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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2023年1月の記事一覧

証し

証し

いま、たいへん気になっている本がある。『証し 日本のキリスト者』というものである。
 
著者はキリスト教の信徒ではない。ノンフィクション作家だ、と言ってもよいだろうか。キリスト者135人を取材し、その「証し」を集めた。教会関係者でもないし、出版社はKADOKAWAである。そこでキリスト教関係者も、あまり気づいていないように見える(もちろん紹介している人もいる)。
 
私は書店で実物を見、魅力を覚え

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『生きる勇気』(P.ティリッヒ・大木英夫訳・平凡社ライブラリー102)

『生きる勇気』(P.ティリッヒ・大木英夫訳・平凡社ライブラリー102)

ティリッヒとくれば、20世紀の神学者として、カール・バルトと並び称される偉大な人物であるという定評である。哲学を学んだとあって、その神学は哲学的思考に導かれている。本書も、非常に抽象的で、読むのに骨が折れた。殆ど何も具体的な事例が出てくることなく、比喩のようなものも感じられず、ひたすら抽象的に論じ続けるのである。
 
そのため、ここで感想を述べようにも、実に苦しいものとならざるをえない。内容を辿れ

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『ねこはすごい』(山根明弘・朝日文庫)

『ねこはすごい』(山根明弘・朝日文庫)

地域猫活動にささやかながら協力している以上、このようなタイトルの本を覗いてみたくなるのは必定である。古書店で見つけたときは、内容を見ることができるので、パラパラとめくり、ハッとした。以前、西南学院大学博物館で猫の展示会があったときに、福岡県新宮町の相島(あいのしま)で猫の研究をしている人がいることを知ったのだが、その人が著者であった。これはもう買うしかない。
 
2016年の新書を文庫化したもので

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『良心学入門』(同志社大学良心学研究センター編・岩波書店)

『良心学入門』(同志社大学良心学研究センター編・岩波書店)

同志社大学良心学研究センターは、2015年に設立されたという。「良心」というキーワードを中核として、理系文系に拘わらず、凡ゆる領域で探求するという場であるらしい。現代社会での様々な問題の根柢に、「良心」が関わっているのではないか、という見通しの下、リベラルアーツ教育にも適う営みが始められたのである。
 
同志社大学は、新島襄により創立され、キリスト教主義を基本としている。近年そのリベラルさが、キリ

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『説教 いかに備え、どう語るか』(フレッド・B・クラドック/吉村和雄訳/教文館)

『説教 いかに備え、どう語るか』(フレッド・B・クラドック/吉村和雄訳/教文館)

憧れの本だった。小さなサイズで400頁にも満たないのにこの価格である。しかも新刊としては販売されておらず、古書しかない。その古書の価格が、元の価格を上回っていた。何倍にもなっている時期もあり、とても手が出なかった。買えるかも、と思った時もあったが、他の牧師に買われてしまった。SNSを見てそれを知った。また価格が跳ね上がった。そうして待つこと何年か過ぎた。まだ定価を上回るが、清水の舞台から飛び降りる

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