見出し画像

【KPI沼から抜け出すヒント】新規事業の測り方-勝負はKPI設定前についている-

こんにちは!NEWhで新規事業の伴走支援をしている谷口です。
今回は誰もが一度は、もしくは常に模索の沼にはまり込む「KPI」について、正解も前例もないことが多い新規事業ではどのように状況を測ればよいのかについて、特に日々が戦いのPSF~PMFフェーズを想定して考えてみたいと思います。


KPIには2種類ある

まずはじめに、KPIについては大きくふたつの意味合いがあると思っています。

対外的なKPI

ひとつ目は「誰かのためのKPI」です。具体的には新規事業チームが社内のステークホルダーと握ったステージクリアの条件となっているものや、純粋にビジネス的にうまくいっているかどうか、売上やマーケティングの成果を示すものが多いのではないでしょうか。

チームのためのKPI

もうひとつが「自分たちのためのKPI」です。サービスやプロダクト立ち上げ初期、仮説を重ねてターゲット顧客と課題を見定め、満を持してリアルな顧客へぶつけた反応や手応え、いわばほんのわずかな兆しを感じるセンサーのようなものです。

世の中を見渡してみると、特に企業内部での新規事業については前者のKPI
についての悩みを多く見かけます。「このビジネスにとっての正しいKPIの指標は何か?」「KPI数の妥当な数は?」「ステークホルダーが分かりやすく、納得感のあるKPIは何か?」といった具合です。しかし、限られた予算と時間を削るように使いながら、暗中模索のなかでほのかな手応えを掴みたい新規事業担当者が気になるのは、後者の方ではないでしょうか?

KPIは自分たちの手でつくるもの

そもそもターゲット顧客に仮説で立てた課題はあるのか?そして、その課題は自分たちのソリューションで解消されるのかを測るPSFフェーズと、それを乗り越えた後、晴れて商品として、ユニットエコノミクスが成立し、市場の天井の高さが本当にあるのかを測るPMFフェーズとでは、KPIが異なるというのは想像できると思います。また、自社やチームを取り巻く環境や条件も千差万別、ケースバイケースです。

KPIの書籍や記事を読んで取り入れてみる、あるいはグロースしたスタートアップSaaSの指標をそのまま導入してみてもどうもうまくいかない、打ち手をとっても設定したKPIが振れないという経験をされた方も多いと思いますが、その理由は「自分たちに合わせて、つくりだすもの」「自然とつくりだされてくるもの」だからです。

決め手はKPI設計の手前にあり

新規事業のアイデアが仮説検証を経てサービスやプロダクトとして、目に見えるカタチになり、顧客に届けようとする段階に来ると、必ず揃えるのが

  • 「戦略=どう戦うのか」

  • 「計画=そのために何をするのか」

  • 「予算=どのような結果を想定しているのか」

この3つではないでしょうか。KPI設計にあたっては、このうちの「予算」計画と密接にかかわってくるものだと思っています。

この予算に計上する売上とコストの数字、どうやって求めているでしょうか?売上ひとつをとってみても、例えばWebサービスであれば、このようにいくつかの因子に分けて求めていくと思います。さらにこの因子には、想定している数値や変数を入れていきますよね?

これこそがKPIの源泉です。自然に考えていることなんです。

KPIは予測の解像度をあらわすもの

新規事業を手掛ける担当者であれば、サービスやプロダクトが市場に受け入れられるのか、心配で心配で仕方がないというのが正常な心境だと思います。そんな人こそ、予算シミュレーションの数字を作成するときにはこのような「ユーザに届いて使われるまでの情景」を想像しながら作成していくはずです。

この情景の解像度が高い人ほど、予算項目の因子は幅も広く、深さも、因子間の関係性や最終的な売り上げとコストに至るまでのプロセスが明確になっていると思います。

こうなっていると自然とKPIとその予想値、そしてどのKPIが動くと売上やコストにどう跳ね返ってくるのかまでが、ある程度定量で見据えられるようになっています。

設定したKPIがどうしても振れない、アクションと結果の因果関係がつかめないということは、どれほど予測シミュレーションを頑張っても起きうることですが、そのような時は、

  • 実はKPIの数が少なすぎる

  • 設定したKPIの粒度が大きすぎる

  • 成果までの線が切れている

ということが原因という場合もあるかもしれません。

緻密なKPIがもたらすメリット

自分たちの商品が世に出たあとの様子を、リリース前に気を揉みながら追体験し切れた担当者であれば、万が一にも「KPIが分からない」「その基準が分からない」、ましてやリリース後に「データが取れない」「KPIが見られない」などということは起きないでしょう。

その結果、リリース前にKPIとその予測値は定められて、世の中に出た後もすぐさま、顧客からの兆しがKPIを通して伝わってくることになります(当然、予想のハズレや当たりはありますが…)。

世の中には異常に判断が正確で速い人が存在しますが、その多くが心配性か極度の知りたがりで、事前の準備を入念に行うタイプの人なのではないかと思っています。数値を正確に、早くつかめることもその一つの理由ですが、もう一つは認知バイアスを避けられるということも大きな要素です。

「新規事業を必ず成功させる」という信念は欠かせませんが、一方で強すぎる認知バイアスは判断を遅らせたり、誤らせることにもつながります。定量化されたKPIは、現実をありのままに伝え、予測とのギャップを明らかにしてくれます。

PSFやPMFのキーになるようなKPIを掴みやすいことや、アクションが狙ったところとは違う部分で作用していたなど、思わぬ発見ができることも良い点ですし、反対に予測以上にコストがかかってしまっていたり、どのアクションをとってもKPIに響かない場合は、早期のサービスの見極めや価値の見直しにもつながり、いたずらに時間とコストを浪費するリスクも減らすことができます。

さいごに

今回はHow toのようで、マインドセットのような内容になりましたが、いかがでしたでしょうか?結論、KPI設定に安直な道はなく、自分たちが手掛ける新規事業に細心の注意を払いながら、解像度高く予行演習ができているかがポイントになる、というわけです。

そうとわかると、むやみやたらに「正しいKPI探しの沼」にはまり込んでいる状況から抜け出せるのではないかと思います。こつこつ、丁寧に準備を重ねることが唯一の方法なんですね。

奥深いKPIの世界、より実践的なポイントやKPI設定の実例など、また機会を改めて掘り下げていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?