道家 智仁

腎臓内科医です。腎臓病について最新の研究内容を基礎から臨床まで幅広く知識をupdate…

道家 智仁

腎臓内科医です。腎臓病について最新の研究内容を基礎から臨床まで幅広く知識をupdateしていきたいと考えています。

最近の記事

GLP1-RA and kidney

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.055459 GLP-1 receptor agonist である semaglutide と liraglutide が腎機能に与える影響を調べた研究です。2021年のCirculationに投稿されています。 興味深い点ですが、eGFR 30-60 の方、 アルブミン尿>300mg/gCrの方において特にeGFR の低下速度がより緩やかであったことです

    • Sotagliflozin

      Sotagliflozin and Kidney Outcomes, Kidney Function, and Albuminuria in Type 2 Diabetes and CKD https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38277468/ ソタグリフロジンはSGLT1及びSGLT2を両方阻害する薬剤として期待されています。Original data ではそれほど差がでなかったようですが、lab dataのみを使用したpost hoc解析で

      • Urinary EGF in ASSESS-AKI Study

        はやりの尿中EGFについての研究です。結論を書きますと尿中EGFが高い人はAKI後の長期腎予後が良好ということです。EGFはヘンレのループ上行脚及び遠位尿細管に発現していることが分かってきており、遠位尿細管の障害マーカーとして脚光を浴びています。 sCrの変化でAKIを現在は診断していますが、eGFRと相関しなかったことより尿中EGFはsCrとは独立したAKIのマーカーになりうるとdiscussionしています。ただ、Tableを見るかぎり限りなくeGFRと同じように動いて

        • ARB+ACEI投与が尿中バイオマーカーに及ぼす影響。

          ARBとACEIの併用はAKIの発症リスクを上昇させることは有名ですが、尿中バイオマーカーを変動させるかについては検討されていませんでした。 尿中バイオマーカーには現在いろいろな種類がでてきており、KIM-1(proximal tubule), MCP-1(renal inflammation), YKL-40(repair), EGF(distal tubule damage), albuminuria (glomerular injury)が知られています。Albumi

        GLP1-RA and kidney

          KDIGO 2024の血圧120mmHg未満目標に対する懐疑的意見

          KDIGO 2024のガイドラインでは収縮期血圧を120mmHg未満にするように推奨されていますが、本当にそうでしょうか? 上記の論文でははっきりと、この目標値は不適切であることが記述されています。SPRINT試験をもとにして120mmHg未満にするように設定されたようですが、SPRINT自体はいわゆる心疾患系イベントは改善させましたが、renal composite outcomeを改善していないようです。逆に120mmHg未満を目標にした群はAKIの発症が有意に高かった

          KDIGO 2024の血圧120mmHg未満目標に対する懐疑的意見

          KDIGO2024のサマリー chapter 3

          KDIGOのガイドラインがでましたね。とても長いので正直読むのがしんどいです。ということでexecutive summaryを書いてくれている人たちがいます。それでも長いので個人的に興味深いところだけ抜粋してみましょう。 SGLT2阻害薬いまやかなり有名になった薬剤ですね。 推奨1:DM患者+CKD+eGFR>20 長期間の絶食、手術、ケトーシスを起こすような状況では中止も検討するが、それ以外ではいったん始めたらeGFR<20でも使用し続けてよい 推奨2:eGFR>20

          KDIGO2024のサマリー chapter 3

          Selpercatinibによる偽性腎機能障害

          https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2400216 NEJMにSelpercatinibが尿細管からのCr分泌を阻害することで血清Cr値が上昇する現象を報告しました。 RET融合遺伝子陽性の腫瘍にセルペルカチニブは効果あるようですが、onconephlorogyの新たな注目薬剤となりそうですね。薬剤は腎機能に影響するものもありますので、注意しましょう。 面白いのは機序まで言及していることです。尿細管の血液側(basola

          Selpercatinibによる偽性腎機能障害

          AKIに対するバイオマーカーの変遷

          https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38519236/ AKIのバイオマーカーに対する開発がすすんでいますね。簡単なまとめがKIに記載されています。 尿中NGALはかなり有名になっており、保険でも測定できるようになっていますよね。肝腎症候群と尿細管壊死(ATN)の鑑別に使えるようです。テルリプレシン(terlipressin)は肝腎症候群の治療薬としてアメリカなどでは認可されているようです。腎予後改善の薬剤は少なく、日本でもぜひとも使用してみた

          AKIに対するバイオマーカーの変遷

          白人と黒人のGFR低下の差

          CKDのリスクファクターっていろいろありますよね。糖尿病、高血圧、アルブミン尿、心疾患、喫煙は定番です。low income や低学歴などもリスクになるようですね。受診しないからでしょうか? stroke beltと呼ばれる地域がアメリカにはあるようですが、そこに住んでいる人たちはCKDのリスクが高いらしいです。一般的なCKDリスクで調整しても有意にCKD発症と関連していたことから、heat, water quality, pollutionなどが原因なのではないかと推測さ

          白人と黒人のGFR低下の差

          maladaptive PT

          https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38091407/ 障害尿細管マーカーの検出がはやりですよね。injured PT, maladaptive PTなどいろいろな呼び名があります。ヒトの腎組織を使用したRNA-seqとproteomics解析から上昇している蛋白を同定した論文です。 NLGN4X、COL23A1、TGFB2などがRNAでもprotein levelでも有意にAKI後に上昇するそうです。一方で、ENPP6, PLG, PROCは

          アミロライドの投与は尿中の補体活性を抑制する

          https://journals.lww.com/jasn/fulltext/2024/04000/amiloride_reduces_urokinase_plasminogen_driven.6.aspx 補体は腎臓病と関わりが深いです。尿中の補体がurokinase-type plasminogen activator (uPA)により産生されるplasminによって活性化されるということがJASNで報告されました。 C3a, C5aが活性化の指標で用いられていますが

          アミロライドの投与は尿中の補体活性を抑制する

          CKDに対する管理は以前と比べてeGFRの低下速度を本当に抑えてきたのか

          https://www.ajkd.org/article/S0272-6386(23)00899-5/fulltext こちらの論文はeGFR のSecular trendをみたものです。趣旨としては腎機能の長期的な予後が年代ごとに確実に進歩しているのかどうかを観察したものです。 meta-regression analysisによって eGFR declineは確実に低下しているようです。つまりガイドラインなどで提示されているCKDの治療方針は患者の腎予後を改善させて

          CKDに対する管理は以前と比べてeGFRの低下速度を本当に抑えてきたのか

          尿細管障害のバイオマーカー

          さまざまな尿細管障害のバイオマーカーが指摘されています。α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、IL-18、KIM-1、NGAL、YKL-40、MCP-1、UMOD、FGF23、PTHなどが挙げられています。この中でどれが一番いい指標なのかはよく分かっていないようです。NGALとかは保険でも測定できるようになっているようです。以下のpaperはこれらのバイオマーカーに注目した解析です。 参考文献 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/arti

          尿細管障害のバイオマーカー

          慢性腎臓病と静脈血栓症の関係

          2024 cJASNでの報告。大規模後ろ向き研究です。Poisson回帰を使った解析です。Immobilityや hereditary predisposition については解析項目に入っていませんが、CKDstgaeの進行またはアルブミン尿は静脈血栓症のリスクとなるようです。eGFR60未満の患者は10下がるごとに6%のリスク上昇になるようです。どうして腎機能が悪いと静脈血栓症が起きやすいかは不明ですが、尿中への凝固因子の喪失などが以前より指摘されていたり、gut mic

          慢性腎臓病と静脈血栓症の関係