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世の中どうよ

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世の中、社会、不満もありましょう。憤りもありましょう。ほっとするニュースがあればいいですね。自分もその中に確かに存在する、その世の中。少しでも別の視点があれば、シェアしたいなと思…
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2023年10月の記事一覧

さりげなく香るキンモクセイ

さりげなく香るキンモクセイ

先日から、歩く道に、強い香りが漂うようになった。キンモクセイである。
 
子どもが「トイレのにおい」などと呼ぶほどに、よくできた香りが、室内芳香剤に使われるようになった。「ぬいぐるみのようにかわいい」というような、ある種倒錯した捉え方である。だが本物の香りのほうが、やわらかいように私は感じる。まろやか、とでも言えばよいだろうか。
 
その香りを先に感じてから、見上げると、あのみかん色の花を見る。香

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教師と配達員

教師と配達員

JRの車両に、小学生が十人以上乗り込んできた。低学年だと思う。学校の行事のようである。遠足ではないようにも見えるが、そういう恰好をしている。町の見学のようなことかもしれない。教師がひとり、ついている。だが私は、ちょっと嫌な予感がした。――騒がしくなる。電車で本を読むのが常の私にとって、狭い車内で大声で喋られることほど、嫌なことはない。耳の横でがーがー話をすることが、他人の思考を破壊することについて

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温故知新というわけではないが

温故知新というわけではないが

京都にも、古本屋があった。東京の規模には劣るだろうが、大学生の街だから、あるいは古書マニアがいるから、けっこうな商売だったと思う。いまなら、売れ筋の本を集めたブックなんとかというお洒落なチェーン店しか知らないような人もいるかもしれないが、私の学生当時はやっぱり「古本屋」だった。
 
独自のあのにおいがぷーんとする。狭い通路の両側に、ぎっしりと本が詰まっている。岩波の専門書は地味な函入りが普通だった

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