東雲一

東雲一(しののめ はじめ)と申します。小説投稿サイトに小説を投稿しています。ジャンルに…

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東雲一(しののめ はじめ)と申します。小説投稿サイトに小説を投稿しています。ジャンルにとらわれず、色んな作品を執筆して、投稿できたらと思っています。苦しい時、辛いとき、心の支えになるような作品を書くことが目標です。よろしくお願いいたします!

最近の記事

「ケダモノ狂想曲ーキマイラの旋律ー第3話」

 グサッ。  アルバートは、目の前のライオン男に向かって飛び込みながら用意していたナイフを突き刺す。不意を突かれライオン男は、驚きの表情を浮かべる。 「鬼山、行け!今のうちに!」  ライオン男と相手をしながら、アルバートは鬼山に向かって叫んだ。鬼山は、一瞬立ち止まる。  アルバートが必死に抑えてくれている。この行為を無駄にするわけにはいかない。 「アルバート、ごめん。絶対に、助けに来る」  鬼山は、顔に影を落としながら意を決して地上に向かう階段に向かって走り出そう

    • 「ケダモノ狂想曲ーキマイラの旋律ー」第2話

       地下に通じる階段を下りるにつれてピアノの旋律がより鮮明に彼らの耳に入ってきた。  鬼山は、この流れてくるピアノの曲に聞き覚えがあった。  ドヴュッシーの「月の光」だ。この曲を聞いていると、不思議と落ち着くな。  鬼山は、階段を下りて不安が募る一方で、流れてくる曲のおかげで、心を落ち着かせ冷静でいることができた。それほどまでに、流れてくるピアノのメロディーは美しく繊細な旋律だった。  階段を下りると、明るく開けた場所に出た。地下は、舞台が奥にあり、その前に観客席が何列

      • 「ケダモノ狂想曲ーキマイラの旋律ー」第1話

        (あらすじ) 『タイムベルに白い大蛇が出る』という噂を聞いた鬼山聖は、友人アルバートとともに、大蛇の真相を確かめるべくタイムベルに行くことになる。そこで、猟奇的な狼男や、無数の蛇を操る蛇女など奇妙な人たちが、楽器の演奏をする奇妙な光景を目撃する。彼らは半獣。超人的な身体能力を有し、人間の血なしでは生きられない存在だった。なんとか半獣たちに命を奪われずに済んだが、朝、目を覚ますと鬼山の身体に異変が起きていた。並々ならぬ身体能力に、沸き上がる人の血を啜りたいという欲望。まさに、

        • 「元勇者、命を狙われる」第3話

           古代種。  その種は、遥か昔に急激な気候変動を理由に絶滅したはずだった。ただ、近頃、古代種の特徴を持つ魔物を目撃したという情報が各地で出回るようになっていた。  古代種は、今いる魔物とは明らかに違った点があった。ゲナと呼ばれる紫色の魔力を扱うことだ。現在の人々や魔物たちが使う魔力マナとは違い、ゲナは少量でより強力な魔法を使用することができる。  そんなゲナを扱う古代種がいたとなると、人類の存亡に関わる一大事だ。カーラたちが討伐した魔王どころの話ではない。  一人で山

        「ケダモノ狂想曲ーキマイラの旋律ー第3話」

          「元勇者、命を狙われる」第2話

          「以前確か、ソロがいる場所はここだって聞いたんだけどな。今もいるのかな」  カーラは、魔法学校の前に来ていた。というのも、かつて一緒に魔王討伐の旅をしていた仲間の一人であるソロと会おうとしていた。  魔王討伐の旅をしていた頃の彼の役職は僧侶で、回復魔法に長けていた。魔物に深傷を負わされた時は、幾度も彼の回復魔法に助けられた。  魔王討伐後は、ソロは魔法学校で子どもたちに魔法を教える教師の仕事をしている。カーラは、そのことを彼からの手紙で知っていたのだが、何年か前のことで

          「元勇者、命を狙われる」第2話

          「元勇者、命を狙われる」第1話

          (あらすじ) 魔王討伐を果たした後、勇者カーラは引退して森の奥で一人ひっそりと暮らしていた。ある日、彼女宛に手紙が送られてきた。手紙には、魔物にさらわれた子供を救ってほしいという切実な内容が書かれていた。彼女は依頼主と出会い詳しい話を聞こうとするのだが、依頼主の小屋で複数の魔物たちの奇襲にあう。実は手紙の内容は嘘であり、彼女の命を狙う魔物の罠だった。一旦、魔物たちの魔の手から逃れたカーラだが、謎の魔物シンラからこう告げられる。かつての仲間を引き連れて魔王城に再び来るようにと

          「元勇者、命を狙われる」第1話

          「魔王誕生」第3話

           ガチャ。  勢いよく牢屋の鉄格子の扉が閉まる音がした。  ハンスたちは、地下深くまでエレベーターで連れ行かれ、薄暗い牢屋の中に収容される。彼らは、アンダーグランドの門を通る際に、門番に目隠しをされ、牢屋に行くまでの施設内の様子を見ることができなかった。ただ、エレベーターのようなものに乗り地下深くまで、降りたことは音から分かった。 「ハンス、これからどうする?」  左隣の牢屋からデニスの声がした。 「……ここから脱出する手立てが全くないわけじゃない」  ハンスは、

          「魔王誕生」第3話

          「魔王誕生」第2話

          「よぉ、ハンス。待ってたぜ。途中で、抜け出しやがって。こっちは一人で大変だったんだからな!」  ハンスの後ろにいたのは、デニスだった。ハンスのギルド仲間であり、普段は、ともに国の護衛をしている。  デニスは、しかめっ面でハンスを見ている。それもそのはずだ。一人、ハンスは業務を放棄し、抜け出してしまったのだから。 「悪い、デニス。つい、好奇心が抑えられなくてな」  ハンスは、両手を合わせデニスに誠心誠意、謝罪する。デニスは、そっぽを向いていたが、謝罪するハンスの方をそっ

