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生還1

覚悟した日の海

食べ物を選ぶとき、まず気にするのがカロリー! そう、できる限り少ないカロリーで栄養バランスを整えて……、というのが、これまでずっと私にとって当たり前の基準でした。でも、今私が選ぶのは「できる限り効率よく高カロリーを摂れる食品」。中々馴染めなくて、スーパーでもついつい低カロリーな商品を探してしまい、「違う違う」と、ひとりノリツッコミみたいなことをしています。
なぜ、私が今高カロリー食を必要としているか、と申しますとひとえに体重と体力を戻すためです。体重を減らす努力なら、何度となくしてきましたが、増やす努力をしているのは生まれて初めて。そりゃあ慣れないわけです。しかしながら、こんなことであたふたする「今」があるのは、本当にありがたいことだと実感しています。2023年3月、生きていることに深い感謝をささげるため、私が経験した病気の話を綴っておきたいと思います。

2022年の7月初め。突然、高熱が出て腹部に筋肉痛のような痛みを感じました。世間では新型コロナウィルス感染症(以下コロナ)第7波が押し寄せていた時期です。当然、すぐに地元自治体の相談センターに電話して指示を仰ぎ、個人病院を紹介されて検査を受けました。結果は陰性だったのですが、「陰性なら、この熱や痛みは何?」という疑問をしつこく投げかけられるほど病院はのんびりした雰囲気ではなく、喉の痛みや咳など他の症状が出たらまた来てね、と診察は終了しました。
ところが、他の症状は一切出ない代わりに、熱も腹部の痛みも全く治まらないのです。ちなみに、この「筋肉痛のような」腹部の痛みはかなり強烈で、腹筋100回やった2日後(!)みたいな、横になるのも縦になるのもキツイ、という状態でした。熱のせいか食欲もなく、食べられるものと言ったらゼリータイプの栄養補助食品くらい。明らかに、よろしくない状況です。
そこで、コロナは陰性だったし、と、病院へ行こうとするのですが、偽陰性かもしれないから熱がある限りは発熱外来へ、と言われます。しかし、感染者数が激増していたこのとき、どこの病院も予約が取れず、発熱外来にさえかかれないままひと月経ってしまいました。
これ、ほかの病気だったらどうなるんだろう?と、焦り始めた私は、数日間、熱が下がったタイミングで整形外科医院へ行ってみることにしたのです。
整形外科のドクターは問診票に目を通しただけで「それは消化器ですね」と判断なさったようで、私が内科の医院で中々診察を受けられない事情を訴え、総合病院への紹介状が欲しい旨を伝えるとすぐに書いてくださいました。この紹介状がなかったら、私は今、カロリーが低いだの高いだの言いながら買い物をしてなどいられなかったでしょう。

8月中旬、私は総合病院で検査を受けました。実にいろいろな検査をしていただき、諸々でそろったのはもう夕方に近い時刻でした。
消化器内科のドクターから「入院しましょう」と言われ、「では仕事の段取りをつけておきます。いつ入院すれば……」とこの日は帰る気満々で答えたのですが、ドクターはやんわりと、しかし毅然と、おっしゃいました。
「今日、明日ですぐにどうこうなりはしませんが、仮に月末まで待ったら確実に命にかかわります」
――とりあえず1時間だけ猶予をいただいて家に帰り、パソコンその他の仕事道具、あとはタオルとか歯ブラシとか……そのあたりを適当にかばんに詰め込んで、私は入院することになりました。

これが、私が癌と向き合った最初の日です。

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