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東西北のカップうどんからみた全国の出汁のちがい【土用丑の日2024後編】

結論

大手メーカーのカップうどん

  • 北海道 甘い味付け

  • 東日本 醤油が濃く、カツオの主張も強い

  • 西日本 出汁の風味を感じ、上品な味わい

出汁の細分化

  • 東海地方 濃厚味噌に負けない濃厚なかさね出汁

  • 山陽四国地方 イリコたっぷり出汁

  • 山陰九州北部地方 アゴ出汁

  • 沖縄地方 カツオがベース


2024年8月5日は土用丑の日

2024年は土用丑の日が2回あります。7月24日は、1回目の土用丑の日でした。土用丑の日2024前編前編として、九州地方で食べられている柔らかいうどんについて語りました。

8月5日が2024年2回目の土用丑の日です。土用丑の日2024後編として、地域によって好まれる出汁について話します。

出汁は、素材のもつ、うま味成分を抽出した液体です。出汁によって

カップうどんの味がちがう

今回の記事を書いたきっかけは、カップ麺のつゆが東西、北海道で買って食べ比べると異なっていたことです。

カップ麺のうどんと言えば、東洋水産の赤いきつね、日清食品のどん兵衛が定番ではないでしょうか?実は、大手2社、どちらとも東西と北海道でうどんのつゆの味を変えています。どん兵衛と赤いきつねは、それぞれ東日本版、西日本版を販売している地域が異なります。北海道だけ特別仕様になっていることは共通しています。

東西の味の境界はどこ?

どん兵衛の東日本版は東北地方、関東地方、中部地方(三重県を含む)で販売されています。西日本版は関西地方、中国地方、四国地方、九州地方で販売されています。

一方、赤いきつねの東日本版は東北地方、関東甲信越地方、三重県を除いた東海地方で販売されています。西日本版は、北陸地方、中国地方、四国地方、九州地方で販売されます。さらに、赤いきつねは、西日本と関西でも味が異なります。関西版は近畿地方で2001年から販売されています。

味の異なるスタイルが誕生した歴史

日清食品では、どん兵衛の発売当初から日本の東西でうどんのつゆの味が変わることに注目していました。どん兵衛は、1976年の発売当初から東日本と西日本で味が異なります。赤いきつねは、どん兵衛誕生の2年後に発売されました。ちなみに、緑のたぬきは、赤いきつねのちょうど2年後、1980年8月に発売されました。

北海道版を先に登場したのは、赤いきつねです。2005年に発売されました。どん兵衛は4年後の2009年、北海道向けの商品、北のどん兵衛の発売を開始しました。

どん兵衛の東西の味のちがい

今回は、どん兵衛で東西北のつゆの味の比較をしました。

北海道→甘さも感じられる、まろやかな昆布中心のつゆ

北海道のどん兵衛は、昆布だしが中心で、甘さとまろやかさを感じます。

日本の昆布の90%は北海道で採れます。北海道版は昆布だしを主役としています。昆布だしをメインに仕上げています。甘さも感じられます。

北海道のどん兵衛を見ると、七味唐辛子はついていません。

東日本→カツオと濃口醤油のダブルパンチ

東日本はカツオの香り、濃口醤油を全面に出しています。見た目も濃口醤油により、濃い茶色です。うどんの汁が濃い理由は、江戸で蕎麦文化が広がり、そばとうどんのつゆを併用したためと言われています。

濃いめの味つけは、江戸に集まった職人が影響しています。江戸で労働者は肉体労働が多く、汗をかきます。幕府のお膝元のため、米が豊富でした。少ないおかずでもご飯がすすむ塩分濃いめの味付けが求められました。

千葉県では、銚子(ヤマキ)、野田(キッコーマン)など大手メーカーの本社があり、醤油の生産がさかんです。濃口醤油を使うため、濃く、味付けになりました。かつお節は数分間煮出すだけで出汁が取れます。かつおだしと醤油の組み合わせは、短気な江戸っ子もまたせず提供できます。

西日本→昆布、カツオ、煮干などが合わさり、出汁を活かした味付け

西日本は昆布だしを中心に、カツオ、煮干し出汁などさまざまな風味が感じられます。薄口醤油を使用しているため、淡い色をしています。出汁が主役です。素材の持ち味を活かす京料理が影響していると考えられます。

