消費者の消滅
column vol.300
昨日、【激変する「生活者ニーズ」】と題して、最近気になった生活者の変化についてお話しさせていただきました。
共通するのは自然共生であったり、サステナビリティに関して意識が高くなっていることです。
その潮流を牽引するのがZ世代でしょう。今の若い人たちの社会問題意識の高さは目を見張るものがあります。
その中で今重要になっているキーワードが「ソートリーダー」です。
Z世代を「ソートリーダー」と見切る
つまり、思想を牽引する人のことです。
ハフポストの記事では、一人の若者にスポットを当てています。
〈HUFFPOST / 2021年5月10日〉
露木志奈さんという20歳という女性がいます。慶應大学に入学したものの、休学届を出し、環境活動家として全国の学校で講演。露木さんは、よく同じパーカーを着ており、ペットボトルを買わないそうです。
インドネシアのグリーンスクールでは、天然素材をつかった口紅づくりに挑み、将来の商品化も考えているとのこと。
つまり、単純にモノを消費するのではなく、自分の意思(哲学)に共鳴したものだけを選択しています。
逆に言えば社会問題意識の高い新しい世代に鑑みると、企業は思想を持つことを求められ、社会的責任を果たすことが必要となります。
もちろん、意識が高くなっているのは若い世代だけではないので、尚更です。
消費者から「称費者」へ
昨年のBLM運動の際、アメリカではバイコット運動が過熱しました。
人種差別問題解決に向けて意思を表明する企業の商品を積極的に生活者が買うようになりました。つまり、買う(buy)ことで称賛を表したということです。
この時は運動として行われましたが、今後はますますそれが日常化する。
SDGs、ESGといった社会的責任を果たすことはもちろんのこと、企業の社会的意義(そのための思想とパッション)で選ばれる時代になるということです。
つまり、消費者から「称費者」へ。
モノの価値で選ばれる時代から、モノの背景にある哲学で選ばれる時代に移り変ろうとしているというわけです。
少し極端かもしれませんが、ある程度、倫理社会、倫理経済というストリームを捉えつつ、企業として、商品として、それがソートリーダーたちから称賛されるものであるかという視点は、これからの企業経営に必要な考え方なのでしょう。
ゴミを宝に変える「称費」
熱海の空き家が「1円」で売れたということがニュースになりました。
〈日刊ゲンダイ / 2021年5月9日〉
その物件はJR熱海駅から車で10分ほどの高台にあります。
1円という値段にふさわしく、その物件は難アリで、高台の傾斜地に建てられており、道路からゴンドラに乗らないと敷地に入れません。
さらに、家の中には山のように残置物が残されている上に、雨漏りもする。結局、100万円かけて自分の手でリフォームしなければなりません。
しかし、購入した大巻広美さんも少なからず空き家問題を意識しての選択ということもあるでしょう。
日本の空き家の数は約850万戸、空き家率は13.6%(2018年)に達しています(総務省統計局調べ)。熱海でも旅館や別荘などを含め空き家率は50%ほどのため、処分に困った所有者が二束三文で手放すケースが少なくないそうです。
手間暇と購入した100万倍の金額をかけて修繕する。しかし、ともすれば負の遺産となる空き家を快適な住まいに変えている。実際、その家からは海が一望でき、花火も観賞できる素晴らしい立地です。
ゴミを宝に変えるための称費と見ると、この物件を買う価値(意義)がとても分かりやすく整理できます。
称費を通じて、社会問題を解決したい人もいるということです。
そして、その傾向が強まっているという側面を捉えていくと、既存の消費者に対する変化の一端が分かりやく理解できますね。
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