桐生 環

児童書作家。「お江戸豆吉」シリーズ(フレーベル館)を書いています。おおらかに、心をほわ…

桐生 環

児童書作家。「お江戸豆吉」シリーズ(フレーベル館)を書いています。おおらかに、心をほわっとさせるようなお話をたくさん書きたい!という思いから、ここでは思いつくまま「おはなし」を綴っていきます。対象年齢:10歳くらい~100歳くらい、の予定です。

マガジン

  • 生還

    楽観主義の私が大腸癌サバイバーになりました。この経験は書いておかなければもったいない!とメモしていたものをまとめています。単なる記録ではありますが、人工肛門や抗がん剤、手術など、他の人はどうなんだろう?とリサーチしている方にはひとつの資料になるかもしれません。

最近の記事

  • 固定された記事

もっともっと、楽しいお話を書きたい!

……という思いを行動に移そう!そう考えてnote始めました。なりたての児童書作家、桐生環(きりゅう・たまき)と申します。「お江戸豆吉」シリーズ(フレーベル館)を書いています。 ここでは、「おやすみ前のお話タイム」のような感覚で、少しずつ、のんびりとお話を紡いでいくつもりです。

    • 生還11・抗がん剤副作用③発熱性好中球減少症であの世の入り口を見た件

      あのまま眠っていたら、もしかして…… 化学療法1コース目初日に結構きつめのアレルギー反応と副作用を経験し、喉や指先に現れた痺れ、味覚異常、脱毛、吐き気や食欲不振……といったテンプレ通りの症状を抱えつつも、なんとか退院できた私。「グリコ・幼児りんご」と「ブルボン・キュービィロップ」で命をつなぎ、四谷怪談の考察に没頭することで心の平穏を得る、という日常を手に入れました。処方されている薬はこの時点で三種類。 鎮痛剤(ロキソプロフェン)、吐き気止め(メトクロプラミド)、下痢止め(ロ

      • 生還10・抗がん剤副作用②脱毛 ホラーなシャワールーム

        長い黒髪はなぜあんなに怖いのか 前章後半から少し時間を戻して、1コース目の入院中のお話です。 抗がん剤副作用のひとつである脱毛も人によって様々で、すぐに始まることもあれば1,2週間経ってから始まることもある、中には脱毛があまりない人もいる……と色々伺っていました。 私の場合は、生来髪が細く柔らかいタイプで抜け毛も多かったので、科学的理屈は分かりませんが、なんとなく「抜けるだろうな」と覚悟していました。それでも、化学療法が終われば半年から1年、長くても1年半くらいで再生して

        • 生還9 抗がん剤副作用①喉の違和感・初期の味覚異常。命の恩人『グリコ幼児りんご』の話

          美味しい、と思えることのありがたさ 化学療法1コース目は、初日にCVポート留置術、2日目に抗がん剤投与開始、そこから約2日間の5ーFU持続点滴が終わってからさらに1日ないし2日経過観察して退院する、という予定でした。実際、その通りにすすんだので、やはり現代医学はすごいな、と感動したわけですが、予告されていた副作用についても『その通り』だったのは、なんとも切ないお話でした。 様々な副作用の中でも、最初期にかなりのインパクトを伴って表れたのは、喉の違和感でした。これはエルプラ

        • 固定された記事

        もっともっと、楽しいお話を書きたい!

        マガジン

        • 生還
          12本

        記事

          生還8・化学療法1コース目

          出口の見えないトンネル CVポート留置の翌日。ついに化学療法が始まります。 朝一番に採血検査があり、CVポートとカテーテルの状態を見るためのレントゲン検査もありました。その後の朝の回診は主治医のT先生で、インターンと思しき若いドクターたちを引き連れてのご登場。この病院の外科ドクターたちは徹底した患者ファーストの取り決めがあるのか、それとも仲がいいのか、回診のときもチーム制で何やら楽し気に回っていらっしゃるのが常です。そんな外科チームでも、ひとりのドクターが一度にこんなにたく

          生還8・化学療法1コース目

          生還7・抗がん剤治療開始の前日。CVポート留置手術

          ただいま手術中…… 二度目の入院は9月の半ばでした。 今度はあらかじめ決まった入院で、5日間で退院予定だし、前回の入院グッズにストーマ関係の物だけ足せばあとはそのまま使えるので、慌てることなく準備できました。物理的には……。 とはいえ、8月末に退院して以来ゆっくり考える時間がとれたこともあり、心の準備もそれなりには整っていました。 初日はCVポートの留置手術です。高カロリー点滴や輸血のときと同じように、抗癌剤の点滴に使う中心静脈ルートのカテーテルを入れるですが、違うのは針

