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ベテラン看護師のインサイト発掘力に関する考察

人生4回目の入院生活をしている私。
何人もの看護師さんに対応頂く中で、ベテラン看護師さんのケアが「素敵」と感じました。
「素敵」の秘密は、私からの患者インサイトの引き出し方にあると気づきました。

マーケター視点で、ベテラン看護師さんのインサイト発掘の技術について考察した気づきをシェアします。

↓筆者の自己紹介

1.看護の現場でのインサイトとは?

インサイトとは、日本語に訳すと「洞察」「発見」「直感」を意味する単語だが、マーケティング用語では、「消費者の隠れた心理」を表す。

表には出てきていないが、消費者の中に存在している心理。そこに、突き刺さる製品・サービスにしていくことがマーケターとして一つのアプローチである。


さて、看護の現場で私は何を「インサイト」と呼んでいるかと言うと、「患者が困ってる事、分からないと感じている事」である。
さらに具体的なイメージが湧くように説明する。

皆さんは入院した事があるだろうか?

私の場合、執筆現在、入院中だ。
切迫早産の可能性があるため絶対安静。
自分としても、お腹の張りがキツく、起き上がると言う行為すら負担な状態だ。

そこに張りを抑える未知なる薬を点滴され、副作用の火照り、手の震え、動悸、息切れに悩まされてると言う状態である。

退院の時期は未定だ。
2歳の娘がいて、入院時現在、旦那にワンオペ育児をお願いしている状態だ。


と言う、背景を背負った女性。初めて会う女性。無言で寝ている女性に対して、彼女が望む、また、医療的に適切な看護ケアを行うのが看護師さん達である。

2.看護師が相手にするは無言の患者

無言で寝ている。と表現したが、私が不躾な態度をとっていると言う意味では無い。

看護師さんは基本的には交代勤務、日勤と夜勤の方がいるので、1日に2名が担当になるイメージだ。且、毎日シフトは変わるので、毎日異なった2名が私の担当をしてくれる。

大体、1名に付き4〜5イベントある。熱を測ったり、血圧を測ったり、点滴を差し替えたり、子供の心拍を確認したりなどだ。

何が言いたいかと言うと、私からすると、毎日初めましての状態なのだ。1日に2回も自分の身の上話なんてしてられない。私は、患者として副作用に耐えながらただ寝ている。そう言う意味で無言の患者なのである。

インサイト情報を自分から積極的には発信していかないと言う点で、ビジネスにおける顧客とサービス・商品提供者側との関係に構図が似ていると思ったのだ。

看護師も同じ事を何度も聞いてしまう事を避ける、そのためおそらくいつも持ち歩いているパソコンに私の今までのヒアリングデータが入っているのだろう。

こんなに人が違うのに、私はあたかも1人の人と会話をし続けているように感じるくらい、情報に途切れが無い。

3.ベテラン看護師のインサイトの見つけ方〜具体的な会話編〜


ベテラン看護師に触れて、素敵と気づいたと言うよりは、新米看護師に触れた時にベテランの技術の深さを知ったのである。

私は、新米看護師にこう聞かれた。
「何か困ってる事、お手伝いする事ありますか?」

普通の質問だと思う、私は特になかったので大丈夫ですと答えた。

少し後に、夜勤でベテラン看護師に交代になった。ベテラン看護師が病室に入ってくる。

「どう?動悸と息切れはまだ続く?そうかそうかー、お腹の子供のためとは言え辛いよね。

点滴薬じゃなくて飲み薬の方も進めてみるって言ってたから、その辛いのも後少しの辛抱だよ。

点滴は痛む?ちょっと痛む?見せて。あー、点滴漏れ始めてるね、これはね刺し替えた方がいいよ、このちょっとの痛みがほっとくと激しくなるよ。」

歴然なのは分かると思うが、何がすごいのか。ここを深掘りしていきたいと思う。

4.ベテラン看護師のインサイトの見つけ方〜深掘り編〜


まず、このインサイトを探られる側になってわかったのは、探られる側から、有益な情報を自発的に出す事は難しい。と言う事である。

新人看護師に何か要望があるかと全方位的に質問を、もらった際に私は何も思いつけなかった。

もちろん副作用であまり頭が働いてない所も大きいが、やはり頭を働かせて準備しないと答えられない聞かれ方と思った。

一方、ベテラン看護師の会話だ。
2点の観点で考察する。

①どう?動悸と息切れはまだ続く?そうかそうかー、お腹の子供のためとは言え辛いよね。

これは副作用症状に関する、私のヒアリングデータの確認した後に、現状を本人に確認し、その事象が本人にとってどのように影響を及ぼすかを考えた上での発言だと思う。

データをデータで読み取るだけにとどまらず、その状況に置かれた時の心理状態にまで発想を飛ばしている。

② 点滴は痛む?ちょっと痛む?見せて。あー、点滴漏れ始めてるね、これはね刺し替えた方がいいよ、このちょっとの痛みがほっとくと激しくなるよ。

非常に具体的な質問だ。こう効かれたらYES、NOで答えられる。確かに少し痛くなっていた気がする。

ただ、刺し替えるという選択肢も知らなければ、漏れるという事象が起きる事も知らなかった。

これでは私からは発信できなかっただろう。

おそらくだが、彼女は患者から自発的に要望を出すことの難しさを知っているのではないだろうか?

我々マーケターのヒアリングでもそうだが、一見顧客は自身の事を理解していて、自身の中に眠っているインサイト情報をいつでも引き出せる準備ができている状態にあるように感じる。

だからヒアリングするのだ。

でも、聞かれる受け手になって思ったのは、やはり専門家は看護師の方で、私の中のインサイトは、引き出しを看護師にノックしてもらわないと開かないような構造になっていると思った。

5.ヒアリングするなら相手の引き出しをノックしよう

なので、私がベテラン看護師に学んだのは以下である。

インサイト情報は顧客の中に眠るものの、自発的に表に出るものではない。

そのため、ヒアリングをかける際には、データを、頭に入れて、過去の経験や自分の発想から、その立場になってみた時に感じるであろう事を、自分であたりをつける必要がある。

そして、インサイト情報を引き出すためには、全方位的な質問ではなく、上記でつけた当たりを元に、インサイトが眠りそうな、引き出しをヒアリング者側がノックし、相手に開けてもらって引き出す必要があるのでは無いかと考察する。

私もヒアリングする際はベテラン看護師のケアを思い出して実践してみようと思う。

終わり。


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