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【性別適合手術と妻へのプロポーズ11】進まない「男と女」の関係。深まる「人と人」の関係。

このnoteでは、LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。自己紹介はこちらからご覧ください。
自分は男性だと思いながらも、一体何者かわからずに生きてきた私。戸籍も男性として生きていくと決め、私はついに性別適合手術を受けました。今回も、私が結婚した「彼女」とのストーリーをお届けします。(本シリーズはこちらから)

友人が企画したデイキャンプで妻となる女性と知り合った私は、次第に彼女に異性(女性)としての好意を抱いていきました。そして、自分のことをもっと知ってもらいたくて、出会って3か月ほどたったある日、電話で彼女に「自分はもともと女性だけど、近いうちに性別適合手術を受けようと思っている」と打ち明けました。

しかし彼女はこう言いました。「あなたはあなた、私は私。あなたの性のことは私には関係ない」「あなたのことを好きになる可能性はないから、あなたの個人的なことは私には関係ない」

お互いに友達ではあったけれど、いわゆる男女関係になっていく気配はその時点ではなかったわけです。しかし、それでも、私たちの関係は続いていきました。「あなたのことを好きになる可能性はない」と言われてからも、毎日のように長電話し、おしゃべりしていました。

彼女は私の誘いに「NO」ということはまずありませんでした。だから、実際に会って、カフェに行ったり、買い物に行ったりする機会もどんどん増えていきました。

付き合っていないけれど(笑)、自宅で一緒に料理をすることも

ただ、頻繁に会う中でも彼女は私に釘を刺すようにこうも言っていました。「一緒にいるのはいいけど、一緒になるつもりはないからね」と。

私は、「えー!なんで?(俺、こんなに好きなのに!一緒になろうよ!)」と聞きます。すると彼女ははっきりとこう答えるのです。「あなたは普通の人じゃないから。女から男になるなんて、私には理解できないし、受け容れられない。だから無理」と。

言葉だけ見ると、なんとも冷たい感じがしますが、実際に言われた私はそんなふうには思いませんでした。彼女の「あなたは普通の人じゃないから無理!」の言葉にも、「そうかあ。普通じゃないかあ。そうかもなあ。でも、大好きなんだけどなあ」と笑って答えていました。

なぜ、彼女の冷たい言葉を私は笑顔で受け止められたのか。それは彼女がいつも私のそばにいてくれたからです。「普通の人じゃないから無理」といいながら、彼女は週に何回も私と会って、楽しい時間を一緒に過ごしてくれていました。彼女は、私が「男であるか女であるか」よりも、「一緒に時間を過ごすに値する人間であるか」という目で見ていてくれたのだと思います。だから、私は彼女との時間を楽しめたのでしょう。

もちろん、ホルモン療法を受けていた私は、自分のことを「男」として見てほしいと思っていました。ただ私が彼女に「男としての好意」を明らかにすると、彼女は「女から男になるなんて理解できない」と率直に私に言いました。

付き合っていないけれど(笑)、お揃いのビーチサンダルで海へ

男女という性別を超えた個人としては、彼女は私を受け容れてくれていました。しかし、女から男になろうとする私を受け容れようとはしませんでした。

こうした関係は、私にとって、男女関係という視点では不満なものでした。しかし、より大きな視点、つまり、人間対人間という視点では満足できるものだったのです。

こんな感じで2人は結婚できるのか?と思う方も多いと思います。結婚に至るなら、きっと何かのきっかけで「男と女」として燃え上がるはず!……しかし実際には、そんな期待は裏切られ続けます。しかそれでも私たちの仲は深まっていきます。次回も結婚前の彼女との関係をお話しします。

【これまでの彼女と私のストーリーはこちらから】

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