2030年の「ショッピング」
column vol.293
緊急事態宣言延長となり、さまざまな対応に追われ、若干仕事が場当たり的になってしまっています…(汗)。
今朝、テレビを見ていたら、「感染抑制シミュレーション」を行なっており、6月の解除後、再び感染が拡大し、7月に4度目の緊急事態宣言を実行。
下半期からワクチン接種が感染者数を上回って、徐々に収束に向かうという内容でした。
予測とはいえ、この後の流れを把握できると、当然自分の今後の対応は行いやすくなります。
毎日がどうしても短期的視点で仕事をしがちになっている自省の念を込めて、今日は思い切って10年後の世界を見たいと思います。
仮想・拡張現実が実現する「没入型の買い物体験」
東洋経済オンラインの【イーロン・マスクの盟友が見通す2030年の世界
衝撃的な10年後の未来図とそれに備えた対処法】を読むと、近未来の全容が見えてきます。
〈東洋経済オンライン / 2021年5月3日〉
私は主に小売業のマーケティング活動を行なっているので、「買い物」の変化がどのように変わっていくか気になります。
「テクノロジーのコンバージェンシー(融合)」がキーワードになるのですが、小売業もAIとVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のテクノロジーが合わされば、店舗でのショッピングはもちろんネットショッピングさえ、没入型の買い物体験に取って代わると言及されています。
つまりは、実店舗の良さをオンライン上でより体現できるというわけです。これにより、実店舗の経費が削減され、企業はローコストで運営ができ、消費者も安く商品を買うことができます。
それだけではなく、オンライン上でフレキシブルな対応ができ、嗜好に応じたカスタマイズ商品が手に入りやすくもなります。
今後は、ブランド価値を体験できるアンテナ店舗だけをリアルで出店し、あとはバーチャル店舗でビジネスを拡大していくという展開になりそうですね。
「買い物している」という感覚さえ消える
今、『買い物ゼロ秒時代の未来地図』という本に注目が集まっています。
〈NIKKEI STYLE / 2021年3月21日〉
コロナは未来の変化を急速に早めた(前倒しした)と言われていますが、著者の望月智之さんは2030年の世界が25年には実現すると指摘し、その変化を
「買い物している」という感覚さえ消える
と表現しています。
アマゾンの1クリック、サブスクリプション、そして、アマゾンゴーなどに代表される無人レジ。
会計が簡略化されることで、買い物しているという実感が薄らいでいます。
最近では、重量センサーなどのIoTデバイスから取得した日用消費財の消費量データを基に購入時期を予測し、自動再注文を実現する一般消費者向けのサービスも開発されており、テクノロジーの進化が買い物ゼロ秒時代を進めていると感じます。
より小さく売る「スモールマス戦略」
自動再注文などの精度が高まれば、消費者側からすると購入したブランドに囲い込みされやすい状況になります。
特にコモディティ化(同質化)している商品は、他のブランドに切り替える必要がないからです。
そうなると、力の強い企業がその分野を制圧してくことになるので、ナンバーワンになれない企業は「スモールマス戦略」に切り替える必要があります。
スモールマス戦略とは、多様化、細分化する市場を、生活者の興味関心やライフスタイル、ニーズを理解した上でセグメントを分け、既存のマスより小さいながらも一定のボリュームを持つ消費者のグループに、それぞれに合った商品を提供するというものです。
1000億円規模のマス戦略だったものを、100億円規模を10個つくるようなイメージですね。
花王が「スモールマス戦略」を上手に行なっていて、洗濯洗剤ブランド「アタック」から派生した「アタックZERO」などを開発するなど、ニーズに合わせて細分化した商品をラインアップしています。
商品はより狭く、より顧客増をはっきりさせていくことが肝要となりますね。
IoTが叶える「パーソナルマーケティング」
テクノロジーの進化が続けば、より消費者にマッチした商品の提供が可能になってきます。
例えば、スマートフォンやスマートウォッチに自分の好みなどのパーソナルデータを入れておけば、店舗のデジタルサイネージと連携して、自分の好みのファッションをレコメンドしてくれるようになったり、レストラン検索とともに自分好みのメニューがピックアップされたり、より商品と消費者の紐付けが可能になります。
そして、顧客の購買&検索履歴が企業側にもマーケティングのタネとなる。よりパーソナルマーケティングの実現に一歩一歩近づいていると感じます。
とはいえ、ネット上でのターゲッティング広告が問題になっているように、倫理的問題とのバランスがあるので、テクノロジーの側面だけで語れるものではないでしょうが、よりシャープにフォーカスして消費者にアプローチしていくことが求められることは間違いないのでしょう。
客数ではなく「客回数」。小売の世界でもライフタイムバリュー(顧客生涯価値)への意識が高まってきています。今後はそこをどう深度化させることが戦略のキーポイントになりそうですね。
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