内省 6
5の続き
おそらく、それは
「ありのままの自分を受け入れられる、喜び」。
おじさん先生に会って、初めてそのような感情を持ったのだと思う。
おじさん先生は、アドバイスもしないし、悪いところなどに一切言及しなかったし、直させようともしなかった。
絵の一切を否定されることなく、ありのままをほめられる。
それまで、親であれ友達であれ、自分を否定しないものなど、ほぼ無かった。
自分の好きなもの、面白いと思うもの、信じたこと、を友達や誰かに話しても、
「それは変だ」と言われたり「全然面白くない」「普通と違う、おかしい」などと否定されることがしょっちゅうだったのだ。
子供同士だと、ひどい言われ方をすることも多く、私はとても傷ついた。
でも、まわりと仲良くやっていきたかったし、仲良くやることが自分にとって大事だったから、自分の意見を引っ込めた。
自分が傷ついただけでなく、否定された好きな物事までも「間違っている」と思うようになっていった。
日常が、自己否定。
なので、そもそも自分が好きになれなかったし、自分の作る世界なども価値がないと思っていた。
元々、まわりの人からの働きかけにすぐに反応できなかったり、
反応が薄くポーカーフェイス気味の私は、あの絵をほめられたとき、一体どんな表情をしていたのだろう。
おじさん先生のことばに、何も反応できなかった気がする。
たかが子供の絵を、一人の人間として、言葉の限りほめてくれたことを。
初めて、否定なく、受け入れられたことを。。。
多分、わたしは、すっごく、うれしかったんだ。
それを…私は、こんなにも…長い間、どうして忘れていたんだろう!!!
「ありがとう…先生。」
ふとしたことから、それに気づいた私は、
ぼろぼろ涙をこぼして泣きました。
なんの涙?
ありのままの自分を認めてくれた人がいたこと
長らく忘れていたことへの申し訳なさ
ありのままでの自分でいいという安心感
嫌いだった自分を好きになる鍵をもらっていたこと
お礼を言えなかった後悔
素晴らしい大人に出会えていたことへの感謝…
すべての感情が大粒の涙になっていました。
ぼとぼとと、落ちても落ちても落ちても、止まらない。。。
2、3日、思い出しては繰り返し泣き続けました。
こんなことは、初めてでした。
自分の中の、本当に大事なことに出会えた気がしました。
「ありがとう…、先生!!」
昔から、母親に、
人にほめられても謙遜しなきゃ、と教えられていた。
ほめられても、喜んではいけない。
自分を一段下げないといけない。
まわりの嫉妬や、やっかみに対処するための、教え。
そんな大人の処世術を、子供ながら律儀に守り抜いた幼少の私は、人から褒められるたびにそんなことを続けて、やがては
「喜び不感症」 のようになっていたのだ。
そう!私は先生を忘れていたんじゃ、無い。
ふとした時に、おじさん先生の事を思い出すことはあったのだ。
だけどその初めて経験した、「まるごとの容認」
それを私はずっと…
横目でちらっと見るだけで、
「直視してはいけない」「認めてはいけない」と思っていたのだった。
自分のことを、自分で認められない。
本当に長い間、自分に、かわいそうなことをしていた。。。
「そのままの自分を認めていいんだ!」
このことで、さんざん涙を流して泣き疲れた次の日。
いつもは目覚めた時でさえ、体に力が入っていたのが、
何十年かぶりに、心も体も脱力し、深く布団にうずめている感覚を味わった。
この感覚は、いったい、なんだろう?
久しぶりに味わうこの感覚。。。
。
。
。
安心感 だった。
長い間、ずっとずっと忘れていた、感覚だった。
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過去、上野の美術館など、何回か見に行く機会があった。
また、小規模なグループ個展のようなものを家族で見に行き、お城先生のつながりで、父がおじさん先生に会う機会があった。
彼のことを見た父は、家に帰ってきてから面白そうに、こう言った。
ーー名前が「東」から「出」て「長作」でしょ?
なんだか、めでたい感じだなあ。
知ってるか?レツゴー3匹ってのに長作って面白いのが居るんだよ(←知らない)
それであの太陽みたいなテカテカ頭でしょ?(←あんたが言うな!)
ひゃっはっは!ふっしっしっし!(口を手で押さえて笑う)
「東」から「出」るんだから、まさに日の出だ、日の出!!
太陽の日の出!
こりゃ、傑作だなあ。ふっしっしっし!
まあ、あれだ、父さんはあの人の絵、なんか好きだな。自然の風景のいいところが出ていて。
なんか、たね子の絵のこともほめてくれてるんでしょ?
太陽みたいな先生だな!!名は体を表すってのは、このことだな!
本当に。。
太陽のようなおじさん先生
東出長作先生へ
あなたと出会えて救われた子供が、ここにいます。
ありがとう
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