テックキャンプが就労移行支援をやる理由(障がい当事者が新規事業を立ち上げます)
はじめに
ご覧いただきありがとうございます。テックキャンプ就労移行スクールの片渕と申します。さらっと自己開示すると、タイトルにあるように発達障がい(ADHD)の当事者でもあります。
現在、テックキャンプ内の新規事業責任者として、発達障がいの方に特化した就労移行支援施設の立ち上げをおこなっています。
現状を正直にお伝えします。オープンの必須要件となるサービス管理責任者(通称サビ管)の採用がめちゃくちゃ難航しています。なので、記事の目的は「未来の仲間の募集」です。
ただ、一部の有資格者の方に向けた記事にはしたくありません。事業への思いの背景にある「原体験」と「当事者だからこその事業ビジョン」を伝えたいと思っています。
記事を読んだ同じ発達障がい当事者の方が「自分もなにかに挑戦したい」という思いを持つことに繋がれば、とっても嬉しいです。
個人的な体験の開示には勇気がいりましたが、決意して筆を取りました。よかったら読んでください!
当事者の原体験:家族との別れ
父のアルコール依存と離婚
いきなり重くなってすいません。私が育った家庭に発達障がいがどんな影響を及ぼしたかをお話したいと思います。
私は佐賀県の田舎で三世帯の7人家族で育ちました。小学校の高学年になるまでは平和な家庭で伸び伸び暮らしていたと思います。
しかし、穏やかな日々は長くは続きませんでした。
起業に失敗した父がアルコール依存症になってしまったのです。
小学校6年生くらいになった頃でしょうか。父は突然「起業する」と家族に宣言して勤め先を退職し、内装業で起業したのですが、数週間もすると廃業に近い状態になり、ずっと家にいるようになりました。
気づくと昼間からお酒を飲むようになり、数ヶ月もすると、父は立派なアルコール依存症になっていました。家では両親の言い合いが増え、父が暴れて家の壁に穴が空いていたのを覚えています。
母は経済的に自立していたこともあり、離婚に至るまで時間はかかりませんでした。私が中学生になったのをきっかけに離婚し、父方とは別の場所で暮らすようになりました。
父から伝えられたこと
離婚によって生活は一時的に穏やかさを取り戻しましたが、その日々は突然終わりを告げました。
ある日、声が聞こえたので部屋を出て行くと、父が玄関に立っているのです。父の姿を見て「なにか危害を加えられるかもしれない。いざとなったら自分が家族を守らないと」と思ったのを覚えています。
ただ、父もすごく消耗しているように見えました。見るからに生気がないのです。やつれきったような顔で、彼はこう口にしました。
「じいちゃんが自殺した」
聞いた時は目の前が真っ暗になり、視界がグラグラと揺れました。気づくと父に向かって「お前のせいだ!」と叫んでいました。
当時の私の怒りと動揺は相当なものでした。20年以上経った今現在も、よく祖父のことを考えます。おじいちゃんにとって初孫だった私が、彼にとって誰よりも大事だったように、彼は私の最愛の家族だったからです。
毎年5月になると鯉のぼりを上げてくれて、手づくりの竹とんぼをつくってくれる器用なおじいちゃん、お酒を飲むと暴れることもあるけど、普段は誰より優しく接してくれました。
その大好きなおじいちゃんは自ら命を断つという形で突然いなくなり、そのことがきっかけで精神的に落ち込み、中学校も不登校に近い状態になってしまいました。
否定が理解に変わる時:発達障がいの診断を受ける
私はそれから長い間、父を否定する気持ちで生きてきました。
「父は心が弱い怠け者だった。もし働き続けていれば、おじいちゃんは今も生きていたはず」と考えていました。「自分は絶対に父のようになりたくない」という嫌悪に近い気持ちもあったと思います。
それが変わったのは社会人になってからしばらくして、自分が父と同じような状況に追い詰められた事がきっかけでした。当時の私は父と同じように、仕事(新規事業立ち上げの激務でした)に適応できず「仕事をやめたい」と思っており、辛さから逃げるためにお酒を飲むような状況になってしまったのです。
自分が同様の状況にいる以上、父を責めることはできませんでした。そしてその気持はすぐに、同じ状況にある自分への自己否定に繋がっていきました。
「自分も父親といっしょだ。生きていても、人に迷惑をかけるだけだ」そう思うと、落ち込みは酷くなりました。
うつ傾向が続き、病院に駆け込んだ時のことです。
医師に仕事の状況について話したところ、発達障がい(ADHD)の検査を勧められ、受けてみるとすぐに診断がおりました。
