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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2022年10月の記事一覧

『旧約聖書がわかる本』(並木浩一と奥泉光・河出新書)

『旧約聖書がわかる本』(並木浩一と奥泉光・河出新書)

並木浩一先生の本はいくらか手にし、好感をもっていたので、新たな新書ということで注目していた。本のタイトルは卑近であり、「<対話>でひもとくその世界」ということで、終始対談という形式で展開していることも気になったが、むしろ読みやすかった。「対話」というから、いくらか議論めいたものがあるのか、と思ったが、大学での師弟関係でもあるせいか、至っておとなしく、二人の「会話」が進んでいくような印象である。
 

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『死刑について』(平野啓一郎・岩波書店)

『死刑について』(平野啓一郎・岩波書店)

話題になっていた。真っ白な表紙のデザインがいい。真っ白な心で頁を開くとよいだろう。死刑については一般に、賛成と反対と意見がわりとはっきりしているように見えるが、どちらの考えの人も、まずはよく聞いてみよう、という意味だ。
 
本書では、賛成の立場を「存置派」、反対の立場を「廃止派」と称しているので、私もそれに倣って記すことにする。
 
2019年開催の、大阪弁護士会の講演会の記録をもとに、2021年

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『生きることの質』(日野原重明・岩波現代文庫)

『生きることの質』(日野原重明・岩波現代文庫)

私は2008年発行の現代文庫で読んだが、単行本としては1993年発行のものである。この時点で、つまり著者が82歳の時点で、著書は200冊ほどであるということが記されている。亡くなるのが2017年、いったい何冊お書きになったのだろうか。
 
広く知られる医師である。最後まで現役を通したことになっているが、享年105、驚くべき方である。執筆のため、睡眠時間はかなり短かったらしいが、京大医学部在学中に結

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『絶望に寄りそう聖書の言葉』(小友聡・ちくま新書)

『絶望に寄りそう聖書の言葉』(小友聡・ちくま新書)

コヘレトの言葉は、旧約聖書の中でも異色の書である。「空の空」などと繰り返すところが、仏教思想の言葉でもあるせいか、日本人が比較的受け容れやすいのだそうだ。NHKテレビで、コロナ禍に入った時にこの書についての番組を半年にわたり担当した。また、新しい聖書協会共同訳の翻訳も担当しているというせいもあって、一牧師並びに神学校教授である身から、マスコミや出版のほうからも声がかかるようになったようだ。その後い

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