スタンド・バイ・ミー
当時ブログに書いた文章をnoteに載せてみたくなりました。
=2004.11.20の記事=
「スタンド・バイ・ミー」
言葉は命である。
哲学者の池田晶子は、著書『あたりまえなことばかり』で書いています。
死の床にある人、絶望の底にある人を救うことができるのは、医療ではなくて言葉である。宗教ではなくて、言葉である。
この文章を読んだときの衝撃を忘れることができません。なんて力強い言葉なのだろうか。人が人らしく生きるために必要なのは医療や宗教ではなく、言葉であると気づきました。
こんなことを書くのは、11月10日付の読売新聞の「余命 輝いて生きる」の連載第2回「傾聴で孤独感軽く」という記事を読んだからです。
ここでは末期がん患者のための傾聴ボランティアが紹介されています。そういうボランティアがあると初めて知りました。傾聴とは、相手に寄り添って話を聴くこと。ただ聴くだけのボランティア・・。なんだ簡単じゃないかと思ってはいけません。この人たちは聴くことのプロです。
傾聴で大切なポイントは3つ。
1.自分の意見を言わない。
2.同じ目線で接する。
3.相手の話を遮らない。
「相手に近づき、話に共感しようとする努力が大切」 なのだそうです。
末期がん患者にとって、自分の話を聴いてもらえることは、孤独や不安をやわらげる何よりの薬になるでしょう。そのときに必要なのは、意見や批評ではなく、肯定なのだと思います。末期がん患者の話を受け止めて、受け入れる。それはすなわち、その人の人生を認めてあげること。
それが傾聴ボランティアの本質だと思います。
嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、つらかったこと。誰の人生にもドラマはある。普通の人の、でもその人だけの生き様を誰かが聴いてあげること。そして覚えてあげること。それはきっと意味のあることだと思うのです。なぜなら言葉は命だから。言葉を受け止めてあげることは、その人の命を受け止めてあげることと同じです。それが傾聴ボランティアの仕事なのだと思いました。
相手に寄り添って聴くだけ。ただそれだけで人は救われます。
ベン・E・キングの歌をふと思い出しました。
「スタンド・バイ・ミー」には確かこんな意味の歌詞が出てきます。
「暗くなって月の光しかなくても君がいるなら、恐くないよ」
「君がそばに寄り添ってくれるだけで僕は強くなれるんだ」