正直なところ、大学時代から特性の自覚はあったため、驚きはありませんでした。自覚はありながら「障害者」として自分をカテゴライズすることに抵抗があり、診断を避けていたのです。
そして、医師は続けて私に以下のように伝えました。
「発達障がいは遺伝する場合もある」
「アルコール等の依存症の原因になりやすい」
それを聞いた私は、こう思ったのです。
「父も発達障がいだったのかもしれない」
父と祖父の両方ともアルコール依存傾向があったこと。ギャンブルや起業などの衝動的な行動が多かったこと。考えるほどに「発達障がいの遺伝」という仮説は自分の中で説得力を増していきました。
その考えを得たからといって、すぐに父を許すことはできませんでしたが、他者の行動にある背景を理解しようとする視点が生まれたのはこの時でした。
人を支援する中で許しが生まれた
今現在、父を責める気持ちはありません。「父親も大変だったはず」と、どちらかというと共感する気持ちが生まれています。
自分自身が同じ生きづらさを抱えてきたことに加えて、ADHDコーチングの資格をとり、対人支援をするようになって、父を責める気持ちは自然と薄らいでいきました。
支援経験を積めば積むほど、課題行動の原因を「心の弱さ」と単純化するのは間違っていると考えるようになったからです。
今は父のアルコール依存は心の弱さといった感情論ではなく、発達特性と環境の関連性の中に生まれていたと捉えています。
そして自分が支援者として活動する中で、こう思うようになりました。
「当時、父の相談に乗れる発達障がいの支援者がいたら、祖父は今も生きていたかもしれない」
今も日本中に同じように、発達特性が原因で困難に直面している方が方がいらっしゃいます。当事者でもある自分が事業として立ち上げることで、その状況を変えられるんじゃないか、そう思ったのが、新規事業を社内提案したきっかけです。
長くなりましたが、事業立ち上げの背景にある原体験をお伝えさせていただきました。決して利益目的だけではない、思いの部分が伝わっていれば嬉しいです。
こんな学校をつくりたい
ここからは私達がどんなスクールをつくっていきたいかをお伝えさせてください。以下はスクールの提供価値として設定している3つのバリューになります。
1. 発達障がい支援の専門家がいる
ひとつめは、原体験の項目でお伝えしたように、当事者の相談に乗れる専門家がいるということです。
経験上、当事者として一番困るのは発達障がい支援の専門家が周りにいないということでした。現状、一説では10人に1人とも言われる発達障がい者(グレーゾーンも含む)の人口に対して、明らかに専門家の数が少ないのが現状です。
私は米国のADD COACH ACADEMY(ADDCA)で認定資格を取得し、ADHDをメインとした発達障がいの方を対象に「発達特性と共に生きる技術を身につける」事を目的としてコーチングを通じた対人支援をおこなってきました。
まだ支援を始めて2年ほどですが、有り難いことにクライアントさんからは沢山の感謝の言葉をいただいています。
以下はクライアントさんからいただいた声の一部です。
(掲載許可をくれた皆さん、本当にありがとうございます)
上記にあるように、専門的技能を身につけたコーチの対人支援をきっかけに、発達特性の生きづらさが解消することは十分に可能です。これまで数十名の方々に支援を実施してきましたが、これは確信を持って言う事ができます。
現在、ADD COACH ACADEMYとも連携を進めており、高い技術水準の発達障がい支援コーチを社内で育成することで、上記のような変化を我々のスクールでも起こしていけると信じています。
2.正社員になれるITスキルが身につく
ふたつ目の提供価値は雇用の安定に繋がるITスキルが身につくことです。
私は経済的安定や未来への見通しは精神的な安定の基盤だと考えています。
現在、就労移行支援施設の多くでは、軽作業や事務作業などの訓練がメインに提供されており、利用しても正社員としての就職に繋がるような高度スキルが身につく施設は一部だと言われています。
あるデータでは、就労移行支援を利用して就職してもても5割がアルバイトへの就労だそうです。そして発達障がい全体から見ると、就職率は3割程度、正社員として働いている方は1割にも満たないという試算もあります。
これで発達障がい者の方たちが、経済的・精神的に安定して、安心して人生を送ることは可能でしょうか。私は難しいと考えています。
テックキャンプの売りは未経験からエンジニアになれるスキルが身につく教育力です。これまで未経験から4,600名以上のエンジニア(もちろん正社員)を生んできた実績があります。
