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酒好きになり店を出したら人に騙され人に救われた話⑳

店を閉めてエマと共に
そのまま隣の店へと足を進める。

店を目の前にして
改めて、ecstasyという看板が目に入る。
異空間へと入っていくような高揚感が身体全体を襲う。

なぜこのような店名なのだろうか。
そんな気持ちの整理もつかぬまま
店の扉が開く。

その物静かな店内には
静かに洋楽が流れていた。

少し薄くらい、その店内には
青いLEDライトが目立っていた。

店内に目を奪われた後
ゆっくりとカウンターの方へ目を向けた。

目の前には
見たこともないお酒がズラッと並んでいた。

そのボトルの後ろには
ピンク色のLEDランプが灯っていて
幻想的な空間が、より豪華な雰囲気に見えていた。

そこには、いかにもヨーロッパ人というような
男性が立っていた。

目が少し青く、筋肉質の体型
髪型は金髪。

目にした瞬間に緊張が走る。
当時は外国の方との交流など
ほとんどしたことがなかった。

「は、はじめまして・・・隣で店やってます嘉松です」
躊躇しながらも日本語で挨拶を交わした。

「ハジメマシテ、ドウゾスワッテ」
その金髪のガッチリとした体型から
イメージ通りのワイルドな声で
日本語の返事が返ってきた。

その日本語はカタコトながら
少し優しい口調に少し安堵した。

案内されたとおりカウンターに座る

エマからすかさずに紹介が入る
「この人がここのオーナー、ユーリ」

「ユーリデス、ヨロシクオネガイシマス」
優しそうな口調でオーナーが挨拶を返してくれた。

“ユーリっていうんだ‼日本では女性みたいな名前だなぁ”
そんな思いもありながら自己紹介を返す

「正太っていいます、宜しくお願いします。」
自分も下の名前で自己紹介を交わした。

「ショウタ、ヨロシク‼」
なぜかいきなり口調がタメ口になり
距離を縮めれたような気がして嬉しかった。

すかさず横からエマがメニュー表を出す
おもむろにメニューを出してドリンクを勧めてくれた。

”さすが中洲の人間だなぁ。”
心のどこかでそんな感情を抱いていた。
優しさの中に売上への貪欲さが垣間見えてた。

「じゃあ何かオススメある?」
お酒に知識のない私は
無難な答えを返した。

「じゃああれだね!」

おもむろにショットグラスが目の前に出された。

”ショットか・・・”
単純に度数の高いものが出てくるのだろうなと
少し断りたい気持ちもあったが
お礼を伝えてそのままそれを注文した。

目の前に4つくらいのボトルが並べられた
その4つのボトルはカルア以外、得体のしれないボトルだった。

ひやひやしながら
その注ぐ仕草を見つめる。

なにかわからないお酒が継がれると
そのままストローが添えられた。

”はっ!?これをストローで飲めと!?”
とんでもない店に来てしまったと後悔していると
間髪入れずに目の前で想定外の行動をユーリが続けた。

ライターを取り出してグラスに近づけている。
「ストローモッテ!」
わけが分からずストローを持つと
その直後、何も言わずにショットグラスに火をつけた。

頭が混乱している中、そのままユーリが続ける
「ハイ、ノンデ‼」

急に言われてびっくりしたがとっさに
ストローをショットグラスに突っ込む

一気に飲み干したその得体のしれない
炎に包まれた飲み物に不思議な気持ちに包まれていた。

すると、後方の扉が開いた。お客様が来店したのだ。

ふと、後ろを振り向くと
金髪のヨーロッパ系の美女が立っていた。



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