麗しき “おじさん” メイクの世界
column vol.980
メジャーリーガー・エンゼルスの大谷翔平選手が本日は二刀流で登場!
投手としては2勝目を上げ、打者としては4打数1安打だったものの、貴重な先制点を呼び込むつなぎの1打となりました。
WBCに続き、メジャーリーグでも大活躍を見せることにより、野球少年・少女に夢を与えていらっしゃいますが、夢を与えられているのは子どもたちだけではありません。
成人男性、それも我らが “おじさんたち” にも影響を及ぼそうとしています。
えっ??野球で???
そう思った方、…すみませんが…違います…
野球ではなく「美容」です。
ご存知の方も多いかと思いますが、大谷選手がモデルとして起用されたコーセーの『コスメデコルテ』の美容液「リポソーム アドバンスト リペアセラム」が男性の間で売れに売れているのです。
〈現代ビジネス / 2023年4月10日〉
高まる中高年男性のスキンケア意識
『コスメデコルテ』といえば、大人の女性に向けた高価格帯の上質なブランドですが、今回、大谷選手を起用したことで、男性購入者が通常時の7.5倍になったそうです(キャンペーン 8日目までの実績)。
公式オンラインブティックではWBC決勝戦放映後、売上が約2倍に急上昇。
また、リアル店舗では、平日でも行列ができ、整理券対応が発生する店舗が出ているそうですよ…(驚)
もちろん、若い方中心のムーブメントではありますが、現代ビジネスの記事の筆者・田幸和歌子さんはおじさんへの意識も変えていく大きなきっかけとなると予想されています。
それを証明するように、今回の広告だけではなく、大谷選手がSNSに投稿したロッカールームの写真が話題に。
大谷選手が愛用しているスキンケアがロッカールームの中に並んでいることに中高年男性が反応しているのです。
田幸さんは、「大谷翔平もケアしている」という言い訳がたつことで、コスメに手を出しやすくなったおじさんが増えるのではないかと考えていらっしゃいます。
実際、メイクまでは及んではいないものの、中高年男性のスキンケア需要は高まっていると感じており、そのための商品も続々誕生しています。
例えば、ニベア花王が展開する「ニベアメン アクティブエイジ 集中ケアクリーム」は売上が好調です。
〈NIKKEI STYLE / 2023年2月18日〉
シミやしわの対策に効果があるとされる「ナイアシンアミド」を配合しており、目元やほうれい線など顔の気になる部分に塗ってもらうことを想定。
1本でシミとしわの両方の改善を見込む化粧品は珍しいということで、肌の衰えを感じ始めることが多い40代男性を中心に支持を得ています。
(2022年10月に発売して以降、シリーズ全体の10〜12月の売り上げは21年同期の約1.6倍)
そして、最近では中高年男性の美容マンガも登場しているのです。
熱視線が集まる「中高年男性マンガ」
先程ご紹介させていただきました田幸和歌子さんが現代ビジネスの別の記事【「男が美容なんて…」はじめてドラッグストアの「コスメ棚」を目にして、50歳男は思わず途方に暮れた】で2作をレコメンドされています。
〈現代ビジネス / 2023年4月10日〉
1作目は、美容メディア『VoCE』で現在シーズン2をwebで無料公開中の『僕はメイクしてみることにした』。
通称『僕メイク』です。
こちらは、38歳の独身男性・前田一朗が、ある日、自分のあまりに疲れた顔に驚愕し、化粧水デビューするところからメンズ美容に目覚めていく物語。
作者の糸井のぞさんがコミック化した同作は、発売即重版の話題作となりました。
これは、別に美容意識が高いわけでもない普通の38歳男性が仲間の男性とセルフケア道を極めていくという等身大の姿がウケているようです。
そしてもう一つが、『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアをはじめました』。
こちらはアラフィフの会社員、伊藤聡さんが手がけた作品ということでも話題になっています。
伊藤さんはもともと美容には無縁な人だったのですが、コロナ禍によるテレワークで外出が減り、体重が増え、身なりに気を遣う習慣もなくなり、久しぶりに乗った通勤電車の窓に映った自分の姿に「死んだ父がいる」と驚いたそうです。
そうして、さまざま若返りの努力を行った末に辿りついたのが美容だったそうです。
そんな伊藤さんの実際の体験がもとになって生まれたのが同作品で、『僕メイク』同様、等身大で美容に向き合う姿が多くの人の共感につながっています。
中高年男性を取り込むための着目点
伊藤さんは、中高年男性の美容に対してこんな考えを持っていらっしゃいます。
小さくても良いから、確かな実感が欲しい。
これは同世代男性として共感いたします。
また、中高年男性のコスメ事情について、『VOCE』 編集部メンズ美容担当・渕祐貴さんはこう語っていらっしゃいます。
ここでは「合理性」や「間違いのなさ」が求められていることが感じられますね。
いずれにせよ、成熟市場(ニーズの多様化)や少子高齢化(人口減少)など、著しく変容するマーケットの中で、コア客を大切にしながらも裾野を広がる努力は、コスメのみならず、どの業界でも言えるはずです。
そうした時代性において、メンズ美容の事例はヒントになると思うのです。
特に中高年男性の共通するニーズが見えてきますよね?
若者がメンズコスメに目覚めたと言われる中で、結局のところ、そのシェアは女性に比べて圧倒的に少ない。
ちなみに、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(NITE)が2019年に行った調査によると、化粧品市場全体の市場規模においてメンズコスメが占める割合は、全体のわずか約6%。
そういった中でも大谷選手を起用するなどして、新しい需要を喚起している。
そんなことを念頭に置きながら、マーケターとして新しい市場が生み出すための算段をつけていければと思っています。
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