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掌編2024

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2024年の創作物です
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#ショートストーリー

雨の宮

「ザーザーと音を立てて雨が降るのならいいが、音も立てず、体がびっしょりと濡れてしまう霧雨…

たつきち
12時間前
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【ラムネの音】#シロクマ文芸部

「ラムネの音?」と言われても、ちっともピンとくることはなかった。 僕はただ「うん」と頷い…

たつきち
1日前
13

ヒトノミライ

「これは何ですか?」 無骨な機械は、真ん中に何かを入れて護るかのような形をしていた。 「よ…

たつきち
2日前
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【72ミッションインポッシブル】#100のシリーズ

外は土砂降りの雨。 僕たちはもう30分近く車の中で待機している。 エンジンをかけることができ…

たつきち
3日前
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月曜日(2週目)

桂木は再び「月曜日」を訪れたのは翌週の金曜日だった。 「こんにちは」と言って扉を開けると…

たつきち
6日前
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【月曜日】#シロクマ文芸部

「月曜日」と書かれた古い扉。 そこにこんな店があっただろうか? 桂木は扉の前で逡巡した。 …

たつきち
7日前
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【71気持ち】#100のシリーズ

「今から『気持ち』を預からせていただきます」 自分たちの前にそれぞれひとりずつ、宇宙服にも似た服を着た係員が立つ。 アナウンスが「利き手を前に」というのに合わせて係員はボックスを差し出す。 自分たちはそのボックスの中央にある穴に利き手を入れる。 「それだけ?」 「うん。それだけ」 頷きながらクヌギハラはメロンクリームソーダのアイスを突く。 透明な緑色のメロンソーダの中の氷がキラキラ揺れる。 「それで気持ちがなくなっちゃうの?」 オオツガワが前のめりになる。 「なくなるという

【本屋】-スキャンダル#青ブラ文学部

昔ながらの書店で、雑誌がメインの品揃え。それほど広い店構えではない。 「角にないのにカド…

たつきち
9日前
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【70スキャンダル】#100のシリーズ

「僕たちの交際をスキャンダルと書いた媒体全てを名誉毀損で訴えます」 スキャンダルの意味を…

たつきち
13日前
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粥を炊く

「炊飯器が壊れました」 ラジオからの声に、思わず「あら一緒」と声が出た。 「いつもご飯食…

たつきち
2週間前
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鳥が鳴き始めたら朝だと昔誰かが言った。 「なるほど夏の朝は早いな」 時計は4時少し前。 ここ…

たつきち
2週間前
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隣人006

Kさんと飲みに出た。 初めてのことだった。 Kさんが隣に越してきてから2年近く経つ。 でもKさ…

たつきち
2週間前
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【69母の日】#100のシリーズ

子どもの頃、母の日も父の日も嫌いだった。 どちらのことも知らないから。 夏の日に運動公園に…

たつきち
2週間前
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【雨を聴く】#シロクマ文芸部

「雨を聴くんですか?」 「そう。何を話しているのか?少しだけ気持ちを雨に向けるんだ」 他の人間がこんなことを口にしたら「はぁ?」と怪訝そうな顔をしてやるが、目の前の詩人にはそんなことはできない。 詩人であり、作詞家でもある藤生彌生のインタビュー。彌生という名から女性と間違われるが藤生は男性。なかなかメディアに出ないのが勿体無いルックスの良さも兼ね備えている。 藤生の詩が国際的な賞を取った。 所謂「ボカロP」として、ネットでその歌が話題になった。 独特な言葉選びは一度その歌を聞