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Making Sense - Finding Our Way 2-3

D:そうですね。最後に一言だけ言わせてもらうと、あなたの本は十分に目的を達成していると思います。しかも、とても時代にあっている重要な目的だ。ただし、基本的なロジックに批判があるとすれば、もしこれから私がいうことにあなたが同意したうえであの本を書いていてくれたなら、より優れた形で目標を達成していたのではないかと思います。 私は道徳の理論に対して、ポパーが科学理論に対してとっていたのと同じ態度で臨みたいと思っているんです。 つまり、これが道徳の基礎(不変な真理)だと主張するよう

    • Making Sense - Finding Our Way 2-2

      H:これは経験してみないと答えることができない質問ですね。恐らくあなたが正しいのかもしれない。では、一旦ドラッグのことは忘れて、映画のマトリックス的な世界の話をしましょう。そこでは、あらゆる心が、好きなだけ創造的、あるいはその世界ではとても創造的に見えるのだけれども、実際には幻覚のなかで孤独に過ごしている。それはただの幻影で、現実とのつながりを失い、完全な仮想現実の中に生きている。しかしながら、この仮想現実はあまりにも刺激的で美しく、喜びが湧き出ていて、もう何が現実かなんてど

      • Making Sense - Finding Our Way 2-1

        A Conversation with David Deutsch D:知識とはもともと重要なものです。しかし、蓄積されていくものではありません。これまでは、いろいろな形で積み上げていくものだと考えていました。例えば、デカルトのように無から積み上げたり、あるいは、感覚から、神のようなものから、遺伝子から積み上げていくと考えられていました。まるで、レンガを積み上げていくように、思考を積み上げていくと考えていたのです。しかし、カール・ポパーの科学観は、知識とはそのようなものでは

        • Making Sense - Finding Our Way 1-4

          A Conversation with David Deutsch H:最後に、いかに文明を維持していくか、それから、知的な機械の誕生がもたらす危険について話したいと思います。いわゆる「フェルミのパラドックス(フェルミのパラドックス - Wikipedia)」についてはどう思われますか?なぜ我々の銀河系には、我々よりも進んだ文明が存在しないのでしょうか?ひょっとすると、知識が増えることは、実は致命的なことだったりしないのでしょうか? D:フェルミの問題は、実はパラドックス

        Making Sense - Finding Our Way 2-3

          Making Sense - Finding Our Way 1-3

          A Conversation with David Deutsch H:それでは、文明の維持について話しましょうか。それについて、どのような心配事がありますか? D:私は人類の歴史を長期にわたる完全な失敗と見ています。つまり、進歩を遂げられなかったという観点からの失敗です。われわれの種は、数え方によっては10万年から20万年の間存在してきました。その間、人々は生きて、考えて、苦しんで、何かを求めていました。しかし、何も改善されなかったのです。改善が起こったとしても、非常に

          Making Sense - Finding Our Way 1-3

          Making Sense - Finding Our Way 1-2

          A Conversation with David Deutsch H:ここで人工知能(AI)に関する話題に移りたいとおもいます。私は最近、スティーブン・ホーキング、イーロン・マスク、スチュアート・ラッセル(スチュアート・ラッセル - Wikipediaa)、マックス・テグマーク、ニック・ボストロム(ニック・ボストロム - Wikipedia)らが人工汎用知能に関する懸念を唱えていることを知って、人工知能に興味を持つようになりました。私も彼らと同様に懸念する点があると思って

          Making Sense - Finding Our Way 1-2

          Making Sense - Finding Our Way 1-1

          A Conversation with David Deutsch ディビッド・ドイッチュ(デイヴィッド・ドイッチュ - Wikipedia)は科学的で哲学的で変革的な考えを、まるで簡単なことのように表現するのが上手です。彼はオックスフォード大学クラレンドン研究所の量子計算センター客員教授として、計算の量子論やコンストラクタ理論(Home » Constructor Theory)などの研究に取り組んでいます。 この章では二つの対談を紹介します。一つ目では、人類の知識の驚く

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          Making Sense - The light of the Mind 5

          A Conversation with David Chalmers H:AIについてはどう思いますか。ニック・ボストロムの「スーパーインテリジェンス: 超絶AIと人類の命運(https://amzn.to/3XKWb3w)」は読みましたよね。私が初めてAIが意味するものについて興味を抱き始めて一年くらいになるのですが、このニックの本がきっかけでした。私はAIの安全性に関して心配しているんです。彼の言う「コントロール・プロブレム」です。あなたはどう思いますか。 C:すごく

          Making Sense - The light of the Mind 5

          Making Sense - The light of the Mind 4

          A Conversation with David Chalmers H:ゾンビの議論に関してもう一つ質問があります。それは、ゾンビ自身が自分たちに意識があるかどうかについて議論することができるのか、というものです。 私の双子のゾンビがいたとしましょう。なんの経験もしたこともないけれども、私と同じように行動して話をする瓜二つの双子が意識について考えたり、「あなたには主観的経験があるが、私にはない」と言ったりする動機は何でしょうか?どうやって経験と非経験を区別するのでしょうか

          Making Sense - The light of the Mind 4

          Making Sense - The light of the Mind 3

          A Conversation with David Chalmers C:もし火星人と遭遇したらどう思いますか。例えば、高度な知能を持っていて振る舞いも洗練されている。彼らとは科学や哲学について語り合うこともできる。しかしながら、彼らが進化した過程は我々のそれとは異なっている。その場合、彼らが意識を持っているかどうかに関してどう思いますか。 H:たぶん疑うと思います。なんとなくそれは我々人間と我々が創造するAIの中間くらいなんじゃないかと思います。この話題に関連して訊きた

          Making Sense - The light of the Mind 3

          Making Sense - The light of the Mind 2

          A Conversation with David Chalmers H: もちろんあなたはご存じないかもしれないけれども、私の人生の知的な要素においてあなたは重要な役割を担っていたんですよ。アリゾナ大学で2年ごとに開かれる「意識」に関する会議のうち、初期のものに参加したことがあるんです。その当時、私は学校を中退し、人生の方向性を模索していました。そして、当初はダニエル・デネット(ダニエル・デネット - Wikipedia)とジョン・サール(ジョン・サール - Wikipe

          Making Sense - The light of the Mind 2

          Making Sense - The light of the Mind 1

          A Conversation with David Chalmers 私は「意識」とは何かをずっと長い間理解しようとしてきました。そのきっかけを与えてくれたのがデイヴィッド・チャーマーズ(デイヴィッド・チャーマーズ - Wikipedia)です。まずは彼との会話で本書「Making Sense」を始めたいと思います。デイヴィッドは、ニューヨーク大学とオーストラリア国立大学で哲学を教えていて、ニューヨーク大学のCo-director of the Center for Min

          Making Sense - The light of the Mind 1