道家 智仁

腎臓内科医です。腎臓病について最新の研究内容を基礎から臨床まで幅広く知識をupdate…

道家 智仁

腎臓内科医です。腎臓病について最新の研究内容を基礎から臨床まで幅広く知識をupdateしていきたいと考えています。

記事一覧

GLP1-RA and kidney

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.055459 GLP-1 receptor agonist である semaglutide と liraglutide が腎機能に与える影響を調べた研究で…

道家 智仁
1か月前
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Sotagliflozin

Sotagliflozin and Kidney Outcomes, Kidney Function, and Albuminuria in Type 2 Diabetes and CKD https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38277468/ ソタグリフロジンはSGL…

道家 智仁
2か月前
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Urinary EGF in ASSESS-AKI Study

はやりの尿中EGFについての研究です。結論を書きますと尿中EGFが高い人はAKI後の長期腎予後が良好ということです。EGFはヘンレのループ上行脚及び遠位尿細管に発現している…

道家 智仁
3か月前
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ARB+ACEI投与が尿中バイオマーカーに及ぼす影響。

ARBとACEIの併用はAKIの発症リスクを上昇させることは有名ですが、尿中バイオマーカーを変動させるかについては検討されていませんでした。 尿中バイオマーカーには現在い…

道家 智仁
3か月前
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KDIGO 2024の血圧120mmHg未満目標に対する懐疑的意見

KDIGO 2024のガイドラインでは収縮期血圧を120mmHg未満にするように推奨されていますが、本当にそうでしょうか? 上記の論文でははっきりと、この目標値は不適切であるこ…

道家 智仁
3か月前

KDIGO2024のサマリー chapter 3

KDIGOのガイドラインがでましたね。とても長いので正直読むのがしんどいです。ということでexecutive summaryを書いてくれている人たちがいます。それでも長いので個人的に…

道家 智仁
3か月前

Selpercatinibによる偽性腎機能障害

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2400216 NEJMにSelpercatinibが尿細管からのCr分泌を阻害することで血清Cr値が上昇する現象を報告しました。 RET融合遺伝子…

道家 智仁
3か月前
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AKIに対するバイオマーカーの変遷

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38519236/ AKIのバイオマーカーに対する開発がすすんでいますね。簡単なまとめがKIに記載されています。 尿中NGALはかなり有名になって…

道家 智仁
3か月前
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白人と黒人のGFR低下の差

CKDのリスクファクターっていろいろありますよね。糖尿病、高血圧、アルブミン尿、心疾患、喫煙は定番です。low income や低学歴などもリスクになるようですね。受診しない…

道家 智仁
3か月前

maladaptive PT

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38091407/ 障害尿細管マーカーの検出がはやりですよね。injured PT, maladaptive PTなどいろいろな呼び名があります。ヒトの腎組織を使…

道家 智仁
3か月前

アミロライドの投与は尿中の補体活性を抑制する

https://journals.lww.com/jasn/fulltext/2024/04000/amiloride_reduces_urokinase_plasminogen_driven.6.aspx 補体は腎臓病と関わりが深いです。尿中の補体がurokinase-t…

道家 智仁
3か月前
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CKDに対する管理は以前と比べてeGFRの低下速度を本当に抑えてきたのか

https://www.ajkd.org/article/S0272-6386(23)00899-5/fulltext こちらの論文はeGFR のSecular trendをみたものです。趣旨としては腎機能の長期的な予後が年代ごとに確実…

道家 智仁
3か月前
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尿細管障害のバイオマーカー

さまざまな尿細管障害のバイオマーカーが指摘されています。α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、IL-18、KIM-1、NGAL、YKL-40、MCP-1、UMOD、FGF23、PTHなどが挙げ…

道家 智仁
3か月前
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慢性腎臓病と静脈血栓症の関係

2024 cJASNでの報告。大規模後ろ向き研究です。Poisson回帰を使った解析です。Immobilityや hereditary predisposition については解析項目に入っていませんが、CKDstgaeの…

道家 智仁
3か月前
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GLP1-RA and kidney

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.055459

GLP-1 receptor agonist である semaglutide と liraglutide が腎機能に与える影響を調べた研究です。2021年のCirculationに投稿されています。

興味深い点ですが、eGFR 30-60 の方、 アルブミン尿>3

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Sotagliflozin

Sotagliflozin and Kidney Outcomes, Kidney Function, and Albuminuria in Type 2 Diabetes and CKD

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38277468/

ソタグリフロジンはSGLT1及びSGLT2を両方阻害する薬剤として期待されています。Original data ではそれほ

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Urinary EGF in ASSESS-AKI Study

