「時短」のちょっとした落とし穴
column vol.68
ここ数年「時短テーマ」を多く見かけます。料理の世界もそうですね。時短レシピの盛り上がりに寄与してきた「第7回 料理レシピ本大賞 in Japan」が今月に開催されました。
〈現代ビジネス / 2020年9月21日〉
私も「時短」はありがたいし、好きなのですが、仕事を通して意外とちょっと恐いテーマだなとも思います。
時短はしたいけど…しづらいワケ
商業施設の仕事で、子育て世代の女性を調査したところ、やはり「時短」は人気。ニーズは高いのですが、一方で時短を公にしたくないという意見も多く聞かれました。
理由は、現代ビジネスの記事にもありますが、「時短=手抜き」というイメージがあるからとのこと。例えば、家族のためにつくる料理を「時短レシピを取り入れました」となると、後ろめたい気持ちになるようです。
つまり、「時短」は罪悪感を伴う傾向にあることが分かります。でも、私は罪悪感を感じる人ほど、決してサボりたいわけではないのだと思いますし、そうだと信じています。
私の知り合いの女性に専業主婦の女性がいるのですが、コロナ前はお昼まで家事をして、お昼ご飯を食べたら1時間のサスペンスドラマを観てリフレッシュ。気分一新してから、午後の家事に取りかかっていたそうなのですが、旦那さんがリモートになってからはドラマが見づらいそうです。
本人からすれば、1時間のリフレッシュは時短のタネです。その方が、家事を集中してできるので、これも立派な時短法だと思います。
しかし、彼女は遊んでいると思われたくないから、躊躇してしまうそうです。もちろん、旦那さんは「観て欲しくない」とか、「遊んでいる」とか言ってはいませんし、恐らく思ってもいないと予想しています(私は旦那さんもよく知っているので)。
「時短」の先にある時間を想像する
彼女とすれば、サスペンスドラマ自体が家族のためになるわけではないと思っている以上、割り切って観ることができなかったそうです。
そこで、彼女は家族のためになることで、なおかつ自分が好きなことを代わりにその時間にあてたそうです。それが「ペン習字」。娘が高3と中2なので、子育てから解放され始めたことをきっかけに去年からトライ。いつか字を書くことを仕事にしたいと夢見ています。
ペン習字が上達すれば、夢の実現に近づき、仕事になれば、稼いだお金を大切な家族に使うこともできます。そう思ったら、罪悪感が無くなり、ペン習字で1時間のリフレッシュ時間を充実させることができるようになりました。
このことからも「時短バンザイ」という荒っぽい訴求ではいけないなと感じることができ、あくまでも「大切な時間をつくるための」時短という思いを添えるようにしています。
仕事でも「時短」の先を伝える
これは仕事においても同じで、例えば、働き方改革で超過労働時間改善する時も気をつけないといけません。むやみに、業務効率やプライベートの充実を社員に訴えかけると火傷します…(汗)
当社はマーケティングやクリエイティブを行う会社なのですが、特にクリエイターからは「良いものをつくるために時間をかけたい」と反発をされます。皆、全身全霊かけて仕事をしていますし、そこから得られる成果や評価を生きがいに感じている社員も多くいます。
だから、その気持ちを尊重しながら、良いものをつくるためのインプットの時間&サスペンスの彼女のようなリフレッシュの時間、新しい技術を学ぶ時間、賞に挑戦するなど自分の可能性を広げるための時間など、あくまでも会社だけでは得られないクリエイターとしての成長につながる時間をつくるための取り組みであると伝えています。
去年から取り組んで、ようやく実を結んできたと実感しています。
とはいえ、ジョブカン(電子版のタイムカード)だけでは分からないサービス残業が無いか、社員との対話から見定めていくことも継続して行わないといけませんが。
いずれにせよ、「時短」へのニーズの高さと、その裏にある落とし穴に気をつけながら、引き続き業務も経営も行なっていきたいと思っています。
あっ、ちなみにですが、サスペンスの彼女は旦那さんの業務終了後の時間で大好きなドラマを見続けているそうです。一応、ご報告までに(笑)。
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