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散って咲かしてまた散って

春を彩る私のこうべ

桃色の誘いが

宴の始まりを合図する

ある時には風が吹く

こうべを委ねて

散らすも一興

散りゆく私は

誰かに踏まれ

地面にひしゃげて

茶色に消える

私の頭は裸になって

人は見向きもしなくなる

嗚呼、儚きお前

苦労を無駄にせんでくれ

心まで溶かす日照りの日々

心まで凍らせる寒波の日々

見向きもされずに廻る日々に

耐えきれないような暴力の日々

やっとお前は報われたのに

どうして大事にしないのだ

どうか話を聴いて下さい

散って咲かしてまた散って

私は天に伸びゆくのです

さすれば

散ることに恐れはない

そうして

また貴方の前に現れます

明くる年の春

お前は蕾を開かなかった

冷たい幹に触れた時

未だ伝わるお前の鼓動

散って咲かしてまた散って

何十年と生きた重みが

俺の胸に伸し掛かる

何十万枚の花びらのよう

びくともしない太い幹

思わず額を押し付けた

そのまた次の明くる年

満月の夜に春爛漫

こうべを見上げ広がる世界

世界を桃色に染め上げ

高い場所から見下ろすお前

月光が照らす花びらが

意気揚々と飛んでいく

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