江戸時代、北前船が日本海側の輸送船の役割を果たしました。北前船は北海道から日本海側の都市へ昆布、ニシンなど海産物を中心にを運んでいました。帰り、生活物資、各地の文化も持って帰りました。小浜、敦賀、舞鶴から、京都へ物資と文化も持ち込まれました。

関西→昆布と鰹節の合わせ出汁

赤いきつねの関西版も出汁を活かしています。合わせ出汁は大阪で誕生しました。西廻り航路を利用して下関から瀬戸内海を通り、当時の大坂へ運ばれました。

地域によって異なる出汁文化

さらに、出汁の好みは地方によって細かく分けられます。

名古屋→ムロ節+サバ節出汁のかさね出汁

真ん中の名古屋では、出汁もうまみが濃厚です。濃厚な豆味噌の風味に負けないために、かさね出汁誕生しました。豆味噌が濃厚な理由は、夏の暑さでも腐らないようにする知恵です。熟成期間が長いため、色も濃くなります。

かさね出汁は、ムロ節、サバ節がベースになります。ムロ節はムロアジから作られ、まろやかでさっぱりな味が特徴です。一方、サバ節は、サバから作られ、旨味が濃厚です。ムロ節とサバ節をブレンドしてちょうどよい濃厚さに調整されています。

カレーうどんにも、かさね出汁を使用

四国→イリコ出汁

讃岐うどんのつゆを飲むと、イリコの香ばしさが広がります。瀬戸内海側では、イリコだしが重宝されています。イリコとは、カタクチイワシの稚魚です。イリコをサッと茹でて、じっくり乾燥させて作る食材がイリコの煮干しです。イリコの煮干しを水に浸けてから煮て旨味を抽出したものが、イリコだしです。讃岐うどんにも欠かせません。

獲れたてのカタクチイワシを香川県西部に浮かぶ伊吹島などには、加工工場が整っています。とれたてのイリコをすぐ加工することによって、上質な煮干しが生産できます。

九州北部はアゴ出汁

九州地方北部では、トビウオのことを「アゴ」と呼んでいます。アゴが落ちそうなほど美味しいから「アゴ」と呼ばれるようになったなど諸説あります。

アゴを焼いてから干すことにより、水分がとび、乾燥され、旨味が凝縮されます。クセがなく、香ばしさとともに、スッと消える上品な味わいです。

沖縄はカツオがベース

沖縄は、カツオ出汁がメインです。料理によって、カツオ出汁に昆布、豚の旨味を合わせます。

沖縄の麺といえば、沖縄そばです。沖縄そばのスープはかつおだし+豚肉からとります。沖縄の出汁文化は、薩摩藩と中国の影響を強く受けたと考えられます。

鰹節は薩摩藩から伝わりました。カツオは沖縄近海で豊富にとれます。戦前、沖縄にも鰹節の工場が作られました。

沖縄では、中国からのお客さんのおもてなしとして、豚肉料理がふるまわれていました。しかし、庶民にとっては高嶺の花だったため、豚を余すことなく利用されました。「ひづめと鳴き声以外は食べられる」と言われている由縁です。沖縄の豚文化について、まとめた記事は、↓をお読みください。

沖縄では、中国から薩摩藩から中国へ昆布が輸入されたとき、琉球王国にも、昆布が通りました。薩摩藩から昆布を購入していたため、沖縄でも昆布文化が定着しました。

出汁の取り方によっても異なる

一番だしは昆布だしに削り節を加えて煮出す最初の出汁。香りを大切にする出汁。

二番だしは一番だしをとった後の削り節、昆布に水を加えて煮出してつくります。さらに、削り節を追加した出汁が追い出しで旨味、風味をしっかり加えたもの

出汁+みりん、醤油、酒→八方だし

他にも、青森県の焼き干し、仙台市の焼きハゼなど、全国各地で親しまれている出汁は、たくさんあります。精進料理には、昆布、シイタケなど植物性の食材を使用します。

紹介してきた東西のちがい

参考文献


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