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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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2021年10月の記事一覧

【140字小説】don't think,feel

【140字小説】don't think,feel

知能が発達し過ぎた人間は
シンプルに生きられない。

楽しければ笑う、悲しければ泣く
…そんな当たり前の感情すら
複雑にこねくり回してしまう。

なぜ素直に「好き」と言えず
嫌な態度をとるの?

なぜ殺したいほど憎んでいるのに
ヘラヘラ笑っているの?

立ち上がれ!

これ、ちょっと小説じゃなくて
ポエム寄りかもしれん(^◇^;)

【140字小説】終末の雨

【140字小説】終末の雨

雨が降ると遠くから川の放流サイレンが聞こえる。

薄暗い部屋でそれを聞いていると、さながら終末気分だ。

浮かれた花金の声も雨音とサイレンで塗り潰され、ただの薄暗い一日の始まり。

外からは誰かが布団を叩く音が響き続けている。

そろそろ私も布団を干さなくては。

【140字小説】名前

【140字小説】名前

俺が出会ったその女には戸籍はおろか名前すら無かった。

「…何と呼べば?」

俺が尋ねると女は伏し目がちにこう言った。

「アンタが私に名前を付けてよ。」

「…マチルダ?」

「ちょっ…センス!」

結局揉めに揉めて俺は女を真知子と名付け、あだ名をマチルダにした。

【140字小説】そもそも論

【140字小説】そもそも論

老舗菓子店A庵では若夫婦が新作菓子を模索中だ。

「映えるチョコ羊羹は?」

「映えならアレだ、和菓子でキャラ作り!」

先代はそんな話をBGMに、練り切りを1つ1つ丁寧にこしらえる。

人は見た目などではなく本物の味に回帰すると信じて。

そんなA庵は不味いと有名だった。

【140字小説】戻った手紙

【140字小説】戻った手紙

手紙が戻ってきた。

遥か昔に1度だけ訪れた、
桜で煙る遠い国。
そこで出会ったあの子宛ての手紙。

ラジオから
あの国が噴火で沈んだと
聞こえてくる。
90秒の短いニュース。

あの子に貸した僕の宝物、
時が経つと大変な事になるから送り返して
と書いた手紙。

間に合わなかったんだ。

【140字小説】最低の照れ隠し

【140字小説】最低の照れ隠し

「やぁ眼鏡やめてコンタクトにしたんだ?驚いたよ。凄くいいね。」

そんなセリフを朝から何度心で繰り返しただろう。

先週までの眼鏡の君が消えた、置いてけぼりの月曜日。

君の視線を感じる。

何か…早く何か言わなきゃ。

「やぁ眼鏡取ってもブスはブスだな!」

…最悪だ!!

【140字小説】MASAE

【140字小説】MASAE

給食袋を振り回してたらすっ飛んで水溜りに落ちた。

「ママが作ってくれた袋大事にしなよ!」
と女子が言うから

「これはソーイング・MASAEのおばはん作だよ!」
って言い返した途端におばはんの悲しそうな顔が浮かぶ。

自分に人並みの心がある事を知った嬉し恥ずかし帰り道。

【140字小説】次の展開

【140字小説】次の展開

留守番中、男が押し入った。

私は急な出来事に一瞬固まる。

男も家人との予想外の遭遇に焦っている。

その時、男の後ろにおぞましく黒い老婆が浮いている事に気付いた。

「ひっ」指差す私。

「ひっ」男も振り向き驚く。

この瞬間、物語は男vs私から老婆vs私達へシフトする____!!

【140字小説】家族の山場

【140字小説】家族の山場

毎年必ず家族で登山する。

「今年もそろそろだな」と父。

「楽しみね」と母。

いい加減親との外出が鬱陶しくて
「もう嫌だよ、つまんねーし」
と思わず吐き捨てた。

両親が一瞬悲しい目をして、
僕は少し狼狽える。

リビングには幼い弟が
「ちゅまんねーし」
と陽気に連呼する声だけが響く。

【140字小説】帰宅

【140字小説】帰宅

「ママ」
一瞬誰かの声がした。見回してみたがそもそも我が家に子供は居ない。私はまたTVへ視線を戻す。

「ママ!」
今度ははっきり聞こえた。振り向けば隣家の子が顔中血塗れでぼーっと浮いている。前が見えないから帰る家を間違えたかな。

遠くで救急車の音がする。

【140字小説】公園の帽子

【140字小説】公園の帽子

公園の看板に小さな帽子がかけてある。
落とし物だろう。
ここ1ヶ月ずっとあるから、
恐らくもう持ち主は現れない。

手に取ると酷く重く、
内側に機械的な物が詰まっていた。
光が点滅している。
小さな人影も見えた気がした。

驚く私の手をすり抜け、
それは彼方に飛び去った。

【140字小説】キセキ

【140字小説】キセキ

「78億人が生きるこの地球で私達が出会えた奇跡。25mプールにビー玉を適当に2個放ったら偶然並んで沈んでた…それほど運命的な出会い…いえ、ここは敢えて“出逢い”と呼ばせて。」

そう言いながら鉢合わせた空き巣は逃げてった。
…確かにそうかもな。餞に俺のその財布を贈るよ。

【140字小説】感性

【140字小説】感性

新鋭画家の展示会。イマイチ良さが分からない。

会場の片隅に賑やかしで並んだ若手画家の絵の前で「これの方がいいな」と呟くと隣の男性が「あ、僕もそう思います」

そんなきっかけで私達は結婚した。

あの若手画家は結局無名のままだが、あの時買った絵は今も我が家の玄関に飾ってある。

【140字小説】負けない子供 〜鯉のぼりの空〜

【140字小説】負けない子供 〜鯉のぼりの空〜

下校中、日菜達があの子を虐めてた。

取り囲んで容姿や服装を扱き下ろす。

私も先週やられたから分かるんだ。

気付けばあの子の手を引いて全力で走ってた。

息切れして止まった視線の先に
鯉のぼりが揺れる。

…頑張れ、頑張れ!
絶対、私達の方が強くて健やかな子供だから。