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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2023年6月の記事一覧

『言語の本質』(今井むつみ+秋田喜美・中公新書)

『言語の本質』(今井むつみ+秋田喜美・中公新書)

売れているそうだ。どうしてだろう。サブタイトルも「ことばはどう生まれ、進化したか」と地味だし、帯の言葉も「なぜヒトだけが言語を持つのか」と、中公新書らしい奥ゆかしさである。
 
本書の良さは、その「まとめ」にある。章毎にまとめる。読者は、いま辿ってきた道を振り返ることができる。そして巻末に、本書全体の「まとめ」がある。読後感を確かなものにする。簡単なことのようで、なかなか新書ではやってくれないサー

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『戦争と学院』(下園知弥+山本恵梨編・西南学院大学博物館)

『戦争と学院』(下園知弥+山本恵梨編・西南学院大学博物館)

戦時下を生き抜いた福岡のキリスト教主義学校――そのサブタイトルがタイトルの下に並び、トップには、西南大学博物館研究叢書、と掲げられている。西南カラー(テレベルト・グリーン:百道浜の松の緑と青春そして自由を象徴する)の表紙に、その色合いに収められた、モノクロの写真がある。迷彩状に塗られたロウ記念講堂である。西南女学院である。
 
本書とその企画展が成立したきっかけは、2016年の「創立百周年」のとき

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『ねこかつ!』(高橋うらら・岩崎書店)

『ねこかつ!』(高橋うらら・岩崎書店)

表紙の表にも裏にも「保護ねこ活動」というスタンプのイラストが入っている。「ずっとのおうちが救えるいのち」という副題は、「ねこかつ」というタイトルの意味の説明を呈している。
 
表紙の子猫たちは、本書の主人公たる三兄弟。一番上の猫は、左目が潰れている。この子の独り語りが、本書の文章の形態である。この子が、保護ねこ活動について説明を現場から届ける、という体裁をなしている。
 
私も、保護ねこ活動につい

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『亜宗教』(中村圭志・集英社インターナショナル新書)

『亜宗教』(中村圭志・集英社インターナショナル新書)

たくさんの著書がある。宗教関係が中心である。宗教学者と呼んでよいのか、評論家と呼べばよいのか、私には判断がつかないが、見識の広さには驚くばかりである。聖書はもちろんのこと、コーランに仏教から神道、ギリシア思想とくると、もう宗教一般とするしかないのかもしれない。
 
その宗教というもののレベルからすると、本書のターゲットは、少しずれる。だから「亜」の字をつけているが、著者の造語である。具体的にそれが

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