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【性別適合手術と妻へのプロポーズ9】「普通の男性と結婚したかった!」と言う女性と、私は結婚しました

このnoteでは、LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。自己紹介はこちらからご覧ください。
自分は男性だと思いながらも、一体何者かわからずに生きてきた私。戸籍も男性として生きていくと決め、私はついに性別適合手術を受けました(その様子は前回の記事をご参照ください)。今回は、私が結婚した「彼女」とのストーリーをお届けします。
(本シリーズはこちらから)

32歳の時、私は戸籍上の性別を女性から男性へと変更しました。性別の変更を望む場合、家庭裁判所に「性別の取扱いの変更の申立て」をすることになります。

裁判所のホームページには、「性別の取扱いの変更」として以下のような記述があります。

家庭裁判所は、性同一性障害者であって、次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について、性別の取扱いの変更の審判をすることができます。

1.二人以上の医師により、性同一性障害であることが診断されていること
2.18歳以上であること
3.現に婚姻をしていないこと
4.現に未成年の子がいないこと
5.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
6.他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
※ 性同一性障害者とは、法により「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者」とされています。

「性別の取扱いの変更」について

上記の通り、私は性同一性障害であると診断されてから性別適合手術を受け、その後、戸籍上の性別変更する手続きを開始しました。

性別変更の手続きがスタートしたら、すぐにしたいことがありました。彼女へのプロポーズです。

2014年6月末に性別適合手術を受けた私は、7月には家庭裁判所に性別変更の申し立てを行いました。裁判所から審判の結果が出るまでにはしばらく時間がかかりました(私の場合は9月末でした)。結婚・入籍できるのは審判の結果が出て、戸籍上の性別は男性になってからですが、私はそれまでプロポーズを待つことはできませんでした。

彼女との結婚を焦っていた、というよりも、とにかく彼女と結婚したかったのです。やっと男性として生きることができる! 自分にとってかけがえのない家族をつくりたい! それはほかの誰でもない彼女と……そう思ってプロポーズに突き進みました。そして、私は、思いかなって彼女と結婚することができました。

結婚前、彼女とのデート

このようにお話しするときっと「彼女は性同一性障害など性の多様性に理解がある人なのだろう」「性別適合手術、そして性別の変更を乗り越えた田崎さんを支え続けるほど田崎さんを心底愛していたのだろう」などと思われるのではないでしょうか。もしかすると「いつか直面するであろう社会からの偏見の目も恐れない強さをもった人なのだろう」と想像する人もいるかもしれません。

しかし、実際の彼女は、スーパーヒロインのような人では決してありませんでした。それどころか、「私はあなたみたいなややこしい人ではなく、〝普通の男性〟と結婚したかった」と率直に私に話すような人でした。結婚した後、彼女は私に「あなたとはお付き合いする期間はゼロで、いきなり結婚した」と言いました。私は彼女と付き合っていた、彼女に支えられたと思っていた日々は、彼女にとっては単なるお友達だったというのです。

それでも彼女は私との結婚を選びました。彼女がそれまで付き合ってきた相手は、いわゆる〝普通の男性〟ばかりです。しかし、彼女は、私を夫として選んでくれました。そして今日まで、たくさん喧嘩もしながら、楽しく一緒に暮らしています。

彼女はいったい、私をどのような存在だと考えていたのか。そもそも彼女にとって出会ったときの私は女だったのか、男だったのか。彼女の中で私の存在と性は変わっていったのか。なぜ彼女は私を受け容れてくれたのか。私との結婚に周囲は反対すると思わなかったのか。私との結婚に抵抗感やプレッシャーはなかったのか……。彼女から改めて聞いた言葉も交えて、これからみなさんに私と彼女が歩いてきた日々をお話ししたいと思います。

次回は妻となる彼女との出会いをお話しします。

【これまでの物語はこちらから】


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