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遅読家の読書録

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「桐島、部活やめるってよ」タイムカプセルのような小説でした。

「桐島、部活やめるってよ」タイムカプセルのような小説でした。

この歳になって、初めて朝井リョウを読んだ。

朝井リョウさんとは同じ年に生まれた。だから当然デビュー当時から知っているし、いつかは読んでみようと思っていたのだが、なぜか腰が重かった。

それが去年「正欲」が本屋で平積みになってるのを見て、無性に読んでみたいと思った。なんだかそそられる、いかにも自分好みの雰囲気を醸している。

ただやっぱり新作からいきなり読むより、過去の代表作を何か読んでからにしよ

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死者の奢り・飼育/大江健三郎

死者の奢り・飼育/大江健三郎

先月JR宇都宮線の電車内で、喫煙していた男性
を注意した高校生が、男性に10分以上殴られて重傷を負うというニュースが流れた。
友人3人が止めようとしたものの、他の乗客は誰も助けに行かなかった、という情報まで入っていた。

このニュースを受けてコメ欄では高校生の勇敢な行動を讃える声と同時に、周りで何もせずに見ていた乗客への批判も当然起こった。

僕はこのニュースを見て考えを巡らせてるうちに、去年読ん

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「わたしを離さないで」カズオイシグロ

「わたしを離さないで」カズオイシグロ

noteの投稿を始めたのが去年の10月で、11月に数回投稿し、その間にフォローしてくださった方もいた。

ああそれなのに、早速先延ばし癖が出て前回の投稿から2ヶ月経ってしまった。

言い訳をさせてもらうと、僕自身ここで書く内容についてあれこれ模索していたのだ。

加えて僕は悪い意味で完璧主義なので、これでは投稿できないと判断したいくつかの記事をお蔵入りにした。

でも2ヶ月ほど考えて今までと違った

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家族神話にメスを入れる|「空中庭園」

家族神話にメスを入れる|「空中庭園」

今日は小説にハマるきっかけになった本を紹介したい。

その本を読んだは大学2年生の時だったと思う。
当時、読書は僕にとってかなり頑張らないとできない芸当だった。
小説には風景描写とか心情描写があり、そういったものに慣れないので、読むのに物凄く時間がかかった。
その時期に買った本で挫折した本は数知れない。

やはり読書よりも映画とかテレビドラマを観てる方が圧倒的に面白かったし、楽だった。
そのうち書

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初めてのドストエフスキーに悪戦苦闘した話|「カラマーゾフの兄弟」

初めてのドストエフスキーに悪戦苦闘した話|「カラマーゾフの兄弟」

今年の5月頃、3度目の緊急事態宣言が発令された。
僕の職場は飲食店で1ヶ月程の休業が決まった。
その期間中働こうと思えば派遣の仕事で働けたのだが、その時はどうにも働く気力が湧かなかった。

仕事をサボる代わりに免罪符のつもりで、今まで読んだことがないような文豪の小説を数冊買った。大江健三郎、開高健、そしてドストエフスキーだった。

「カラマーゾフの兄弟」を読み始めたのは休業も明け、それまでサボって

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遅読家の読書録

遅読家の読書録

僕は本を読むのが遅い。

平均して月に2、3冊、頑張った月で4、5冊程度である。

大半は小説で、たまに新書とかビジネス書が挟まれる。同時に2、3冊を並行して読むことが多く、これがさらに読了までの期間を伸ばしてると考えられるが、この読書スタイルはなかなかやめることができない。
おかずばっかり食べた後に、ご飯ばっかりではつらいのだ。

速読の本もいくつか読んで試している。
ある程度読書スピードを上げ

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