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うつ病とは?:脈拍から見える心の状態

外での自由な活動を自粛することが求められてから早一年。自粛によるストレス、不安など感じている人も多いと聞きます。最近ではアーティストやアスリートの方々でも過度のストレスによるうつ症状などを患ってしまう話も耳にします。

近年社会問題となっている鬱病は慢性的なストレスから生まれることがわかっています。どの様にしてうつ病が起こるのか、目に見えない不安やストレスに対する取り組みについて知ることでこれからの向き合い方にも変化が生まれるのではないでしょうか。



うつ病の原因:脳内で何が起きているのか

広島大学大学院医系科学研究科 相澤秀紀教授と同 脳・こころ・感性科学研究センター 山脇成人特任教授の研究グループがストレスによる脳の炎症反応がうつ病を含む精神疾患の原因となっていることを発見しました。

この研究では手綱核(次の項目に説明があります)の炎症反応に関与するPCSK5と呼ばれる遺伝子が慢性的なストレスの元で活性化し、セロトニン神経系の神経伝達物質異常を引き起こすことから鬱病のような精神疾患に繋がると述べられています。

脳と心臓の関係:心拍数への影響

上記の手綱核とは覚醒と睡眠や概日リズム, 社会的な葛藤, ストレス反応などに関わる神経回路です。

この外側手綱核にはレム睡眠を維持する機能が備わっており、外側手綱核を破壊したラットを用いた実験では、野生のラットと比較してレム睡眠の割合が41%、その長さは24%減少しました。こちらの記事で睡眠についての詳しい説明が紹介されています。

手綱核は鬱病関連物質であるセロトニンの活動の制御装置として知られていて、動物がストレスを感じる状況に陥ることで活性化します。実際に鬱病患者の外側手綱核では異常な血流量の増加が報告されています。

不安神経症や抑うつ症状などの心臓病との関連が専門家によって指摘されている様にこれは心臓からの血液循環の調整にも影響しています。

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これらの現象は同時に心臓の活動(心拍)から神経活動を調べられる可能性でもありました。そこで現在取り組まれているのが心拍測定機能を搭載したスマートウォッチによるストレス、不安の可視化です。

この話に当たって少し心電図の読み方とそこからわかることについて記します。

心電図:読み方と分析

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上の図はwikipediaより引用してます。

これは心電図の中の一つの周期を表しており、実際にはこの振幅や周期が異なるものが並んで見えています。

心電図でR波は心臓(心室)が収縮する際、つまり心臓が拍動する際に発生する電気信号を表します。そのR波と次のR波との間隔(RR間隔:RRI)は心拍とその次の心拍との時間を表します(安静時は通常600~1200ミリ秒程度)。このRRIは、深呼吸時など副交感神経が優位になるときには値が大きくなり(心拍がゆっくりになる)、一方、興奮時など交感神経が優位になるときには値が小さくなります(心拍が速くなる)。RRIを一つの関数とし、それをパワースペクトル密度関数に変換することでその周期が短い箇所(HF)と長い箇所(LF)に分けて見ることが出来ます。これらは神経活動を表しています。LFは交感神経または副交感神経の活動を表し、HFは副交感神経の活動を表します。これらの比から自律神経の活動レベルを知ることが出来るのです。

上記のパワースペクトル密度関数とは波を複数の波に分解して、それぞれの波の強さで表される関数です。あらゆる周期関数は正弦波の足しあわせで表現できるという特性を利用し、時間の周期関数を振幅と周期の角周波数関数に分解するフーリエ変換の基準となる周波数に依存しないように、単位周波数幅(1 Hz 幅)当たりのパワー値として表現するスペクトル関数で、不規則信号(ランダム信号)の評価によく使われます。(こちらの記事でわかりやすくまとめられていました。)

また心拍変動係数(CVRR)と呼ばれるものは(RRIの標準偏差 / RRIの平均値)x 100で表されています。これは呼吸による循環血流量の変化を示しており、交感神経の興奮によって値が小さくなります。悩みや不安によって値が小さくなることも知られています。

最近の取り組みとこれから

昨今取り組まれているのはこのように心拍の変動から自律神経の活動レベルを割り出し精神状態を逆算することです。特に今普及が進んでいるスマートウォッチには脈拍を測る機能が搭載されており、理論的にはそれを利用することで普段から自身の内面を可視化することが出来ます。

しかしその正確な実現の為には未だ多くの課題が在るために検証が続けられています。現在は血中酸素濃度や血糖値、血圧測定機能を搭載したスマートウォッチの開発が進められており、それらのデータを用いることでより正確に身体で何が起きているのかを知ることも可能になってくるでしょう。


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