          生還7・抗がん剤治療開始の前日。CVポート留置手術

          生還6・化学療法に向けて心の準備

          暑さのないまま終わった夏 8月末、夏の終わりと共に私は退院しました。 ストーマ造設手術が無事に済み、そのケア方法も一応覚えたので、生きるためのプログラム・ステップ1は完了です。次の入院は2週間後、ひとまず家へ帰って小休止といったところでしょうか。 病院を出て家へ向かう途中、ふと気づいたのは「この夏、暑さを感じなかったな」ということでした。7月初めから入院までの間は高熱が続いていたため、寒気がしたり火照ったりといった体温異常に振り回されて、気温のことは意識もしませんでしたし

          生還6・化学療法に向けて心の準備

          生還5+

          やってみてよかったアイディアメモ~ストーマ編 初めは慣れないこともあって、気分が落ち込んだりしがちなストーマですが、ストーマ造設手術を受けた先輩がたの動画やブログなどを拝見すると、前向きにとらえて色々な工夫をこらしている方も多いんだな、と励まされました。気持ちの面はもちろんですが、体のこともとにかく十人十色。病院で教えてもらうやり方がぴったりくることもあれば、私には合わなかったり、また、同じオストメイトの方から伺ったアイディアがとても役に立つこともありました。自分なりに開発

          生還5+

          生還5

          新しい機能 さて、思った以上に美味しく重湯をいただき、私のストーマも活動を始めます。無事に任務を果たしてくれるのでしょうか。ド文系な私は想像するわけです、一本の水道管を。地中に埋められた一本の水道管。それを途中でぶった切り、下流側の切り口は閉じ、上流側は地上に引っ張り出して袋をかぶせておく――それが私の、ストーマ造設手術のイメージです。こういう風に書いてみるとストーマが機能する理屈も分かります。ただ、その水道管内部を目視できるわけではないので、結構不安なのです。 無事に機能

          生還4

          初体験の「手術後」 ストーマ造設手術が終わった後、夜になってからが大変でした。全身が痛いのです。なんとも皮肉なことに、一番楽なのが手術した箇所の傷。じゃあどこが痛いかというと、背中、腰、そして元々痛かった腫瘍の部分です。これらはすべて、身動きできないことが原因でした。 手術前に血栓予防のため、弾性ストッキングを履き、フットポンプをつけていましたが、その上からさらに電気毛布がかけられています。手術後は体が冷えるのだそうです。で、これが完全に足元を拘束しているわけです。加えて尿

          生還3

          手術室の扉のむこう 私に示された「生きるためのプログラム~外科編」の概要はこうです。 ステップ1:人工肛門造設 ステップ2:術前化学療法 ステップ3:横行結腸切除 大腸内視鏡検査の結果が相当悪ければ、一気にステップ3の緊急手術になるかもしれない、その場合はほぼ確実に人工肛門(永久的な結腸ストーマ)になる、と言われていました。しかし幸いにも、手順を踏んで準備する余裕はありそうだ、ということで改めてステップ1について説明を受けました。 まず、切除手術に先立って化学療法を行う理

          生還2

          生きるためのプログラム 一ヶ月間悩まされた腹部の痛みは、主に左側半分で起きていて、時には下わき腹が絞られるような感覚に襲われることもありました。しかし、病変は中央上腹部に見つかったのです。確かに、みぞおちのやや下あたりにも痛みはあり、張るような感じはしたものの、こちらはむしろ後から加わった症状のように思っていたので意外でした。 消化器内科で私の主治医となってくださったK先生からは、エコー、CT、そして造影CTと検査をした段階で「横行結腸にできものがあって、それが腸壁の外側に

          生還1

          覚悟した日の海 食べ物を選ぶとき、まず気にするのがカロリー! そう、できる限り少ないカロリーで栄養バランスを整えて……、というのが、これまでずっと私にとって当たり前の基準でした。でも、今私が選ぶのは「できる限り効率よく高カロリーを摂れる食品」。中々馴染めなくて、スーパーでもついつい低カロリーな商品を探してしまい、「違う違う」と、ひとりノリツッコミみたいなことをしています。 なぜ、私が今高カロリー食を必要としているか、と申しますとひとえに体重と体力を戻すためです。体重を減らす

          おあおさま

          月をながめるのによい季節です。 もし、月から「こちら」を見ているひとがいるとしたら、「こちら」はどんな風に見えているのでしょうか。 きっと、とても大きな星。 太陽に照らされているときのその大きな星は、青くて、どこまでも青くて、宇宙の暗闇のなかで息をのむほど美しく輝いていることでしょう。 でも、太陽に照らされていないときでも、その星にはなぜか「きらめき」があるのです。なぜ、真っ黒に塗りつぶされないの? と、月のひとたちは思うでしょう。 澄んだ青と、キラキラの闇。不思議

          おあおさま