KDIGO 2024の血圧120mmHg未満目標に対する懐疑的意見

KDIGO 2024のガイドラインでは収縮期血圧を120mmHg未満にするように推奨されていますが、本当にそうでしょうか?

上記の論文でははっきりと、この目標値は不適切であることが記述されています。SPRINT試験をもとにして120mmHg未満にするように設定されたようですが、SPRINT自体はいわゆる心疾患系イベントは改善させましたが、renal composite outcomeを改善していないようです。逆に120mmHg未満を目標にした群はAKIの発症が有意に高かったようです。

120mmHg未満をターゲットにした大規模試験としてはACCORD試験があるようですが、こちらはSPRINT試験と異なり、CVイベント発症率には有意な差はなく、両試験のheterogeneityが指摘されています。

SPRINT試験は糖尿病患者、eGFR<20の患者を除外していることから、generalizationがあるとは言えないとさらに指摘されています。

血圧がどのような状況で測定されたかについても言及しています。外来患者は白衣高血圧といって家庭で測定するよりも血圧が高くなることが知られています。病院で測定した血圧を頼りに治療すると、血圧を下げ過ぎることになる可能性が指摘されています。

血圧の下げ過ぎはAKI以外にも転倒のリスク、頸動脈狭窄のある方においては脳虚血の発症リスクを上げることになることを指摘さています。特に転倒は、痛みだけではなく、抑うつ、自信の喪失につながり、転倒は死亡率の上昇が上がることも知られていることを強調しています。

拡張期血圧に対するコメントも面白いと思いました。拡張期血圧が不十分であるとcoronary arteryへの血流不足になりCVイベントの発症リスクが上がることが指摘されています。拡張期血圧<70mmHgは、CVイベントの発症率が有意に高まるようで、特にCKD患者では注意する必要があるのではとsuggestされています。

血圧はいったいどの程度を目安にするのがいいのでしょうか?患者様1人1人の背景を踏まえた個別医療が必要ですね!

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