湧きません。
 
むしろ電車が遅れたせいで、「時間ができてラッキー♪」とすら、状況によっては感じられたりもします。
 
怒るか、ラッキーか。
 
真逆です。
 
それがきっかけで、大げさではなく、その後の人生の方向性が変わる可能性があります。
 
実際、電車が数時間単位で遅れるのが日常というインドでは、もはや一切の期待がないから、遅れても怒らないというではありませんか(笑)。
 
それとテニスも同じで、ミスして怒りを覚える場合は、自分では気づいていないけれど、どこかに「今日は上手くプレーしたい」期待がある。
 
それにより、確かに力がみなぎる気もする。
 
それが運命の分かれ道。

これが過ぎると、上手くいかないのです。
 
特にイップスの人は、「今日は症状が出てほしくない」などと、当然のごとく「期待」するかもしれませんけれども、そこに危険が孕んでいるかもしれません。

自覚できる「期待」は、百歩譲ってまだいい。
 
無自覚的に抱いてしまう「期待」ほど気づける可能性がほぼないですから、私たちは「よくよく注意しなければならない」のです。


▶パートナーの取り損ないをカバーできないのはなぜ?

 
たとえばこんな例。
 
対戦相手からフワッと浮いてきたドチャンスボールを、前衛のパートナーが空振りした。
 
その不手際に後衛プレーヤーが怒りを覚えるならば、それはパートナーの前衛に、せめてドチャンスボールは決めてほしい「期待」があるから。
 
そのせいで現実をありのままに認識できなくなるから、空振りされた何でもない(ドチャンスボールだからゆっくりな)対応なのに、自分までカバーし損なったりします
 
言い換えれば、現実をありのままに認識できなくなるのは、「期待」があるから
 
「期待」が叶わないとき、感情は怒りに染まります。
 
「なんでドチャンスボールを空振りするんだよ!」
 
「お前こそ、なんでカバーに回らないんだ!」
 
コート上でボールをありのままに認識できなくなるのは、「無自覚的な期待があるから」というわけですね。

▶自己肯定感を高めるのが「アンガーマネージメント」の根本療法


相対性の世界です
 
自己肯定感が低い人は、「相対的に周りの人は自分よりも優秀で、何でもできる」という感じ方になるから、期待値が上がりがち
 
一方の自己肯定感が高い人は、「周りの人もそこまで優秀ではなく、自分と対等で、完璧ではない」という感じ方だから、期待値も低めにとどまるのです。
 
その感じ方が、むやみやたらと怒りに火をつけないための、根本的なポイント。
 
つまり、怒ったら「カラオケでストレス発散!」の対処療法ではなく、むやみやたらと怒らなくなるアンガーマネージメントとしての根本療法が、「自己肯定」というわけなのです。

▶(補足説明)店員さんがお釣りを渡してくれなかったら

 
矛盾するようですが日常生活では、お互いに期待し合う人間関係が「社会性」と言えます。
 
たとえば、商品の値段よりも多くお金を支払ったのに、店員さんからお釣りが渡されなかったら……。
 
そんなときに戸惑う原因が、「期待」です。
 
店員さんは、「ちゃんとお釣りを渡すものだ」と、私たちは期待(イメージ)しています
 
店員さんがお釣りを渡さない(現実)が、ワザとか、うっかりか、嫌がらせかは、分かりません。
 
これが、「現実に対するイメージのズレ」。
 
ズレがあると、日常生活を上手くプレーできないのは、テニスと同じです
 
そんな場合は「そんなこともできないのか!」などと人格否定するのではなく、「お釣りを確認してほしい」と伝える丁寧なコミュニケーションを通じて現実に対するイメージのズレをなくし、自他の自己肯定感を育みたいものです。
 
「人間だから、そんなこともあるよ」と。
 
そしてそれは、心がけしだいで、日常生活のどんなに些細な人間関係のやり取りも、「自己肯定感を高める練習」になり得る「チャンス」とさえ言えるでしょう。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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