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日本経済の脱コモディティ化へ

column vol.496

政府が2021年内実質GDPコロナ前(2019年10~12月期)の水準を上回る見通しを示したこともあり、その達成時期に注目が集まっています。

しかし、ニッセイ基礎研究所斎藤太郎さんは、「実質GDPがコロナ前の水準に戻ることは、あくまでも正常化の入口にすぎない」と語ります。

〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2021年12月5日〉

一体、どういうことでしょうか?

「コロナ前」はすでにマイナスだった

確かに、2019年10~12月期をコロナ前とすることが一般的ですが、日本は消費税率引き上げの影響前期比年率▲7.6%の大幅マイナス成長になったことを思い出します。

つまりは、コロナ前の段階ですでに平常時よりも経済活動の水準が落ち込んでいました

日本の実質GDPの直近のピークは消費税率引き上げ前の2019年7~9月期で、2021年7~9月期の水準はそれより▲4.1%も低い状況です。

実質GDPが2019年7~9月期の水準を上回るまでにはかなりの時間を要するだろうというのが、斎藤さんの見方です。

つまり、大切なのは、コロナ禍から抜け出した後に、日本の成長率が上昇トレンドに戻るかどうかなのです。

トレンド成長率の低下が特に顕著なのは個人消費で、この原因は賃金が伸び悩む中で、消費増税社会保険料率引き上げ年金支給額の抑制など、家計の負担増可処分所得の減少に繋がる政策が多く実施されてきたことが背景にあると考えられます。

とはいえ、賃金の上昇を政府が促すことが、果たしてこの負のスパイラルの根本解決に繋がるかどうか……?

一旦、政治は置いておいて、経済界の中での解決のヒントを探りたいと思います。

脱コモディティ化を叶えるために

日本経済停滞の一つの大きな要因としてはコモディティ化が挙げられます。

DXSDGsなど、日本企業を取り巻く環境は激変していますが、横並び志向は未だ根強く、結果、同質的な価格競争に陥っているというのが正直なところです。

何とかコモディティ化から抜け出したい。

ちなみに、中小企業は日本の全企業数のうち99.7%を占めています。

やはり、業界のリーダー企業に対して、どのように優位性をとるかが肝要になります。

そのヒントが早稲田大学ビジネススクール教授、山田英夫さんの『競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択』にあるので、コチラをご紹介したいと思います。

〈日経ビジネス / 2021年12月1日〉

まずはリーダー企業が市場の中でどのような戦略をとるかを見ていきましょう。

①周辺需要拡大…市場のパイを拡大させる。
(例)夜歯磨きする習慣に対し、朝も磨くよう提案。
②同質化政策…先行企業に対して豊富な経営資源で模倣し市場を制圧
③非価格対応…下位企業の安売り競争に安易に応じない。
④最適シェア維持…シェアを取り過ぎないようにする。

については、シェアを取りすぎると、独占禁止法などの問題により、かえってトータル・コストが高くなる場合もあるということです。

80%のシェアを85%にする営業努力は、40%のシェアを45%にする時よりも営業効率が悪く利益率が向上しないこともありえます。

なぜなら、「おいしくない市場」を取らなくてはならないからです。

これに対して追随する企業がとるべき戦略はいかなるものなのでしょう?

リーダー企業と「競争しない」3つの戦略

まず、ざっくり分けると、「より強い者と戦わない戦略」をとるか、「より強い者と共生」を図るかという2つの選択肢があります。

前者は、「ニッチ戦略」「不協和戦略」

そして、後者は「協調戦略」です。

①ニッチ戦略

リーダー企業から見て、市場が規模的に小さ過ぎて、そこに参入すると、リーダー企業の高い固定費により赤字になるなど、割に合わないニッチな市場を築くことです。

〈例〉
●製薬業界リーダーの武田薬品工業に対して眼科領域に特化した参天製薬
大日本印刷凸版印刷に対してディスクロージャー書類に特化したプロネクサス
セブン-イレブンに対して北海道に特化したセイコーマート
日本生命保険に対して税理士チャネルを固めた大同生命保険
etc.

②不協和戦略

当該企業のとった戦略に同質化をしかけると、リーダー企業が保有する経営資源や、これまでとってきた戦略との間に不適合が生じるケース。

つまり、リーダー企業内にジレンマを起こす戦略。一番分かりやすいのが業界のセオリーを裏切ることです。

〈例〉
●年齢よりも若めの訴求が常識だった女性ファッション通販で、年齢相応の訴求をしたドゥクラッセ
営業職員を持たず保険料の内訳を開示したライフネット生命保険
広告掲載料課金リクルートに対して、成功報酬制をとったリブセンス
etc.

③協調戦略

より強い企業と「共生」し、攻撃されない状況を作り出す方法です。

リーダー企業にとって、当該企業に同質化をしかけたり、攻撃したりするよりも、当該企業と手を組む方が得になる場合もあります。

争わず手を組んでしまうことを選択します。

〈例〉
セブン銀行ATMに特化した銀行だが、競合行はセブン銀行と提携し、セブン銀行のATMで現金が引き出し可能に。同時にコスト削減のために自行のATMを削減。ATMに関して、セブン銀行と他行は共生している。

この記事では、触りの部分なので、「コモディティ化から逃れたい」と思っていらっしゃる企業の方は、ぜひコチラの本をご覧ください。

戦略的なところも非常に大事ですが、やはり根幹は「パーパス」「ミッション」も忘れてはなりませんね。

自社が社会に果たすべき役割は何か?

やはり、これからの時代は社会課題をいかに解決していくかが大切だと感じます。

個人でも、会社としても、その辺をさらに意識して仕事をしていきたいと思う今日この頃です。

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