はやりの尿中EGFについての研究です。結論を書きますと尿中EGFが高い人はAKI後の長期腎予後が良好ということです。EGFはヘンレのループ上行脚及び遠位尿細管に発現していることが分かってきており、遠位尿細管の障害マーカーとして脚光を浴びています。

sCrの変化でAKIを現在は診断していますが、eGFRと相関しなかったことより尿中EGFはsCrとは独立したAKIのマーカーになりうるとdiscuss

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ARB+ACEI投与が尿中バイオマーカーに及ぼす影響。

ARBとACEIの併用はAKIの発症リスクを上昇させることは有名ですが、尿中バイオマーカーを変動させるかについては検討されていませんでした。

尿中バイオマーカーには現在いろいろな種類がでてきており、KIM-1(proximal tubule), MCP-1(renal inflammation), YKL-40(repair), EGF(distal tubule damage), albumi

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KDIGO 2024の血圧120mmHg未満目標に対する懐疑的意見

KDIGO 2024のガイドラインでは収縮期血圧を120mmHg未満にするように推奨されていますが、本当にそうでしょうか?

上記の論文でははっきりと、この目標値は不適切であることが記述されています。SPRINT試験をもとにして120mmHg未満にするように設定されたようですが、SPRINT自体はいわゆる心疾患系イベントは改善させましたが、renal composite outcomeを改善してい

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KDIGO2024のサマリー chapter 3

KDIGOのガイドラインがでましたね。とても長いので正直読むのがしんどいです。ということでexecutive summaryを書いてくれている人たちがいます。それでも長いので個人的に興味深いところだけ抜粋してみましょう。

SGLT2阻害薬いまやかなり有名になった薬剤ですね。

推奨1:DM患者+CKD+eGFR>20
長期間の絶食、手術、ケトーシスを起こすような状況では中止も検討するが、それ以外

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Selpercatinibによる偽性腎機能障害

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2400216

NEJMにSelpercatinibが尿細管からのCr分泌を阻害することで血清Cr値が上昇する現象を報告しました。

RET融合遺伝子陽性の腫瘍にセルペルカチニブは効果あるようですが、onconephlorogyの新たな注目薬剤となりそうですね。薬剤は腎機能に影響するものもありますので、注意しま

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AKIに対するバイオマーカーの変遷

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38519236/

AKIのバイオマーカーに対する開発がすすんでいますね。簡単なまとめがKIに記載されています。

尿中NGALはかなり有名になっており、保険でも測定できるようになっていますよね。肝腎症候群と尿細管壊死(ATN)の鑑別に使えるようです。テルリプレシン(terlipressin)は肝腎症候群の治療薬としてアメリカなどで

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白人と黒人のGFR低下の差

CKDのリスクファクターっていろいろありますよね。糖尿病、高血圧、アルブミン尿、心疾患、喫煙は定番です。low income や低学歴などもリスクになるようですね。受診しないからでしょうか?

stroke beltと呼ばれる地域がアメリカにはあるようですが、そこに住んでいる人たちはCKDのリスクが高いらしいです。一般的なCKDリスクで調整しても有意にCKD発症と関連していたことから、heat,

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maladaptive PT

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38091407/

障害尿細管マーカーの検出がはやりですよね。injured PT, maladaptive PTなどいろいろな呼び名があります。ヒトの腎組織を使用したRNA-seqとproteomics解析から上昇している蛋白を同定した論文です。

NLGN4X、COL23A1、TGFB2などがRNAでもprotein level

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アミロライドの投与は尿中の補体活性を抑制する

https://journals.lww.com/jasn/fulltext/2024/04000/amiloride_reduces_urokinase_plasminogen_driven.6.aspx

補体は腎臓病と関わりが深いです。尿中の補体がurokinase-type plasminogen activator (uPA)により産生されるplasminによって活性化されるということが

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CKDに対する管理は以前と比べてeGFRの低下速度を本当に抑えてきたのか

https://www.ajkd.org/article/S0272-6386(23)00899-5/fulltext

こちらの論文はeGFR のSecular trendをみたものです。趣旨としては腎機能の長期的な予後が年代ごとに確実に進歩しているのかどうかを観察したものです。

meta-regression analysisによって eGFR declineは確実に低下しているようです。

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尿細管障害のバイオマーカー

尿細管障害のバイオマーカー

さまざまな尿細管障害のバイオマーカーが指摘されています。α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、IL-18、KIM-1、NGAL、YKL-40、MCP-1、UMOD、FGF23、PTHなどが挙げられています。この中でどれが一番いい指標なのかはよく分かっていないようです。NGALとかは保険でも測定できるようになっているようです。以下のpaperはこれらのバイオマーカーに注目した解析です。

参考

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慢性腎臓病と静脈血栓症の関係

慢性腎臓病と静脈血栓症の関係

2024 cJASNでの報告。大規模後ろ向き研究です。Poisson回帰を使った解析です。Immobilityや hereditary predisposition については解析項目に入っていませんが、CKDstgaeの進行またはアルブミン尿は静脈血栓症のリスクとなるようです。eGFR60未満の患者は10下がるごとに6%のリスク上昇になるようです。どうして腎機能が悪いと静脈血栓症が起きやすいかは

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