          「魔王誕生」第2話

          「魔王誕生」第1話

          (あらすじ) ある日、パンドラの箱と呼ばれる国の研究施設で大規模な爆発事故が起こった。ギルドの護衛ハンスは爆発が起きた現場に調査に行くのだが、謎の生命体に寄生される。謎の生命体とひとつとなった彼は、超人的な力を身につけ、国が魔法の源となるマナを生み出すために人々の命を犠牲にしていた事実を知る。その後、彼は聖騎士に捕らえられ、仲間のデニスとともに地下監獄アンダーグラウンドに収監されてしまう。そこで、ハンスたちは研究者カタリナと出会う。彼女の協力もあり、彼らは監獄から抜け出し国

          「魔王誕生」第1話

          「クレアの初恋」第3話

           クレアの隣にいるのは、勇者一行の魔法使いマリナ。憧れにも近い人物が隣に立っている状況に、クレアは思考が整理できずにいたが、レベッカが助かる可能性があると聞いてすぐさま彼女のもとに急ぐ。  頭の一つを切断されたケルベロスは怒り狂い、耳をつんざくような強烈な叫び声を上げる。  やばい、やばい、やばい!でも、レベッカを死なせやしない。応急処置をして、少しでも生存率をあげなきゃ。それが私が今唯一できることだから……。  クレアは、恐怖する気持ちを抑えて、レベッカのことを助ける

          「クレアの初恋」第3話

          「クレアの初恋」第2話

          「何だ、街を守る魔法壁の一部が崩れている……」  街の周囲を見回りしていた守衛が、魔法壁の一部が崩壊していることに気づいた。魔法壁とは、街の外部にいる魔物たちが、入って来れないように街の周囲に張り巡らされた結界のことだ。  魔物たちの侵入を防ぐための魔法壁が崩壊している状況は、かなりの一大事だ。魔物たちが街に侵入し、人々を襲う可能性がある。  どうなってるんだ。魔法壁の劣化によるものかもしれんな。  守衛の男は、魔法壁の崩壊した部分に近づき観察した後、すぐに魔物に関す

          「クレアの初恋」第2話

          「クレアの初恋」第1話

          (あらすじ) ある日、凶暴な魔物に襲われたクレアは勇者ラフルに命を救われる。命を救われたことをきっかけに、クレアはラフルに恋心を抱き、自分の気持ちを伝えようとするのだが、勇者である彼に話しかけることができるのは限られた少数の者だけだった。クレアは立派な魔法使いになり、彼に近づくことを考えるが、魔法の才能が全くないことを知り思い悩む。そんな時、親友レベッカの助言で、上級ギルドの受付嬢を目指すことになる。クレアは受付長の厳しいノルマをこなし、信頼を勝ち取っていく。様々な困難を乗

          「クレアの初恋」第1話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第30話

           カナ、カナタ、コナタの3人は瘴気を使い、それぞれ武器を創造する。カナタは剣を、コナタとカナは杖を作り出すと、感情のない表情を浮かべ、3人は一斉にユウに容赦なく襲い掛かる。  コナタが補助魔法を唱え、カナとカナタの動きは数倍俊敏になっている。彼らはユウをあらゆる角度から攻めて追い詰めていく。  流石に3人を相手にするのは、骨が折れる。  なんとか、動きを止められたらいいんだが。  ユウは、3人同時の攻撃を紙一重のところで回避し、戦略をたてようとするが、そこに魔王の憎ら

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第30話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第29話

           魔王から放たれる瘴気が、どんどん勢いを増していき、カナタを守るユウを追い詰めていく。ユウに宿っていたマゴは、長くは使えない。瘴気が威力を増す一方、ユウのマゴは輝きを失っていく。  カナタは、意識を倒れているカナとコナタの方を見つめた。二人ともすでに魔王に、魂を奪われ抜けがらのようになっている。  ただ、カナタは、カナとコナタの身体に目に見えない何かがあることにふと気づく。マナの気配を感じることに長けた彼だからそのことに気づくことができた。 「なんだ……」  カナタは

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第29話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第28話

          「お前は、ユウ。始末したはずだが、まだ生きていたか」  魔王は、塔の上に立つユウの姿を見て、目をギラつかせる。 「俺には、守るべきものがあるんでな。まだくたばる訳には行かないんだよ」  ユウは、腰の剣を右手で引き抜き、その切っ先をさっと魔王の方に向ける。 「守るべきもの。それはいい。お前から、その守るべきものを奪って絶望する姿を眺められる」 「魔王、お前、どんだけ性格悪いんだよ。まあ、いい。俺は、俺のやりたいようにやらせてもらう。要は、勝てばいいんだろう、この戦いに

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第28話

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第27話

           再び天は瘴気で真っ黒に染め上がり、村を漆黒に染まっていく。暗闇に包まれた村を一筋の光が弾丸の如く通過する。凄まじい速度で進むそれはある男の方にまで迷いなく直進していた。その男の名はクラネ。魔王の力を手に入れ、世界を変革することを目論む者。 「こんなちっぽけな少年一人に何ができるというのだ。何もできやしない。それを十分に分からせた上であの世に送ってやろう」  クラネは、瘴気で作り出した禍々しい大剣を両手でぎゅっと握りしめ、弾丸の如く迫る対象をギロリと睨みつける。  カナ

          『ブレーブ・サンズー小さな勇者ー』第27話