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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2023年7月の記事一覧

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

失礼だが、存じ上げなかった。大関和(ちか)さん。幕末の1858年に生まれ、関東大震災後間もなく、74歳で亡くなっている。
 
著者は女性にまつわる調査を多くこなしているというから、本書も、女性と職業という観点から綴られているには違いない。ただ、和さんが信仰者であったということから、私はまた別の光を当てねばならないという気持ちになってくる。
 
副題ではなく、題の冒頭として、「明治のナイチンゲール」

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『現代思想2023vol.51-5 総特集 鷲田清一』(青土社)

『現代思想2023vol.51-5 総特集 鷲田清一』(青土社)

失礼だが、これだけ大きな特集をされるとなると、まさか亡くなられたのでは、と錯覚しそうだった。現代の哲学者としての第一人者であり、大阪大学総長まで務めるという教育者であり経営者でもあった。現象学を学び、それを「現場」で生かす「臨床哲学」という分野をもたらした。とくにファッションというものを哲学から読み取り、またそうした必要性を哲学のために生かした功績は大きい。文章の巧さも光っており、論文もなんだか「

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『<希望>の心理学』(白井利明・講談社現代新書)

『<希望>の心理学』(白井利明・講談社現代新書)

講談社現代新書の以前のデザインのものが届いた。2001年発行である。懐かしい。ひとが生きるには希望が必要だ、と表紙から伝えるものがある。絶望を乗り越え、未来を構想しよう、というのである。うれしいメッセージである。
 
新書という形式は、「注」を参照させない、というのが基本だそうである。一読して読み進めていけるものであるべきだ、というのだ。しかも、元来高校生ですんなり読める、というのがコンセプトであ

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『ヨハネの黙示録を読もう』(村上伸・日本キリスト教団出版局)

『ヨハネの黙示録を読もう』(村上伸・日本キリスト教団出版局)

聖書を掲げながら、自らを正義とし、傲慢になり、一部の人類はここまで来た。巨大なローマ帝国を念頭に置きながら、またその支配下で苦しめられるキリストの弟子たちや教会たる集まりを思いながら、黙示録の筆者は祈り続ける。「ヨハネの黙示録」に描かれる幻は、その筆者の精神的な不安定さを漂わせるような書き方をする中で、その幻が神から与えられたものとしてである証拠に、現代にも通じる警告と慰めを発信し続ける。
 

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