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朱紅・書と生き方研究マガジン

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朱紅が主宰する「書道塾tane」、旅する書道「すみあそび」、いろいろな場所でいろいろな人と書くことで見えてきたたくさんの「生涯発達理論」を発信していきます。
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2024年8月の記事一覧

ものがたる線ものがたり⑤

ものがたる線ものがたり⑤

あるとき、書くのが嫌になった。大学2年生くらいで師範を取った。その後、お稽古を続けているうちに公募展に出すことにどうしてもワクワクしなくなっている自分がいた。目的がよく分からなくなった。思えば小学生から続いていたのは、「自分の思った通りにお手本の線を書きたい」というモチベーションがあったからだった。しかし、書道=得意、ということを自分が認識したあたりから、「楽しいこと」ではなく「人よりできること」

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ものがたる線ものがたり④

ものがたる線ものがたり④

書道を小学校2年生から習い始めたが、その前から、祖父が自分で墨を擦り、スクラップブックや自分で買った本を補強してタイトルを書く、などの工作をよくやっていて、わたしは幼い頃からそばにいて墨を擦る手伝いをしていた。硯のすべすべした感触が好きだった。雄勝硯の美しい彫刻の入った硯は形見として今でも使っている。

書くことがとにかく好きだった。だから落書き帳がすぐなくなって、祖父はわたしの落書き帳をチラシや

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ものがたる線ものがたり③

ものがたる線ものがたり③

ものがたる線ものがたり③

今回の個展の宮城会場である塩釜という場との出会いは、斉藤文春さんとの出会いから始まる。コロナ禍で、誰もが出歩くこと、集まることを制限されたときに、閉塞感の中で精神的に保つことができたのは書道があったからだったと思う。その頃はだいぶ制限が厳しくなっていたが、わたしの中では必要以上の制限をするのは嫌で、そもそも書道塾taneに人など集まっていない!(流行ってないんだから)と

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ものがたる線ものがたり②

ものがたる線ものがたり②

ものがたる線ものがたり②

会場になるアトリアと最初に出会ったのが2019年、トパさんのイベントだった。しかもここで今回、対談ゲストに来ていただくモリソンさんに会っているという、まるで伏線回収ものがたりだ。

しかしまだ、そのときは自分が表現する側になるなどイメージすらない。

東京。震災後にさまざまなしがらみの中にいたとき人混みに紛れることで安心していた場所。「なにものでもない存在としてのわたし

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ものがたる線ものがたり①

ものがたる線ものがたり①

初めての個展、ものがたる線。
開催まで、さまざまな想いを書いていこうと思う。

女を書きたいと思ったのは、まずはこの3本から成り立つ漢字のおもしろさに魅了されたから。

女という文字は、紙の前にひざまづく人間、つまり巫女であるという説があり、最近はとても「巫女」という存在に関心を寄せていた。神の言葉を、つなぐ存在。通訳。いい仕事だな。つなぎめ、境目、境界、際、間。

さらに、やはり女という生き物の

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