テックキャンプをやりきった時に身についているスキルは、アルバイトではなく正社員としても通用するものです。
そしてADHDやASDなどの発達障がいの方の特性は、エンジニアを代表とするデジタル分野の職種に適していると言われています(参照)
これまでテックキャンプが培ってきたITスキルの教育力によって、発達障がい当事者の方の経済的な安定を実現していく事も我々の事業のビジョンの重要な一部です。
3.多様性を前提に設計したスクール
最後です。日本の教育ってよく画一的と言われますよね。
私がこれまで通ってきた学校でも、同じ教科書と机や椅子、周囲と同じ内容で学習を進めてきました。日本の公教育は定型発達に合わせて設計されているのです。
その状況の中で、発達特性を持っている私は明らかに学校にフィットしていませんでした。興味がない授業は常に寝ていたので、テストを受けて0点を取ったこともあり、黙って椅子に座っているのは苦痛でしかありませんでした。最終的に、家庭環境や友人との軋轢もあって、中学校の途中から殆ど学校に行かなくなってしまいました。
教育が今の形でなくてはならない理由はないはずです。
テックキャンプ就労移行スクールでは、定型発達に合わせるのではなく、多様性をあるものとして設計したサービスを提供します。すぐに全面対応するのは難しい部分もありますが、段階的にアコモデーション(多様な特性への配慮)を充実させていきたいと考えています。
またテックキャンプのスタイルの背景として、テックキャンプ創業者の真子がADHD当事者でもあることも関係しています。
当事者がつくったスクールだからこそ「オンラインで自分のペースで学習できる」「図解や動画の多さ」「講師に好きなタイミングで質問できる」「専任のライフコーチが目標達成のサポートをする」など、自然と特性に配慮した内容になっています。
実際にエンジニアとしての転職を成功された発達特性をお持ちの受講生様も多数いらっしゃいます。テックキャンプは定型発達の方はもちろん、発達特性がある方にも真価を発揮すると考えています。
我々がつくりたいのは「障害者施設」ではなく「発達特性がある方にとっての理想の学校」です。まだまだ思い描く理想には遠いですが、一歩一歩、カリキュラムや教室づくりを進めているところです。
さいごに
皆さんへの感謝とお願い
沢山書きました。
ここまでお読みいただいて本当にありがとうございました。
以下、まとめです。
特性についていつでも専門家に相談でき、発達特性を活かして学ぶことで、雇用の安定に繋がるITスキルが身につく。
こんなスクールが日本中にあったら、発達障がい者を取り巻く状況が変わると思いませんか?
有資格者の採用が難航しているため、オープン時期を明確に伝えることができないのが悔しいですが、私はビジョンを実現するまで絶対諦めません。
仲間もきっと見つかると信じています。
思いに共感いただける方へ
ぜひ、この採用課題の解決に記事の拡散を通じてご協力ください!
下記をリツイートいただけると、とても嬉しいです!記事の公開から数週間経ってる?大丈夫です!思いの拡散が無駄になることはありません。
ぜひリツイート・シェアお願い致します。(noteやTwitterのアカウントもフォローいただけるととても嬉しいです!)
サービス管理責任者の有資格者・取得予定の方へ
この記事を読んでワクワクしたサービス管理責任者の方、ぜひチームに加わって、いっしょに働きませんか?
以下の要件でサービス管理責任者としてはたらいてくれる仲間を募集しています!福岡ですが、引越し手当も一部負担します!(額は要相談)
ご興味ある方は下記フォームからお気軽にご応募ください(カジュアル面談も可能です)!
■テックキャンプ就労移行スクール 応募フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSca34PQws_DHbejBwBWao3qfWmJYQrvth0YqRU187FB7l-xAg/viewform
おまけ
最後に新規事業をスタートする際の後押しになった、キング牧師の名言を載せて終わりにします。
これからも信念を胸に、ビジョン実現に向かってやりきります。
私にとっては発達障がいであっても、なにか価値ある事をやりきれることを証明するための挑戦でもあります。どうか応援よろしくお願いします!
再掲:リツイート・記事のシェアお願い致します!未来の仲間に届きますように!
株式会社div
テックキャンプ就労移行スクール
片渕一暢